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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第七章~始まりの地へと収束する運命~
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第百六十三話~隠居せし師~

 話し合い……と言うよりも、隠されていた情報の開示を経て、セヴラン達は心を整理する時間を必要としていた。ここに来た本来の要件がまだ達成出来ていないのにも関わらず、想定以上の情報が出てきたことは、セヴラン達に混乱を与えており


「ですが師匠、幾らなんでも竜と言われても…………」


 頭の中で整理したつもりでも、話の大きさが大きさなだけにセヴランは困惑の言葉が漏れる。口で竜と言うだけなら簡単だが、竜が伝説通りの実力だとしたら、人間が簡単に挑める相手ではない。それこそ小さな竜一匹でも、数百人程度なら簡単に殺せる実力を持つ。そんな、存在すら伝説と言われていた存在と戦えと言われて、即座に戦うなどと言い切れる人間の方がどうかしている。

 セヴランがどうしたものかと固まる中、他の面々も同様に動きを作れずにいた。そんな様子を眺めるソフィアもセヴラン達に笑みを向けるだけで、何かを話してくる訳でもない。特別することもなく、ただ考えることしか出来ない状況。バーンズ達も頭を悩ませ、ただ水の弾く音だけが洞窟に反響する…………。




「やはり、いきなりすぎたかのぉ…………」


 あまりの情報の、ことの大きさにセヴラン達が固まる様子に、ディルムンクは失敗したと髭を擦りながら呟いた。ディルムンクはこれ自体は予想していたが、問題はセヴラン達の反応が想定以上だったことだ。既に完全に固まってしまい、話の続きにもならなくなってしまっている。どうにか会話は続けたいが、下手に混乱した状態で話をしても、求めている回答が来るとは限らない。


 そうした相互の沈黙は長く続いていた。だが、それに楔を打ったのは、リーナであった。


「セヴラン、バーンズ、エメリィ、キル。とりあえず、まずはここに来た本来の目的を果たしましょう」


 唐突に、思い出したかのように顔を上げ、周囲に確認を取り始める。それに、バーンズやエメリィも頷き、一つずつ問題を解決する方針に決まる。セヴランは、当初の目的が何だったかを思い出すのに一瞬だが遅れたが、ここに来たのは手紙の差出人がディルムンクだったかの確認と思い出し、同調するように同じく頷いた。それを確認したリーナは、ディルムンクの前へと一歩進み


「ディルムンクさん、質問を宜しいでしょうか?」


「なんじゃ?」


「バーンズに手紙を送っていたのは、貴方なのですか?」


「ん、そうじゃが……バーンズは気付いておらんかったのか?」


 ディルムンクは意外そうな表情をバーンズに向け、バーンズはこれに頭を下げ


「貴方の可能性はありましたが、正直それに至るまではなりませんでした。ここまで来れたのも、セヴランがいたからです。貴方が雲隠れしてから、その消息は一切掴めていませんでしたから……」


 首を横に振り、バーンズはこれまでの苦労で深く息をこぼす……。ディルムンクを探すのに費やした時間は相当なものであり、それでも尚見つけることは出来なかった。そんなことはいざ知らず、ディルムンクは言葉を続け


「成る程、儂が隠れてからお前さんでも見つけれんかったということは……イクスにも見つかってはおらなさそうじゃな」


 流れるように自然に呟いたイクスという単語、ここでセヴラン達全員が反応し


『イクス!?』


 まさかイクスという言葉を聞くことになるとは考えていなかった点、そして現状において未知な敵。アイゼンファルツ基地で戦闘を交え、危険過ぎると判断した存在をディルムンクが知っていると分かり、セヴランは食い気味に


「イクスのことをご存知なのですか!師匠、貴方は何を知っているのですッ!」


 今分かるところから話をしようと決めたとこでありながら、目の前に転がる情報に食いつかずにはいれないセヴラン。だが、これは自らの師匠が、あまりにも多くのことを知りすぎていることに対する畏怖なのだろうか。いつもよりも感情を見せるセヴランに、ディルムンクは落ち着けと手で制し


「まぁ落ち着け、セヴランよ……まず始めに、質問に答えるとしよう。手紙を出していたのは、儂で間違いない。……そしてこの理由に関係してくるのじゃが、儂はイクスから隠れる必要があった。その為に、バーンズ……お前に将軍の座を任せて、儂は一人で準備をしておったのじゃよ。まあ、もう年で現役が辛いってのもあるがのぉ…………」


 辛さを表現する為か、ディルムンクは腰を擦る動作を行う。だが、見た目こそ老人のそれだが、その戦う様を知っているセヴランとバーンズはその似つかわしくない動作に苦笑いを浮かべ


「では、私達に手紙で指示を出して影から動かし……貴方が隠れる必要のあるイクスとは、一体何なのですか?」


 セヴランにとって最も……否、他の者にとっても疑問なことであり、今後の方針を決めるに当たって重要な項目であった。それを素直に質問としてディルムンクにぶつけたセヴランであったが


「イクスか……その話は、彼女の専門だろうな」


 重圧を感じさせる言い方でイクスの名を口にし、ディルムンクは視線をソフィアへと送った…………。

どうも、作者の蒼月です。

やっぱり連続投稿できない……どうしたらいいのか悩む今日この頃。自分にノルマを貸しても、それが重荷になりすぎないようにしたいですね……


さて、本編は相変わらずの情報開示パート。正直、戦闘もなければ動きもなく、私としては死ぬほど書くのが辛いとこです。人間の心理描写とか、一体どうしたら皆さん思い付くのですかねぇ……

ディルムンクに次々と情報を渡されるセヴラン達。でも、そんなセヴラン達は混乱に落とされるばかり。次は一体、どんなとんでも発言があるのでしょうか……


では、次も読んで頂けると幸いです。

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