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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第六章~世界を覆いし終焉~
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第百二十九話~手紙~

「国……ここまできて隠すのか。その真実を聞きたかったんだぞ」


 セヴランは、バーンズのこの後に及んでの事実を伝えない姿勢に若干ながら不満を示す。それは他の面々も同じ気持ちであるらしく、リーナとエメリィも納得がいかないといった風であった。


「……人から与えられるのが当たり前と思っているのか……少しは自分達で考えてみろ…………」


 重い空気の中、追い討ちを掛けるかのように言葉が走る。ここまで口を開けず、ただバーンズの後ろで控えていたキル。そのキルが口にした言葉は三人に対して挑発的であり、空気の重さに不穏さが増したのであった。


「キル……それはどういうことだ?」


「……事実を言ったまでだ。お前達は自分の意思で知ろうとしていない……ただ状況に流され、人に与えられた世界で生きている……だから、こうして利用される…………」


「キル……貴方も何か知っているのね」


「……………………」


「沈黙は肯定よ、図星ね」


 リーナの問いに、キルは答えない。しかし、キルがバーンズ同様に何かを知っているのは確かであり、それを隠す理由が不明というのも現状であった。


 セヴランはバーンズの隠す事柄も気にはなったが、キルの言葉にも疑問を抱いていた。


 ……自分の意思で知ろうとしていない?……確かに、今にして思えば出来すぎてるな。俺みたいな一雑兵が、ここまで異様な速度で軍でのしあがる……個人的には嬉しい話だが、普通に考えてみればあり得ないよな。


 思い返してみれば、セヴランの辿ってきた異様な程の出世は普通にはあり得ないものだ。サファクイル基地での攻防の際、セヴランがだした戦果は誰もが称賛するものだろう。しかし、最終的に敵を退けた大きな要因はブラッドローズの参戦であり、セヴラン個人の力は中盤までしか意味を成してはいなかった。それらの事を思いだし、セヴランの中に一つの考えが浮かび上がり


「キル、お前の言う通り俺は状況に流されてきた……というより、状況に対応することで精一杯だった。目の前にあることをこなし、その結果が現状だ。だが、このあまりにも出来すぎた筋書きは、一体誰の思惑なんだ?ここまで、俺に気づかれないように操り、俺を戦いへと導いてるのは誰なんだ。……誰が、何のために…………竜の子ってやつが関係してるのか」


 セヴランは、自身の現状を理解してゆく。自身が誰かの思惑で動かされていること、それがバーンズの隠している何かであること。今まで考えれなかったことが、きっかけを与えられたことで幾つもあった情報の欠片が結ばれてゆく。


「……ようやく、理解してきたか…………」


 キルはその一言を言うと、再び黙り口を閉ざした。何故ここまで真実を隠すのか、それは分からなかったが、少しずつ真実を得ているのだと、セヴランは知るのだった。


「まあキル、そうセヴラン達にきつく言うなって」


 バーンズは、この瞬間は普段の優しい表情を見せ、セヴランに語りかけるように告げた。


「セヴラン……俺達は、力に頼るしかない。そして、俺も与えられた現状に流されてるんだ。別に、気にすることじゃねぇ…………ただな、これからお前さん達にさせようとすることは命を賭けることだ。戦争なんてもんより、よっぽど危険な橋を渡るかもしれねぇ。だからキルはああして、俺達をこの件から突き放そうとしてるだけなんだ。分かってやってくれ」


「バーンズ…………」


 セヴランはまだ分からない、バーンズが言っている言葉の意味が。しかし、自分がすべきはこの戦争を終わらせて民を守ること。その事実だけは、誰もがともにする思いであった。




「それでバーンズ、誰の指示で俺達を動かしてるかは教えてくれないのか?」


 暫くの沈黙の後、セヴランは再びバーンズに質問をした。その答えは返ってくるとはおもっていなかったが、今までのような重い雰囲気の落ち着いたバーンズは、頭の後ろで手を組みつつ唸り


「いやなぁ……それがさっきも言ったが、本当に分かんねぇんだよ。俺のところにいっつも指示の書かれた手紙が来るんだ。俺は、その事実に従ってるんだよ」


「……なんつうか、そんな怪しいもんを信用してんのか?バーンズにしては意外だな」


 正体不明の手紙、その事実に従うというのはまともな思考なら出来ないだろう。だが、バーンズの表情に怪しむということは感じられず


「いや、それがこれまでのことを予言してきたんだよ。この部隊の設立も、この手紙で指示を受けたからなんだ。この開戦もそうだし、今まで不利益を被ることはなかった。むしろ、俺達にとっては有利になることしか書かれてなくてな。だから、俺は信用することにしたんだ……ついでに、お前さんのこともそれで知ったんだよ」


 バーンズの思考はある程度理解できた。フィオリス王国は、帝国パラメキアと軍事国家レギブスに挟まれ、下手に動けばどちらかに滅ぼされてもおかしくないのが常である。そんな中、国を有利に導けるのなら、何者かに利用されているとしても、その提案を使いたいというのが事実だ。

 ならばこそ、セヴランはある一つの提案をする。


「バーンズ、その手紙の人物……そいつに直接会えば、国のことも、俺のことも話が進むんじゃないか?」


 セヴランは自身の事と国の未来等、知り得る情報を得るためにその人物を探す必要があると考えたのであった。

どうも、作者の蒼月です。

なんか、また投稿が遅れぎみです……早くしたいのですが、今現在少し多忙なのでm(__)m

言い訳はしないようにしたいですが、なんとか頑張りたいです。


本編ですが、まあ話し合いですね。まだ少し、こういった会話が続くので、戦闘は書けないですねぇ……まあ、ここできちんと書いておかないと後が大変なんで。

この手紙の主や、イクスの存在、戦争等、やることで忙しいですね~セヴラン達は、今後どういう行動をしてゆくのか。また、それがどう運命と関わってゆくのか、お楽しみください。


では、次も読んで頂けると幸いです。

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