第百十二話~若き指揮官~
紅き三騎士、ロイヤルガードは敵陣にいれど凛とした佇まいであった。
「くそ、化け物が増えたな」
「でも、状況は圧倒的不利から絶望的な不利になっただけよ」
「まったくだが、笑える冗談じゃないんだよなぁ……」
地を蹴り跳躍し、弧を描くようにセヴランとバーンズの元へ戻ってきたリーナ。三人が揃ったことでセヴランは状況に愚痴を溢すが、リーナはそれを作り笑いで誤魔化すようにはね除けた。今、セヴラン達が弱った姿を見せる訳にはいかない。後ろに立つ、仲間達の為にも。故に、セヴラン達は剣を持ち、立ち続ける。
「で、これどうするの?現状、あれに対抗できる実力がある戦力は限られるわよ」
リーナは視線を敵から外さず、いつでも動ける体勢を保ったままセヴランに指示を仰ぐ。セヴランは敵の数が増えた為に、これまでに立てていた作戦を全て破棄し、新しくロイヤルガード三人に対する作戦を頭の中で高速で組み立ててゆく。
……まったく、今思えば俺はなんでこんな立場なんだ?普通、単なるガキに部隊を預けるなんて正気の沙汰じゃないよな…………って、なんでこんな時にこんなことを考えちまうんだろうな。
セヴランは作戦を立てるその一瞬のうちに、ふとした疑問が頭をよぎった。しかし、今はそれに思考を割く余裕もなければ、敵が待ってくれる時間もなかった。故に、思考を終わらせ
「バーンズ、前衛部隊を率いて、リノームを抑え込めるか?」
セヴランは作戦の為に確認をとる。その最初の相手はバーンズであり、目上ではあるが戦場では仲間として接することを決めているため、同世代の仲間に命令するようにバーンズにも問う。その問いに、バーンズは笑ってみせ
「任せろ、王国最強と呼ばれた元将軍の意地をみせてやらぁ!」
バーンズの意気込みは良し、その実力からもロイヤルガード相手としては最適であった為に、セヴランはバーンズに近接戦の部隊で敵を一人押さえ込むことを任せる。そして、次に杖を抱えたまま魔法の詠唱をし、術式の展開をしていたエメリィに横目を向け
「エメリィ、後衛の部隊と前衛の一部を使ってリターシャを足止め、可能なら仕留めてくれ。あの化け物三人の中なら、一番仕留めれる可能性は高い……勿論、部隊が全滅する可能性はおおいにあるけどな」
セヴランは頭に叩き込んだ資料からロイヤルガードのおおよその活躍と功績は知っていた。そこから得られた情報から、現状において勝ち筋を見いだすことは不可能であった。しかし、そんな化け物の中でも実力の差があることは知り得ていた。故に、セヴランはロイヤルガードの中でも個人戦闘能力が僅かに劣るリターシャを、遠距離と破壊力を持つ魔法を使えるエメリィに任せることを判断した。
セヴランからの期待に、エメリィは杖を手の内で回すようにして構え直し
「分かってるわ。お姉さんに任せておきなさい」
笑みとともに、リターシャへの作戦を承諾してくれたのであった。
これで、ロイヤルガードの三人の内二人の相手は決まった。そして、残るは化け物の中でも飛び抜けているヴァンセルト。その相手を務めれる者は現状にはバーンズぐらいしかおらず、セヴランは賭けと思いながらも指示を下す。
「リーナ、俺とお前の二人であのヴァンセルトの相手だ。倒せないのは分かっているんだから、やられないことと時間稼ぎに徹する。できるか?」
セヴランの要求は無茶なものであった。自分達よりも強者を相手に時間稼ぎなどできる訳がない。それも、やられずなどというのは針に糸を通すよりも何倍も難しいことである。
だが、二人ならばそれを可能にできる可能性がある。それは、自身の体を犠牲にして生み出す速度であった。少なくとも、さっきの一瞬の攻防で速度だけでは対等であることをセヴランは測り、時間稼ぎなどという無茶な作戦を思い付くのであった。
こんな無茶苦茶な難題に、リーナはセヴランの意思を理解しているかのように一度頷き、笑い
「流石、私達じゃあ考えないような馬鹿な作戦を立てるわね。まあ、だからこそ貴方を指揮官にするように言われたんだけど」
「言われた?」
セヴランは初耳な内容の言葉をリーナから聞くが、リーナはそれに答える様子はなく
「それはまた今度よ。今は、目の前の化け物相手にどこまで時間稼ぎが出来るか分からないんだから……」
「まあ、それもそうだな」
セヴランは無駄な思考は終わらせ、相対するヴァンセルト達へと視線を戻す。敵に塩を送っているのか、あるいは強者故の傲りなのか、ヴァンセルト達はセヴラン達の話し合いの瞬間に攻撃をしてくることはなかった。だが、ヴァンセルト達に負ける様子など微塵も感じられず、冷静な口調でセヴランに言葉を送り
「終わったかな。では、そろそろいいか?」
ヴァンセルト達三人はセヴラン達全員に剣を向ける。それだけで、ロイヤルガードと相対する者達は震え上がるが、それを国を守るという強い意思で押さえつけ
「あぁ、待たせて申し訳ない。それじゃあ、ロイヤルガードの三人にはこの国、この戦争からは退散してもらおうか」
セヴランは剣を掲げる。それに続き、他の者達も剣を構える。
そして、その先頭を行き、全ての指揮を出すこととなるセヴランは剣を降り下ろし
「作戦通りに行動開始!全員、ここで何としてでも国を守るぞ。我らの背に、民はありッ!」
『うおおおおぉぉぉぉぉ!!!!!!』
号令の下、フィオリス側の兵士は突撃を開始する。こうして、ロイヤルガードとの正面衝突が行われたのであった…………。
どうも、作者の蒼月です。
まあ、本編に関わることですが、この作品に登場するキャラの名前が被ってるようなのがいない?と思われた方はいるのではないでしょうか。
ロイヤルガードのリターシャとリノーム
ブラッドローズに所属する治癒魔法を使うリーシャ等
このように似た名前のキャラがいるんですよねぇ~これなんですが、一応意味はあるんです。ただ、これが分かるのは先か、EXの買いなので気長に待ってもらえたら嬉しいです
では、次も読んで頂けると幸いです。




