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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第六章~世界を覆いし終焉~
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第百五十五話~成長の一辺~

 セヴラン達が迫り来る攻撃の波を駆け抜ける中、洞窟の奥では、空中に映像としてセヴラン達を映し出し、それをディルムンクとソフィアの二人は観察していた。


「いやはや、そなたのこの力も大したものだ。今までは、音でしかセヴランの動きを把握出来なかったからのぉ。これなら、今までのように音だけで判断よりも楽じゃわい」


「耳には聞こえないような音だけで、この洞窟内のことを把握する貴方の感覚には呆れるわ」


「まあ、この程度出来たところで、そなた達原初の方々には及ばんとも」


 二人のどこか気の抜けた会話は、過激な会話内容にくらべて雰囲気は平和なものだ。その証明として二人の様子は、まるで子供の成長を喜ぶ親のようであった。

 だが、そんな二人の心暖まるような光景は、常識を疑うようなものでもある。セヴラン達の姿が、何故離れた場所から見えるのか、その光を映し出すソフィアの力とは何なのか。ここは、この世界にある常識では、最早語れない空間となっていたのだ。


「さて、それじゃあ、そろそろ本腰を入れて相手をしようかのぉ」


「あら、弟子には厳しいのね」


 ディルムンクは悪戯を考える子供のように、白髭をさすりながらニヤリと笑い、ソフィアはその様子を楽しみといった風に微笑むのであった…………。






「おいおいセヴラン、この攻撃はいつまで続くんだよ!」


 洞窟内を全力で駆けるセヴラン達だったが、攻撃の波は奥に進めば進む程激しさを増し、最前衛のセヴランとリーナが処理できる矢の数に限界が近づき、二人が処理しそこねた矢がバーンズとキルへと向かうけど数も増していた。二人も全力でこれを対処していたが、それを失敗すれば魔法以外を苦手とするエメリィに攻撃が及ぶこととなり、緊張感が張り積めている。


「あ?そりゃ、この洞窟の最深部にいる師匠の所に着くまでだ――なッ!」


 しかし、セヴランも現状に余裕は無く、矢を弾きながらバーンズへと言葉を返していた。そんな中、攻撃の波を抜けながら洞窟の奥へと進んだのか、更に開けた場所へと抜ける。この開けた場所に着くと、セヴランは叫び


「後少しで最深部だ!ただ、ここから更に攻撃を激しくされる可能性がある、気を抜くなよッ!」


「なら、もっと速度上げてくわよッ!」


 セヴランの言葉に、全力を出すべきと判断したリーナは更に加速してゆく。


「まったく……バーンズ!俺達は先に突っ込む、遅れてでも付いてきてくれよッ!」


「お、おい、セヴラン!」


 バーンズは二人の先行速度に対し何かを言おうとしていたようだが、セヴランとリーナはそれを聞くより先に加速からの突撃を行った。




「バーンズには悪いけど、これ以上後ろへの攻撃を任せないようにするのは限界だからね~。とっとと、ここを抜けるわよセヴラン」


「はいはい、人使いが荒いこって」


 リーナはバーンズの言葉を無視してはいたが、それは意味のない行動ではない。リーナとセヴランの二人は、ここまで後ろに控える三人のことを考え、武器ともいえる速度を殺したうえで、迫る矢のほぼ全てを弾き返していた。しかし、既に処理できる矢は限界に近かった為、セヴランの言葉通り攻撃が増すのなら、バーンズ達を気に掛ける余裕は無くなる。故に、そうなる前に速度がある二人で奥まで強行しようという考えであった。

 そして、セヴランの言葉は現実のものとなり、矢の攻撃が激しさを増し始める…………。


 ……さぁて、師匠は相変わらず鬼畜なカンゲイをしてくれるな。


 セヴランは、過去の師匠との修行の感覚を思いだしつつ、迫る矢への対応を迫られた。


 ……右から二、正面から四、左から三……その次にも連続してくるか。


 セヴランは迫る矢を揺れる視界の中で正確に捉え、それを脳内で即座に自らの行動を判断する。

 そこからは流れの連続だ。

 セヴランはリーナより先に先行する。そして、まずは迫る正面からの矢を右と左、両の剣で下から振り上げ一本ずつ、それを即座に降り下ろし一本ずつの計四本を処理する。しかし、左右からも矢は迫り、それを剣で弾くことは既に叶わない。故に、剣での迎撃は端から諦める。

 正面四本の矢を迎撃したセヴランは、剣の降り下ろしと同時に反動を生かし、体を地面へと倒す。結果、セヴランを狙っていた左右からの矢は後方へと流れ、余裕のあるリーナは問題無く回避する。


 しかし、そんな生易しい攻撃で済むなどとは、セヴランも微塵に思っていなかった。

 地面へと倒れる再中のセヴラン、だがその視界で、あるものを捉える。


 ……流石は師匠、ここで俺が倒れて回避することも折り込み済みですか。


 セヴランが見たのは、倒れたセヴランの顔面へ目掛けて一直線に迫る五本の矢であった。まだ完全に倒れてこそいないが、このまま倒れれば、セヴランは矢の攻撃を顔に受けここで死ぬだろう。そもそも、セヴランからしてみれば、今更死ぬ可能性もないような生半可なことをしてくる師匠だとは思っていなかった。

 だからこそ、セヴランは更に回避、そして迎撃へと移る。


 セヴランは倒れている。しかし、それは倒れている最中ということだ。そこで、セヴランは地面へと倒れる直前、剣を持った手手で地面を叩き、腕の力で体を持ち上げるように跳び跳ねた。セヴランが倒れる位置を見越していた攻撃は、地面スレスレだったことが結果に繋がり、跳び跳ねたセヴランに回避されることとなった。


「まだまだッ!」


 セヴランは矢の攻撃をかわしたが、それだけでは動きは止まらない。セヴランは跳ねる際、特に左手側に力を入れ、跳ねながら自身に回転を加えた。その回転を、剣を持つ手を広げることで更に遠心力を加え、更なる追撃の矢を三本叩き落とす。

 そんなセヴランは空中に舞いつつ


「リーナッ!」


 前へと進む動きを止めない為、相方とも言えるリーナの名を叫び……


「待ってたわッ!」


 セヴランの言葉に、リーナは笑いながら前へと躍り出た。

どうも、作者の蒼月です。

少しここ最近忙しく、投稿遅れました。投稿ペースを維持するのって、本当に大変ですよねぇ……


さて、本編では今回はセヴランの活躍でしたね。(まあ、まともな戦闘でもないから、活躍って程でもないというのはそうなんですが……)

多分、次からリーナの描写も増やし、第四章辺りの感じで書けるかと。

やっぱ、戦闘パートは書くのが楽しくていいですね~


では、次も読んで頂けると幸いです。

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