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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第七章~始まりの地へと収束する運命~
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第百六十一話~師の喜び~

「さて、何から話そうかのぉ……」


「あら、決めてなかったの?」


 セヴラン達が洞窟内で端に幾らかある岩場に腰かけた頃、ディルムンクは腕を組ながら悩む素振りを見せていた。聞こえた言葉から、この話し合いで何を言うかを決めていなかったようで、ディルムンクの隣のソフィアに突っ込まれている次第だった。


 ……師匠、相変わらず適当なところがあるんだな。


 セヴランは、過去のディルムンクと過ごしていた時代にも同じようなことがあったのを思い返し、懐かしさに安堵を覚え、緊張で固まっていた口元が少し柔らいだ。

 しかし、そんなセヴランとは対照的に、隣では時間を気にしたリーナが銀時計を取り出して確認し、その表情が僅かに曇っていた。その手は強く握り込まれ、歯を食いしばっていた。

 それが何を意味するか、セヴランには痛い程理解できる。そもそも、ここにセヴラン達が来たのは、セヴラン自身の事を師匠に聞くため。更に、師匠がディルムンクだったのならば、今まで影から指示を出していた意図を知るため。その為に、既に迫ったパラメキアとレギブスの開戦を前にして、仲間だけを先に向かわせてここに来ているのだ。

 バウルやギーブ達も、既に戦場にたどり着いている頃合い。そんな中で、自分達は情報の為とは言え仲間を置いているわけである。民を守る為の戦闘に参加出来ないこともそうだが、リーナは仲間達を大切に思っている。レギブスとの国境戦でも必ず来ると信頼し、王都の基地等でも信頼を寄せられている場面をセヴランも幾度となく見てきた。そんなリーナが、仲間を放置だけを危険にさらしていることに納得などする筈がない。今すぐにでも飛び出して、戦場に向かいたい気持ちもあるのだろう。その気持ちを抑えつつ、焦りが時計を見るという行為につながったのだ。

 だが、今は焦っても仕方がない。だからこそ、セヴランはリーナの手に自身の手を重ね


「大丈夫……あいつらなら問題ないさ」


 簡潔に、伝えたいことだけを伝える。短い言葉ではあったが、それだけで伝えたいことは確かに伝わった。リーナは驚き目を見開いたが、すぐにそれは笑みへと変わり


「えぇ……そうね、ありがとう…………」


 和やかなやりとりは、二人の周囲に今までと違う雰囲気を醸し出し……


「お熱いね~若くて元気があるのはいいが、こんなところで盛り上がられてもねぇ~」


「リーナちゃん、セヴランのことを好きなのは分かるけど、もう少し真剣に考えるべきよ?そんな甘い言葉だけで決めるなんて駄目よ」


 バーンズとエメリィは、セヴランとリーナのことを茶化すように言葉をかけ、キルにいたっては呆れたと目を閉じていた。セヴランは状況を察して、とりあえずは手を離し


 ……あぁ、ちょっと格好つけすぎたか?いやでも、リーナをあのままになんて出来なかったしなぁ。


 二人に茶化され、自分の行動に何か問題があったかと思うセヴラン。正直、行動事態はリーナのことを考えてしたことで、特別深い意味は無かった。確かに端から見れば、それは年頃の男女の戯れに見えるかもしれない。だが、勿論二人にそんなつもりなど毛頭ない。バーンズとエメリィの二人も、それを理解した上での茶化しなのだろう。情報を得る為の場だというのに、皆が久し振りに落ち着ける空間で気持ちが緩んだのか、起きてしまったことであった。




 そんな場と状況をわきまえていないようにも思える光景ではあったが、それは意外な展開を迎えるきっかけとなった……。

 それは、セヴランの様子を見ていたディルムンクの言葉だった。


「成る程、リーナと再開したことで、お前は力の意味を理解したのだな」


「え?」


 唐突な言葉、その内容にセヴランは固まった。他の四人も、同じように口を開いたディルムンクへと視線を向ける


「お前は、リーナを失った後悔から力を求めた。だから与えてやった。じゃが、それだけでは意味がない……力は所詮力、それを何に使うかが重要なのだ。前までのお前には過ぎた力だったが……今のお前はリーナと仲間を得て、守るべきものとその価値を理解した。……それはお前を脆くもしたが、成長をさせた。強くなったようだな、セヴランよ」


「……師匠、それは一体」


 分からない、セヴランが思えたことはその程度だった。ディルムンクの言葉の意味が、何を伝えたいのかがセヴランには分からない。だが、意味をないことをディルムンクが伝える筈もなく


「分かりずらいかの?まあ、誉めている部分もあるのだから素直に喜べ。初めは仲間を得て、腑抜けて弱くなっただけかと思っておったが……これなら大丈夫なようじゃの」


 言葉には重みがあり、これから話されることが重要なことなのだと、この場の誰もが理解できた。だからこそ、ようやく目的を果たせるという高揚と、何が起きるか分からないという不安を抱えつつ、セヴランは真っ直ぐにディルムンクの目を捉えて問うた。


「それは、一体」


「お主達が戦うべき、敵についてじゃ…………」

どうも、作者の蒼月です。

さてさて、久しぶりの連日投稿。時間が足りなくて疲れました……


今回、内容としては予定外の方向に進んでおります。

いや、この洞窟で伝えられるおおまかな情報とかは決めてるんですが、問題はその状況等を詳しくは決めてないのです(いつもですけどね)

なので、キャラに動いてもらって書いたのですが、久しぶりの日常回になりました。

そして思わされました。本当に日常系の書き方が苦手なのだなと。必要かも怪しい(いや、いるんですよ?)場面描写に苦しめられながら、何とか書き終えたこの回。

日常系の文章って、どう書いたらいいんですかねぇ……


では、次も読んで頂けると幸いです。

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