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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第六章~世界を覆いし終焉~
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第百五十七話~運命の鍵~

 数々の矢を凌ぎ、ようやく洞窟の最新部へと滑り込んだセヴランとリーナの二人。速度を落とす事なく全力で滑り込んだ為、二人は地面に打ち付けられるように転がり、かなりの距離を地面を滑りながら倒れ込んだ。


「……っ、大丈夫かリーナ」


「……えぇ、なんとか」


 岩肌の地面を転がったことで、セヴランとリーナの二人は服と共に体の様々な箇所に傷を得る。セヴラン達ブラッドローズが装備している服は特製であり、戦闘で軽く剣の刃が当たっても傷付かない程度には強力なものである。しかし、そんな丈夫な服といえども、ここまでで避けきれずにかすった矢と、地面を転げた際のもので傷ついていた。


 痛みを堪えながら二人は地面から体を起こし、周囲への警戒を高める。だが、そんな警戒をした二人は、すぐに視界に広がった光景で、警戒を解くこととなった。


「綺麗…………」


 静かな洞窟の中、リーナの小さな言葉が響いた。その言葉の届く先、洞窟の壁には小さな星空が広がっていた。

 天架ける星の流れ、天井の夜空には、様々に輝く星々が夜空を飾る。元あった筈の狭く暗い洞窟の面影など無く、見上げた者に自然の中に溺れるような感覚を、限りない星空は人に抱かせていた。

 そんな唐突な自然に囲まれ呆然としていた二人に、新しい一つの老人の声が響いた。


「ほっほっほ、気に入って貰えたかね、若き姫君よ」


「誰ッ!」


 洞窟内に新たに声が響いたことで、リーナは我に返り身構えようとする。しかし、対してセヴランはハッと驚いた表情を見せ、それはすぐに微笑みに変わった。


「リーナ、心配しなくて大丈夫だ…………師匠、お久しぶりですね」


 セヴランはリーナの剣を制して収めさせ、声の響いた洞窟の奥側へと視線を向ける。リーナも、セヴランの言葉からとりあえずは警戒を解き、セヴランと供に振り向いた。

 二人が視線を揃えた先、奥の暗かった空間は、二人の動きに合わせるように洞窟内の結晶が輝きだし、二人を含めたこの空間にいた者達を照らし始めた。

 セヴランとリーナがたどり着いた洞窟の最深部、そこは丸い空間で、その壁沿いに堀のような水に囲まれている場所であった。変わったことと言えば、色とりどりな結晶が生えていることと、天井に星空という常識とは外れた光景程度だろう。

 そして、二人の視線の先には、二人に話し掛けたであろう人物…………白髪に伸びた白髭、優しい笑みを浮かべ背も丸まり、見た通りの年老いた老人がそこにいた。だが、こんな所に一般人がいるわけもなく、この老人こそが、セヴランの師匠であった。


「師匠、今回はまた中々に激しい歓迎をしてくれましたね。久し振りの修行内容でしたよ」


 セヴランは懐かしさを感じつつ、そこの老人……師匠へと話し掛ける。だが、その老人は笑みのままセヴランへ向けられ


「セヴラン、お前弱くなったの。この地から離れて自身の力を過信したか?まったく、困ったものじゃな……」


 懐かしいセヴランと師匠の再開は感動の再開とはならず、厳しい言葉がセヴランには伝えられた。


「……………………」


 セヴランは師匠と楽しいお喋りをしに来た訳ではない。それは理解している。しかし、まさか突然としてそんなことを言われるとはセヴランも考えてはいなかったために、何故、今こんなことを言われているのか分からなかった。何を言えばいいのか、最早頭の中は真っ白になり、セヴランは言葉つくれなくなった。

 リーナは二人の間に出来た微妙な空気に場違い感を覚え、セヴランを横目で見つつ次の言葉待つこととし、静かに気配を薄めていった。そんなリーナからの視線も感じ、セヴランは


 ……師匠は、一体何が言いたいんだ……俺はここを出てから実戦も重ねて、それなりには変わったとはずなんだが……さっきのあれで、弱いと判断されたのか。


 セヴランは、思考を巡らし必死に何が駄目だったのか理由を探す。だが、そこに答えを見いだすことはなく、ただ時間を消耗するだけだった。

 そんなセヴランの悩む姿に師匠はため息を吐き、呆れ気味に近くの岩に腰掛けた。


「もういい、そのことは後じゃ。それより、そこに隠れているバーンズよ、早く出てこい」


 師匠は最深部の空間の入り口にあたる細い場所に声を飛ばす。それでセヴランとリーナの二人も振り向き、三人の注目が集まる。すると、そこからは先行したセヴラン達の後を居ってきたバーンズ達が姿を現し、ようやく全員が目的地へと到着したのだった。


「やはりディルムンク将軍……貴方だったのですね、この手紙の差出人は」


 バーンズは姿を見せると一礼し、その後に服の内側から過去に送られてきていた手紙を見せた。真実を確認したいバーンズだったが、その考えはセヴラン同様にこの場では答えは返されず


「まあそう焦るな……ようやく揃ったのだ、この運命を乗り越える鍵が…………」

どうも、作者の蒼月です。

これにて、第六章終了となります。ここまでが長くなりましたが、なんとか終わりました。

ここから戦闘が主な七章に入ります。また、物語のキーはここからどんどん明かされます。今後、セヴラン達の進む物語をお楽しみいただけたらと思います。


では、次も読んで頂けると幸いです。

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