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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第六章~世界を覆いし終焉~
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第百三十九話~約束に導かれた者~

 セヴランの号令の下、ブラッドローズの小隊長の集められたこの部屋では次の作戦内容を決めるため、机を囲んで会議の仕切り直しが行われていた。

 セヴランを中心に、リーナ、バーンズ、エメリィ、キルの主要五人は別行動になるため、レギブスとパラメキアとの戦線に介入するための作戦についての意見が、机上にて数多く展開されていた。


「やはりここは安全策である、北の山脈を越えるのがいいかと。馬には少し過酷な道のりではありますが、無駄な戦闘は避けれるかと」


「いや、その道のりは時間が掛かりすぎる……最短でこそないが、時間だけを考えるならばパラメキア内を突っ切る方が効率がいいだろ」


 数々の意見が出された中、大きく分けてこの二つの意見までは集約することが出来た。しかし、安全策をとるのか、危険を侵してでも短時間で行動するのか。この二つの意見で、各小隊長も意見を擦り合わせれずに頭を抱えることとなっていた。


「やっぱ、ここの意見は分かれるわな。どうするよ、セヴラン」


 部屋で意見の対立をする中、どうまとめるのかとバーンズが視線を向けてくる。セヴランも意見は早くまとめた方がいいと判断し、頭の中で冷静に作戦を組み立ててゆく。


 ……おそらく、パラメキア領内では警戒態勢が敷かれている。そうなれば、間違いなく突っ切るのは危険だ。目的を優先するにしても、戦線につく前に無駄に兵が死ぬことになる……だが、北の山脈はそれ以上に危険とも言えるのが問題か。


 会議に出てきた名前、北の山脈。これは、フィオリス王国の北側に横長くそびえ立つ自然の防壁と言えるものであった。北の山脈は標高も高く、麓こそ道は存在するが、それを越えようとすれば険しい岩肌の悪路を進まなければならない。これの険しさは並みではなく、進行速度の遅くなる大規模な軍では移動は不可能に等しかった。これまで、小国であるフィオリスがレギブスとパラメキアに挟まれていながらもその防衛を可能としていたのは、北から攻め入られる心配がないという点も大きな理由であった。

 そんな防衛には最高の自然の味方も、これを越えようとするならば容赦なくセヴラン達にその牙を剥くのであった。だが、それだけならまだ、セヴランは山越えという手段を選んでいただろうが、それを悩むのにはまだ理由が存在した。


 ……あの山は行ったことあるが、一番危険なのはその中腹だからな……


 セヴランが悩むもう一つの理由。それは、山脈の中腹部では謎の悪天候に襲われることであった。標高が高い山であれば、その山頂等で雪に見舞われることはある。しかし、フィオリスの北の山脈は異常なまでの悪天候に襲われるのだ。一度人間が入り込めば、それを払うかのように吹雪が吹く現象が起きるのだ。一部では、これは呪いだの何だと言われてはいるが、それを信じたく成る程には何かの力が働いているような場所であった。

 もし、山を抜けるとすればそれを避けることは叶わず、下手をすればパラメキア領内を通る方が安全な可能性さえ存在した。そんな考えうる状況は全て考え、セヴランは何が最も最善なのかと悩むのであった。


 唸るセヴランを横に、リーナとエメリィは不思議そうに顔を除き込み


「なんでそんな悩んでるの?別に、山を越えたら安全なんだったら、それでいいんじゃない?」


「そうよねぇ、あの山は天候こそあれだけど、馬を使えばそんなに難しい話でもないでしょ」


 二人は山のことを知らない筈はないが、それでも敵領内を通るよりは安全策と山越えを推していた。だが、その発言にバーンズは納得いかないと手を挙げ


「いや、少し考えてくれ。これはあくまで俺の考えだが、ここはパラメキア領内を突っ切る方が安全じゃないか?パラメキアのフィオリス方面軍も、今はレギブス側に兵を出しているだろう。ロイヤルガードもそっちに向かっているのは間違いないだろうし、今なら案外楽に戦線にたどり着けるかもしれないぞ?それに、このブラッドローズの実力は折り紙つきだ。最悪、戦闘になってもそこらの雑兵には負けはせんだろ。……ま、セヴランの判断にまかせるがな」


 現状、どっちの道も問題を抱えている。その中で、戦闘が得意であるブラッドローズ向きなのはパラメキア領内を通る案である。バーンズの意見には、他の兵士達も納得をしているようであり、部屋の中には賛同の声が連鎖し始めていた。


「確かに、その方が案外……」

「俺達の実力なら、パラメキアの兵ごときに遅れはとらんさ」

「そうだ、ここは一気に敵を片付ける方がいいな」


 小隊長である彼らの気合いの入り方、そして士気の高さは凄いものであった。間違いなく、フィオリス王国内ならば最高であろう。この士気は、活かせれば大きな力となることをセヴランは理解し、これで作戦を完全に決めることが可能となった。


「よし、ならば移動はパラメキア領内を移動するものとする。ただし、可能な限りフィオリスとの国境沿いを移動し、無駄な戦闘は避けること。そして、もし戦線にたどり着く前にパラメキアと戦闘になった場合、基本は馬の足で逃げ切ることを優先。台車から、追撃してくる部隊を銃装隊に迎撃させる。……後は戦線に着いてからだが、そこからの具体的な作戦に関してはこの場にいる誰かに任せることとなる。全員、それでいいか?」


 セヴランは全員の意見を擦り合わせ、現状で取れる行動の中ではマシな判断を出来たつもりでいた。少なくとも、他に取れる行動がないのも事実ではあったが……。

 だが、それに応えるように視界に映る仲間達は笑いかけてくれ


「隊長、俺達が先に戦線で戦ってる間、きちんと情報とやらを集めてきてくれよ」

「そうだ。俺達は、俺達みたいな奴が生まれないように戦うんだ。その隊長が、一番重要なとこにいないんだ。とっとと用事を済ませて、俺達に合流してくれよ」

「ま、セヴラン隊長が来なくても、そんときゃ俺達だけで戦いを終らせてしまうかもな」


 セヴランのかたい口調に、苦笑を超えて笑いながら言葉を口にし、今までよりも距離感が縮まった風であった。

 セヴランは理解していなかったが、これは今朝のロイヤルガードととの戦いで、絶望することなくロイヤルガードと渡り合い、その高い実力と想いに惹かれたからであった。そんなことをセヴランが知るよしもなかったが、それでも何となく居心地の良さを感じとり


「そうか、ならば部隊全体に通達!これより、我々ブラッドローズは本格的に目的の達成の為に行動する。目標はパラメキアとレギブスの戦線、その戦闘を止めることだ!各部隊は、この深夜のうちに動けるように用意をさせろ!」


『はッ!』




 セヴラン達は動き始める、己の目標の為に。だが、それはセヴラン達だけでなく


「ふふっ、どうやら遂に現れたようね……」


 見えないところでも、常に世界は動き続けているのであった…………。

どうも、作者の蒼月です。

今回、前半というより殆どは作戦とセヴラン達の距離感が近づいたということが主な内容でした。

ただ、一番重要な点として、最後に謎の声が聞こえましたね~さて、あれが誰なのか……今後に期待ですね。


今後、セヴラン達の動きは大変なものになっていきます。どうなるんですかね……(作者は、無事に最後まで投稿できるのか!?)


では、次も読んで頂けると幸いです。

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