第百二十五話~世界を守りし覚悟を示す者達~
闇夜、と言える時間も過ぎ、朝が近づこうとしている戦場。アイゼンファルツ基地の元城門付近では、フィオリス軍の代表と言える面々と、パラメキア帝国の代表であるロイヤルガードが残されていた。
互いに決めたものではなかったが、イクスを退ける為に共闘し、一触即発という雰囲気にはならなかった。しかし、互いに無言であった状況を終わらせたのはバーンズであった。
「よぅヴァンセルト、こうして話すのは久し振りだな」
「バーンズ…………」
「なんだよつれねぇな。久し振りの再開だぜ?もっと喜べよ」
バーンズはヴァンセルトに近づき、手を広げていた。バーンズがフィオリス王国軍の将軍として、戦争が起こる前までは剣技の指導役として交流もあり、ロイヤルガードのヴァンセルトとは深い交流がバーンズにはあった。
セヴランも話には聞いており、この場はバーンズに任せることにしていた。というよりも、フィオリス側ではバーンズしか現状を理解出来ていないというのも理由の一つではあった。
「ヴァンセルト、何黙りこんでんだよ~。折角なんだ、もっと話合お――――」
しかし、バーンズの好意的な筈の行動は、受け入れられることはなかった。
バーンズは言葉を遮られ、その眼前には刃が向けられていた。それは、ヴァンセルトの隣に控えていたリノームの両刃刀のものであった。
「おいおい、こりゃ何の真似だ?」
「ふざけるのも大概にしてもらいましょう、バーンズ殿。貴方が、私達と共に来ていればこんな――――」
「まぁまて」
感情が高ぶり、剣を握る力が強まるリノームであったが、それをヴァンセルトは声で制止した。それで冷静さを取り戻したリノームは刃を下げ、ヴァンセルトとバーンズはようやく対面することとなる。
「バーンズ、まともに話すのは久し振りだな。で、無駄な時間は此方も残されていない、本題に移らさせてもらう…………お前は何故、ここで私達に協力した。それならば、はなから私達と来ればいいものを」
ヴァンセルトの言葉の意味、これは現状理解しているのはバーンズとロイヤルガードの三人だけであった。故に、事情を知らないセヴラン達は疑問し
……バーンズは、ロイヤルガードから何か誘いを受けていた?なら、それは一体…………
セヴランが疑問をしている中、二人の会話は続けられた。
「すまんが、お前さんらのやり方じゃあ駄目だ。それじゃあ、守れるもんも守れねぇよ」
バーンズはヴァンセルトからの何かの誘いをきっぱりと断り、ヴァンセルトは落胆ともとれる重いため息を吐いたのであった。
「…………バーンズ、ならば受け入れるというのか、この終焉を」
「いや、そんなもん受け入れる訳ねぇだろうが。ただ、俺様は自分のやれることをやるだけさ」
バーンズの回答に、ヴァンセルトは失望したかのような眼差しを向けていた。そして、手で左右のリノームとリターシャに合図を送ると
「ならばバーンズ、私達はこの国に再び来ることになるぞ。それでもいいのか」
ヴァンセルトは、再度進行するとの言葉をバーンズ達に突きつけた。これは、事実上の宣戦布告であり、セヴラン達にとっては目下最大の脅威となるものであった。
だが、バーンズは特に気にする風もなく
「そんときゃ、俺達ブラッドローズが相手をするさ。次は、こう簡単に攻め入れると思うなよ?」
「ふっ……ならばせいぜい、そこの竜の血を引く者を大切にするんだな」
二人の会話、ただヴァンセルトが放ったその最後の言葉を聞きいた瞬間、バーンズから異様なまでの殺気に近い気が周囲に爆発した。
これには、セヴラン達は全員動くこともままならなくなり、イクスと対峙した際のような金縛りに近い感覚に囚われたのであった。
「そう苛立つな。事実だろ?」
ヴァンセルトは冷静に言葉を返し、これにバーンズも放った気を弱め
「あんまし余計なことを言うんじゃねぇよ」
「…………リノーム、リターシャ、撤退だ。ここでの用は済んだ」
「「はッ!」」
ヴァンセルトの指示の下、ロイヤルガードは撤退を決めた。普通ならば、敵を逃さまいと追撃をかけるところであるが
「全員、追わなくていいからな。むしろ追うなよ」
バーンズはセヴラン達に追撃不要と指示を出し、これで戦闘は完全に終わることとなる。
ロイヤルガードの三人は陽の光が登り始める空に照らされながら城門を飛び越えてゆき、その姿はすぐに見えなくなった。
「ふぅ……ようやく一仕事終わったな」
「なぁ、バーンズ」
ようやく戦闘が終わり、セヴランはバーンズへと声を掛ける。セヴランには分からなかった、バーンズが何を知っているのかを。そして、それは他のリーナ達も同様であり、バーンズには疑問を投げ掛ける幾つもの視線が向けられていた。
「あ、あぁ……まあ、言いたいことは分かる。事情はきちんと説明する、今後の為にもな。セヴラン、ここにいる主要な連中を、この基地の会議室に集めてくれ」
バーンズは、今までの軽い態度は見せない。そこから、バーンズがこれから話すことは重要なものであると誰もが理解したのだ。
そして、ここからセヴラン達の運命も大きく変わってゆくこととなるのであった…………。
どうも、作者の蒼月です。
これにて、第五章は終わりとなります。多少、きりが悪いように感じるかもしれませんが、物語的にはここが重要なポイントなので。
特務部隊ブラッドローズ、セヴランが加入したことで初の本格的な行動を始めた訳ですが、いきなりのロイヤルガードとの戦闘。そして、謎のイクスという存在との遭遇。彼らの行動を指示してきたのはバーンズですが、そのバーンズも何かを隠してここまで来てます。
さて、次の章からはセヴラン達が様々なことに関わってゆくこととなりますが、この世界の行く末を、皆様も楽しんでご覧下さい。
少し長くなりましたが、いつも皆様が見てくださるおかげで、私も楽しく文章を書けております。ありがとうございますm(__)m
では、次も読んで頂けると幸いです。




