第百六十話~席に着くため~
静寂。洞窟には、ディルムンクの重たさを感じる言葉以外には、天井から滴る水の音のみが広がる。
静かな空間にただずむ五人は、動くことが出来ずにいた。セヴランを筆頭に、ディルムンクとソフィアの二人の行動の不可解さに疑問と警戒心を抱き、一寸たりとも視線を外さず相手の真意を探ろうとしていた。
……師匠は何がしたい……単に情報をくれるなんて、そんな優しいことはないだろう。だが、俺達を鍛えてくれるなんて、そんな生易しいこともない筈。……だとしたら、さっきまでの攻撃は何の意味が……それに、あのソフィアとかいう人物も並みの人間じゃないだろうし…………
動かない…………否、動けないセヴランは、目だけはしっかりとディルムンク達を見据え、冷静さを欠かないようにしつつ思考を重ねる。だが、ディルムンクの真剣な表情、ソフィアの眼差しもまた、セヴランと同様に視線を重ねていた。
考えられる可能性を全て考慮し、相手の息づかい、微かな動きも見逃さず、集められる情報は全て集めてゆく。
しかし、加速する思考を遮るようにディルムンクの言葉が届き
「どうした?別に戦争をしているわけでもあるまい。いい席とは言えんが、そこらに適当にかけるといい」
言葉に付け加えるように、ディルムンクは自分が腰かけている岩を指差し、セヴラン達に座るように促す。向けられた言葉は、間違いなく好意のものである。だが、過去では当たり前だったとは言えど、つい今まで攻撃を受けていた身として。また、あまりにも秘密を抱えすぎているディルムンクの事を、警戒しないというのは無理があった。
ディルムンクを信用して早く話をしたい気持ち、謎のソフィアを連れるディルムンクを警戒する気持ち。二つの気持ちに揺れながら、セヴランは徐々に表情を苦しくし
……これ、もう下手に探りは入れられないな……だが、ソフィアの警戒は解くわけにはいかない……どうすればッ!
思考に思考を重ねても、解答などある筈もない。実際の時間で言えば一瞬だが、ここまでの一瞬は体感時間で言えば相当な長さであった。集中力を研ぎ澄まし、セヴランの脳は熱を帯びる。脳には痛みが走り、精神力を磨耗させてゆく。
今後の為にも間違った判断は出来ない。ブラッドローズを預り、今後の部隊の行動を決める為にも、セヴランは重責を預かる身としての責任感がのし掛かっていた。だが、そんな無理は長く続けれず、セヴランは緊張の糸が切れたように脱力し
……こりゃ、俺一人で考えても仕方ないな。
セヴランはどこか吹っ切れたかのように考え、しかし判断を間違えない為にも仲間の意思を確認することに決めたのだった。
その考えの下、ディルムンクの誘いに他はどうするかと目配せをする。見れば、リーナとバーンズは警戒態勢を解き、力を抜いて素直に従う様子だった。エメリィは、この中で最も状況についていけていないことに不満を見せつつも、二人と同じように話合いに乗る様子だった。
しかし、この中で一人だけが問題であり
……キル、お前は何をしてるんだ……
キルは、明らかに殺気立っていた。よく見れば、その手は腰の短剣に掛けられそうであり、今にも斬りかかるのではないかとさえ思える。日頃感情を見せず、謎ばかりのキルがソレを見せたことにはセヴランも驚き、予想していなかったことで冷静な表情はまたしても保てなくなった。
……キルがこんな感情を見せるなんてな……師匠がキリシュとか言ってたことも含めて、聞くことが多そうだな。
仲間の様子から、話合いをするべきとセヴランは判断し、ようやく完全に警戒を解いた。そして、セヴランは一歩前へと進み
「では師匠、色々と聞かせてもらいましょうか。この世界について。私達に求めていること。聞きたいことは山ほどあるので……」
セヴランは笑顔で警戒を解いたことを示し、こうしてようやく、情報の席を得る為の席につくこととなった。
「さて、ようやくね。ここまでにいたるまでが、本当に苦労したわ」
セヴラン達に、ソフィアはどこか遠くを見るような瞳で天井の星空を見上げ、小さく呟いた。だが、それが一体何を意味するかなど、今のセヴラン達には分かる筈もなかったのだ…………。
どうも、作者の蒼月です。
今回、少し短かったです。もう少し長くしてもよかったのですが、そうするときりが良くないうえに、中途半端なところで終わってしまうので、今回はここできりました。
さてさて、内容なんですが、この回は本当に何も進んでません。必要ないかと言われたらいるんで書いたんですが、やはり必要性を感じにくい。これは、完全に私の表現の技量不足でした……
私の作品は短くないので仕方ないところもありますが、もっと読みやすいように表現を覚えたいと覚えさせられた回でした。今後、もっと見やすい作品になるよう、勉強を続けたいです。
では、次も読んで頂けると幸いです。




