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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第六章~世界を覆いし終焉~
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第百四十六話~傷痕~

 セヴランが再び目を閉じてからそう時間は経っていないが、台車で寝ていたセヴランは微かに変わった音が耳へと響いてきたために、その体を起こした。

 周囲では、長々と寝ていたセヴランに呆れるようにエメリィがため息をついており、リーナもまたどこか冷ややかな視線で見つめていた。おそらく、この状況で長時間寝れることに対して何かを思っているのだろうが、セヴランはそのことは今はどうでもよかった。耳に聞こえた微かな音がした方面へと慌てて視線を向けそれに対しエメリィは言葉を作った。


「やっとお目覚め?昼前なのに、いつまで寝てるのよ」


 エメリィから言葉を投げ掛けられるが、セヴランはそれを完全に無視し


「何か聞こえなかったか?」


 セヴランは進行方向向かって左側、サファクイル基地のある方面から音が聞こえた気がし、他にもその音が聞こえなかったかの確認をとるが


「え?別に、特には聞こえないけど?そうよね、リーナ」


 エメリィはセヴランの質問に特に聞こえなかったかと返し、その質問に対する回答をリーナへと振った。リーナは一瞬驚きはするが、エメリィと同じで不思議そうにセヴランを見


「音って言われても……特別何も聞こえないわよ?」


 エメリィとリーナの二人には、セヴランが聞いた音は聞こえておらず、むしろセヴランが聞いたという何かの方が聞き間違いではないかと思えた。

 だが、セヴランには確かな確信とは言えないまでも、その音が無視してはいけないような、そんな不思議な感覚を覚えていた。実際に、それが何を意味するのかは分からなかったが、セヴランはただ不安な気持ちを覚え


 ……なんで、あんな小さな音が聞こえたんだ?……サファクイル基地か。あそこはもう陥落してる、レギブスが今更何かするとは思えないが…………。


 セヴランは、己の感じる不安が杞憂であって欲しいと願いつつ、馬車に揺られながら師匠が待つ自身の第二の故郷へと急ぐのであった…………。






 太陽も空の頂点に差し掛かろうかといったそんな頃、フィオリス王国内に存在する基地の一つ、サファクイル基地に人の影があった。

 サファクイル基地は、つい先日とも言えるあのレギブス軍の進行を受けて、実質的なその能力を失っていた。国境の防御の要、堅牢の防壁の城門は破壊されたまま、聖獣によって掘られた大地の穴は崩落を招き、レギブス方面軍がレイルーン砦まで後退した時と比較しても、更に酷い状況へと転じていた。

 そんなサファクイル基地ではあったが、フィオリス王国にとって重要な防衛線。だが、それを簡単に手放す訳にはいかないために、サファクイルまで戦線を戻す為の基地補修作業が方面軍によって行われていた。多くの資材が運び込まれ、第一から第三まで分けられたサファクイル基地内の最も内側の領域までは、問題なく活動できる程度まで基地の機能を回復させていた。


 サファクイル基地内には、数千人にも及ぶ大規模な人数が集まっており、次は第二防壁内の陥没した大地を直す為の土木作業が行われようとしていた。だが、その規模の人数が好き勝手しては纏まるものも纏まらず、そこには指揮官の姿も勿論あった。


「まったく、この有り様をどうしたものか…………」


 土木作業を行う為、その大地の様子を確認しようと第三防壁上にその指揮官の姿があり、現状を見や否や早速重たい重圧に押し潰されそうなため息を吐くのであった。

 その指揮官はファームド、レギブス軍進行の際は第四大隊の指揮を任され、あの戦いで地獄を生き抜いた一人であった。彼は、レイルーン砦まで後退した部隊を率いてサファクイル基地にいち早く帰ってきており、懐かしさに幾らかの思い出等もよみがえっていた。

 だが、現実は山程の仕事が押し寄せてきており、思い出に浸っているファームドの元に指示を乞う上級兵達が集まっていた。


「ファームド中佐・・、まずは何からやらせますか?」


「ん?あぁ、そうだな……まずは足場の確認からだ。いつ崩壊してもおかしくない、注意しながら崩れそうな足場を洗い出す作業から指示してくれ」


「はッ!」


 ファームド中佐、そう呼ばれたファームドは指示を出し、最適な流れを部隊に生み出していた。

 あの戦いにおいて少佐だったファームド。まだむだ若い将官ではあったが、戦闘における功績と抜けたカーリー大将の穴を埋める形で階級が一個上がっていた。だが、そんな功績も手放しには喜べておらず、ファームドとしては複雑な気持ちであった。


 ……カーリー大将を失ったから、自分はこうして階級があがっただけだ。あの戦いも、セヴラン達や姫様の活躍が大きい。私は、一体どれだけのことが出来たのだろうか…………。


 そんな悩みを心に抱きつつもファームドは己のすべきことを優先と、眼下の作業に目を向け…………


 突如、基地内に響き渡るかのような悲鳴が聞こえてきたのであった。

どうも、作者の蒼月です。

今回は、久し振りの(誰も覚えてないような)キャラ、ファームドの登場でした。言っておくと、多分次も久し振りのキャラが出ます。

というより、そこまでいきたかったのですが、思ったより進めず出せなかったという感じです。


セヴラン達が行動している最中にも、他で物語が進んでいるという描写ではありますが、これも必要な描写なので暫く付き合ってもらえたらm(__)m


では、次も読んで頂けると幸いです。

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