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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第七章~始まりの地へと収束する運命~
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第百六十二話~願った者~

「敵、ですか……」


 告げられた言葉を自らも口にし、その敵という言葉に重みを感じていた。そんなセヴランの様子に、ディルムンクは言葉を続ける。


「そうじゃ……まぁ、まずは歴史の勉強とするかの」


「勉強?今更なにを勉強しろと――」


「敵とは、なんじゃ?」


 ディルムンクに歴史の勉強などと言われ、そんな悠長なことをしている時間はないと吐き捨てようとしたが、それは続けられた意味深な内容の質問によって引き留められた。


「……敵は、今は民を傷つける者全てです」


 ディルムンクの質問にセヴランは一瞬迷いつつも、躊躇なく民を第一に答えた。しかし、その言葉に、ディルムンクは面白いと笑い


「違う違う、そうじゃない。儂が言っておるのは、この戦いの元凶じゃよ」


「元凶?元凶も何も、この戦争は土地と食料からくるもの。元凶と言えるものがあるとすれば、この大陸を閉ざした霧そのものでしょう」


 セヴランは、この戦争の前提知識として当たり前のことを並べる。王都に住む子供程度しか高等教育は受けていないが、その程度の知識は親から誰でも聞くような知識だ。セヴランも、このことは特にディルムンク本人から教えられたことであり、霧のことは軍に入るよりも以前から知識としてある。

 そんな当たり前の解答ではあったが、それにディルムンクは正しいと頷き


「そうじゃな、その通りじゃ……なら次の質問じゃ。その霧の先には、何があると思う?」


「霧の……先?」


「多くの軍が調査を送り、誰も帰って来なかったと言われる霧の先。そもそも、この世界に何が起こっておるのか、それを理解するべきじゃな」


「この世界…………また、大きな話ですね。師匠は、まさかこの世界の謎の霧に挑め、とでもおっしゃるつもりですか?」


 セヴランは呆れ気味に顔を横に振り、小馬鹿にするかのようにディルムンクを笑う。

 だが、ディルムンクは笑われても表情を崩すことはなく、真っ直ぐとセヴランを見やり


「そうじゃ、お前達が戦うべき敵とはその霧の先に広がる者達…………伝説の竜じゃ」


 重く深い意味の込められたその言葉は、セヴランだけでなく、話を聞く他の四人の心を掴み、衝撃を与えるには充分すぎる内容であった。




「伝説の竜って、まさか過去の大戦で戦ったっていうあれ?」


 リーナは竜と言われ、一つの語り継がれる歴史を思い出す。これまでの歴史に語られ、もはや伝説と言われた存在、竜。


「でも、あれってもういなくなったんでしょ?確か、人が竜に勝ったって内容だったと思うけど」


 エメリィはリーナの記憶に同調するが、同時にその竜に勝ったという歴史を口にした。事実、歴史として語られるところとしては人は竜に勝ち、竜は姿を消したのだ。

 二人の竜にまつわる知識が出たことを聞くと、そこから一つの疑問を得たバーンズは険しい顔をし


「ディルムンク将軍は、まさかあの霧の先に行ったことがおありなのですか?」


 バーンズのぶつけた質問に、全員の目線がディルムンクへと集まった。これまでの質問の流れから考えれば、一つの可能性を全員が思い付く。そして、この質問への解答次第では、ディルムンクはそれまでの常識を覆すこととなり…………


「…………そうじゃ、儂はあの先の霧に行ったことがある。その先の世界も見た一人じゃよ」


 五人の予想通りの答えを告げるディルムンク。そしてそれは同時に、これまで信じられていた、霧に飲まれて国が滅亡するということの否定に繋がるということでもあった。

 皆が答えを得て思い思いに思考する中、自らの師匠の過去、知らなかった事実にセヴランは驚きを隠せない。その為に、セヴランは表情がひきつった笑みになりつつも、情報を頭の中で整理し


 ……なんか、話がどんどんでかくなってきたな。初めは単に、弱かった自分が嫌だっただけなのにな……


 セヴランは、自らの今の現状を取り巻く事態の大きさに、感慨深くため息を吐いていた。ここまで、ただ目の前にあった目的を果たしているだけだった。その過程で、リーナと再開し、更には師匠の元へと帰ってくるまでに至った。それが、気がつけば力を持つ騎士になり、伝説の竜が敵と言われる始末。セヴランとしては、話が大きくなりすぎ、理解したくても頭がそれを否定していた。

 だが、理解出来ないと現状を否定し続ける訳にもいかず、大きく深呼吸をして気持ちを落ち着け


「師匠……つまり貴方は、霧の先に行ったことがあり、そこには伝説の竜がいた。そして、我々が今後戦うべき敵はパラメキアでもレギブスでもなく、その竜であると。そういうことですか?」


 セヴランは出てきた情報をまとめ、今の自分達の置かれている状況、そしてディルムンクが求めているものを示した。そして、それはディルムンクの期待に応えれたのか、満足気な微笑みを向けられ


「そういうことになるの、ロイヤルガードや七極聖天……彼らと戦い、そして味方につけ、人類をこの世の終焉から救って欲しい。それが、儂の最後の希望じゃ…………」


 ディルムンクの言葉には希望と絶望が入り交じり、セヴラン達へと期待の羨望と共に向けられたのだった…………。

どうも、作者の蒼月です。

またまた投稿遅れましたが、申し訳ない……本当は昨日投稿したかったのですが、1話が完成する前に用事が出来てしまって今日にいたります。


さてさて本編についてですが、なんかやたらとスケールのデカイ話になってきました。いきなりすぎね?と思われた読者の方も多いことでしょう(読者がいないだろって?そこは気にしない)。

ですが、勿論ここにも裏話はあるので、それが外伝として早く小説にしたいものです。


そういうわけで(どういうわけだ)、唐突に伝説に挑めと言われたセヴラン達。元は戦争を終わらせることだけが目的だった彼らは、今後どのような判断をしていくのでしょうか……


では、次も読んで頂けると幸いです。

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