第百六十六話~理解し難きもの~
「ほいほい、それじゃあ話の準備はこの程度で大丈夫かの」
ソフィアとセヴラン達の会話の区切りを見計らい、ディルムンクは話を本題へと戻そうとする。その考えを、セヴラン達も察しその瞳をディルムンクへと集めた。
「今まで話したように、儂はこの戦争……更にその先、あの霧の向こうの問題に対しての準備を行ってきた訳じゃ。そこで、お前さん達に頼みたかったのは、この戦争を終わらせること。そして、ロイヤルガードや七極聖天を仲間にしてもらいたいのじゃ。そこまでは大丈夫かの?」
ディルムンクは、これまでの話を大まかにまとめ、セヴラン達に今後の目的を確認する。
セヴラン達も、ここまでの話を理解はしている為、その首を縦に振る。だが、それそのものを納得している訳ではなく、疑問は多く残り
「それは理解しています。……が、やはり分かりません。我々をここまで影から導き、その力を与えてきたのは師匠、貴方だ。誰も帰ってこなかったと伝えられてきた霧からも生還し、これだけの力を持っている。ならば、我々を使うような回りくどいことをせずとも、端から貴方が動けばよろしかったのでは?」
セヴランは根本的な、自分達の状況に対する疑問を投げ掛ける。だがディルムンクは、悪いと小さく笑い
「そう言えば、その件がうやむやになっておったの。さっきのでソフィアに話してもらいたかったが、儂はイクスに狙われていての。……何の為かは知らんが、イクスは竜と供にこの大陸を消そうとしておる。じゃから、竜を何とかしようと目論む、儂が邪魔なんじゃろうな」
イクスに狙われる理由、その真実を知り、セヴランはイクスという存在がますます謎となった。知れば知る程、イクスの行動には理解出来ない点があり、その疑問を放置は出来ず
「……師匠、イクスとは……一体何者なのでしょうか?人間の域を超えた技、禍々しい意識のようなもの。アレには対抗手段も見当たらず、現状では勝ち目が無いのですが……」
セヴランは、数日前の敗北に悔しさと自身に対する怒りがわき上がり、その拳が強く握り込まれる。それは自身の実力の足りなさ、そして、この世界に対する理解のなさを自覚させられたが故に、生まれた感情であった。
そんなセヴランの心中を分かっているのか、ソフィアは立ち上がり、セヴランに近づくとその手を握り
「彼について……簡単に言えば、私と同じ時代を戦った人間よ。ただ、彼は天才だったけれど、そのあまりの天才さ故に理解をされることは少なかった。だから、彼は彼なりにこの世界を存続させようと私達と敵対した……でも、それは人のことを信じていたから。人間を守ろうとして、あまりにも多くを抱えすぎてしまって、彼の心は壊れたの……だから、彼を止めないといけない。それは私の役目でもあるの。けれど現状、彼に狙われた際に出来ることは少ないわ。可能なら、絶望に負けずに、希望の心を持ち続けることね」
ソフィアは懐かしさを覚えながら、イクスについて知っていることを伝える。しかし、その対処方法については実質ないことも伝え、精神論などというつもりはないが、結果的に最後は精神論のようになっていた。
それを聞いたセヴラン達も、イクスに対して有効な対処手段がないことを知り、そこに関しては後に考えることとし
「なら、イクスはどうにかするとして、一体どうやってロイヤルガードや七極聖天を味方にしろっていうのかしら?確かに、私達の目的はこの戦争を終わらせることで、その為に話し合いもする予定はあったわ。でも、正直話し合いで済むとは思ってないから、彼らとは剣を交えるつもりだったのだけれど?」
セヴランに続いて言葉をつくったのはリーナだった。リーナは今の頼みには問題があるとして、疑問を投げ掛ける。
イクスのことを理解した面々は、次に問題となるのがディルムンクの頼みであった。伝説の竜と戦うなどというのも、頭がおかしい頼みでもあったが、この問題も充分に頭のおかしい頼みである。ロイヤルガードとは一度剣を交えたセヴラン達だが、その結果は無惨なものだった。対等な敵としても並べず、セヴラン達はただの小国の一兵士に過ぎない。そんな関係からして話し合いなど無理であるし、味方などというのは夢物語である。更に言えば、七極聖天は問答無用でフィオリスに進行し、話し合いの余地すらない。そんな敵を味方にする方法があるならば、誰もが知りたいものだった。
しかし、そこで回答を求めたリーナ達ではあったが、そこに返ってきた答えは想定外のもので
「それを考える必要はないじゃろう……お前さん達が進むべき道を進めば、必ず彼らと対峙することになるし、それを戦いだとしても乗り越えなければ未来はないのだからな…………」
ディルムンクは目を閉じ、リーナ達の疑問については答えることはなかった…………。
どうも、作者の蒼月です。
ちょっと投稿遅れました。忙しいことというのは、次から次へとやってくるものですね(白目)
さてさて、やっぱり進まない本編です。いい加減進めよと言われそうなのですが……申し訳ないですm(__)m
まあ、後少しでこの説明回も終わりを迎えます。とっととこれを終わらせ、物語を進行させたいと思います。
では、次も読んで頂けると幸いです。




