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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第七章~始まりの地へと収束する運命~
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第百六十五話~想像を超えし覚悟~

「浮いている……まさか、飛行魔法ッ!?」


 背後にいつの間に移動していたソフィアに対する驚きの感情もあったが、それ以上に飛んでいる事実に驚愕を示した。人が飛ぶ、そんな夢物語はおとぎ話や伝説の中だけであり、現実のものではない。……だが、その常識は覆され、セヴラン達の常識を否定するように存在しているのだ。

 そして、飛行魔法という名前。これは、セヴランがディルムンクとの修行時代から研究していたものの一つであり、その完成形を目の当たりにしたことで、思わず口にした。


「エ、エメリィ、これって飛行魔法よね?」


「えぇ……でも、これはまだ理論すら完成してないわよ……」


 セヴランが飛行魔法と口にしたことに一瞬驚きを見せるリーナだったが、すぐにその視線はエメリィに向けられ、研究していた飛行魔法の存在の確認をした。だが、エメリィもそれはまだだと首を振り、ソフィアに対し畏怖する姿を見せていた。


「卓越した魔法に、その魔導師を彷彿とさせる姿ときちゃあ……まるで」


「…………魔女…………」


 驚愕する三人ではあったが、そんな中でも興味があると目を輝かせ、視線を向けるバーンズ。そして、バーンズが言いたかったであろう言葉を、存在を、キルが小さく呟いた。




「魔女ねぇ……あまりその呼ばれ方は好きじゃないのだけれど、間違いでもわね」


 ソフィアは空中を浮遊しながら、ゆっくりと移動をする。途中、セヴラン達の視線を集めることに、少しばかり恥ずかしさを覚えつつも、元いたディルムンクの隣へと戻った。そして、浮遊していた体を地へと下ろし、何事もなかったかの用に再び岩へと腰かけた。

 相変わらず、セヴラン達に視線を向けられるソフィアだったが、その瞳に込められている気持ちには変化があった。


 ……私の力に対して、恐怖と興味の両方ってところかしら。これで、少しは話を信じてくれるかしら。


 ソフィアは、イクスの実力の話を信じさせるために、こうしてセヴラン達に自身の力を見せた。結果としては、充分過ぎる程に力を示していた。誰にも反応させずに背後をとる、セヴランの銀世界を砕く、飛行魔法を見せる。これらにより、ソフィアが伝えたかったイクスの力がどれ程のものなのか、これは確かにセヴラン達に確かに伝わっていた。


「成る程、イクスの実力……少なくとも、貴方に成す術を持たない今の我々では、到底太刀打ちできる相手ではないと。そういうことですね?」


「理解が早くて助かるわ。そう、今の貴方達では竜どころか、イクスにさえ勝てない……それは確かなことよ」


 ソフィアは完全に言いきり、セヴラン達が立ち向かう敵がそれだけ強大なのだと伝える。

 ソフィアとしては、最悪ここでセヴラン達の心を折る可能性があることも理解していた。その場合、ここまでセヴラン達の手助けをし、計画を進めていたディルムンクを裏切る行為になるということも…………。

 そうなれば、今後この世界の未来が無くなる。それを知っているが故、ソフィアの胸中に後から込み上げてくる不安が駆け巡る。セヴラン達が絶望しないことを望みながらも、心のどこかで彼らが絶望するのではという考えを払拭できない。そんなソフィアはセヴラン達を見ることが出来ずに、ただ俯くのであった…………。




「別に問題ないんじゃない?どれだけ敵が強くても、私達のすることは変わらないもの」


 しかし、そんなソフィアの不安を杞憂に終わらせるように、リーナは普段と変わらない表情で告げたのだった。それに同調し、セヴランは頷き


「あぁ、そうだ。俺達は、どれだけ強大な敵が立ち塞がろうと、力無き民を守る。その為なら、この命果てようとも最後まで戦うさ」


 セヴランは己の剣に手を掛け、ここまで戦ってきた理由を再度意識する。始まりは単にリーナを失った憤りと怒りからだったが、ここまでの戦いを経てセヴランには守るべきものを得ていた。国境での戦いでその覚悟は固まり、ブラッドローズに入ってその為の力も得た。更には、この戦争を止めるという大きな目標まで得て、今さらセヴラン達に止まることなどあり得なかった。そもそも、この道が絶望に溢れている道だと理解している者達の集まり。イクスの実力一つごときで、今更絶望などすることもなかった。


「ソフィアさん、リーナちゃんはやると言ったらきかないんです。そして私達は、それに賛同して供にすると誓ったんです。心配しなくても、イクスだろうと竜だろうと、民に刃を向ける者に負けたりしませんよ」


「そうですぜ、我々はこの戦争を止めるまでは死ねません。強大な敵が出てくるなら、それ以上に強くなって立ち向かうまでのこと」


「……姫の願いの為にも、この世界を平和にしてみせる……あんたが思う程、俺達は弱くはない…………」


 セヴランの覚悟に続いて、エメリィ、バーンズ、キルも、それぞれが己の覚悟を示す。その覚悟の強さは、ソフィアの想像を簡単に上回る程強力であり、ソフィアは自身が最も覚悟が甘かったのではと思い知らされた。そして、その覚悟を決めた者達の姿を瞼に焼き付けながら目を閉じ


 ……イクス、やっぱり私は人は強いと思うわ。どんな時でも諦めず、己の運命に立ち向かう……だから、私も彼らを信じるわ。人を信じていた、貴方のように…………


 ソフィアは新たな希望を胸に、過去の仲間へと想いを心の中で語るのであった。

どうも、作者の蒼月です。

色々伏線(伏線なんて立派なものじゃない)とか、解説したいこととかありすぎる回でした。

とりあえず、ソフィアは一体何者なのか。イクスとの関係は。ディルムンク達と行っている計画とは。様々な謎がありますが、それはまた次の回でも説明していきたいと思います。

というか、本当にここのディルムンク&ソフィアとの会話が長すぎる……どうにかまとめたいものです。


では、次も読んで頂けると幸いです。

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