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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第五章~集いし精鋭、特務部隊は動き出す~
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第百六話~覚悟を迎えし戦場~

「おいお前ら!とっとと準備を済ませねぇと間に合わなくなるぞ、作業急げッ!」


『おうッ!』


 王都トワロ地下都市たるセヴラン達の基地。そのパラメキア側に位置する地上とを繋ぐ柱の周囲では、軍用に作られた台車に装備類などを詰め込む作業をしているブラッドローズの隊員達の姿があった。

 柱に備えられたリフトは、装備類を詰め込まれた台車を乗せつつ、地上に放たれる刻をまだかと待ち続けていた。


「こりゃあ、上のエリアまではリフトよりも階段の方が早そうだな」


 作業を続ける光景を目に、リーナ達と移動していたセヴランは状況を理解した。リフトにある台車への装備搬入にはまだ暫く掛かり、上へと登る他の隊員達も柱に直接取り付けられている階段を登っていた。故に、セヴランもリフトではなく階段へと進む進路を変えた。

 そうして、階段を登り初めたセヴランだったが、隣を進むリーナは重いため息を吐き


「はぁ……どうしてリフトは一つしかないのよ~階段登るのしんどいのよねぇ~……」


 リーナは足取りを重たそうに階段を登りながら、リフトが一つなことに対して愚痴をこぼしていた。セヴランはリーナの言葉に同じ気持ちを持ち


「確かに、リフトが一つなのは不便だよな。まあ、構造上仕方ないんだろうが」


 セヴランは、己の中に記憶した膨大な資料から得たこの地下都市の構造から結論を出す。

 この地下都市に存在する四つの柱、そこに備えられたリフトは現状魔力を原動力に地上とを繋いでいた。しかし、ある程度の重さを運搬するために必要な魔力は異様な程多く、それを使わなくても僅かながらに魔力を消費する為にリフトの数を増やすことは難しかった。

 セヴラン達は階段を止まることなく登り続けていたが、リーナの愚痴は一向に止まる気配を見せず


「おいおいお嬢、そろそろ愚痴は止めてくれませんかねぇ?他の連中も疲れちまいますか」


 セヴラン達の後ろを続き、同じく階段を登っていたバーンズは子供をなだめる様に優しくリーナに告げた。バーンズ自身は年老いているとは思えない程の体力を見せ、疲れを知らないのかピンピンしていた。

 だが、そんなバーンズの言葉にリーナは笑みを向け


「分かったわ。もう言わないようにするわ」


 なんと、一発で素直に人の意見を聞き入れたのであった。リーナは別にわがままという訳ではなかったが、人の意見を口答えもせずに認めるなど滅多にしないことであった。しかし、それにセヴランもバーンズもあまりいい感じはしなかった。何故ならば…………


「じゃあ、この問題の解決はバーンズに任せたわ!」


 こういった場合、無理難題を人に与えるためであった。

 セヴランもバーンズも、これまでの関わりから容易にそれは想像出来ていたため


「「また面倒ごとが増えたな……」」


 バーンズは押し付けられた仕事、セヴランは仕事が増えたことによる作業の進行管理の変更から頭を抱えるのであった。

 しかし、これは悪いことばかりではなかった。こうしたリーナの無理難題は、毎度何かしらの状況の改善に繋がっていたからだ。故に、セヴランもバーンズも、こうした無理難題を無視することはなかった。


 こうした会話を続けながら階段を登り続け、十数分の後にようやく生産工房たるエリアにたどり着いた。階段から上へと続く小型のリフトに乗り換え、体を揺られながら地上へ向けて移動する。


「はぁ、こんな小型のリフトを増やしたいとこだがなぁ」


 セヴラン達が乗っているのは本来武具を地上に運ぶ用の特別なリフトであり、増やすことは叶わないことは理解していた。だが、そんなセヴランの言葉にリーナは反応し


「そういえばセヴラン、貴方あの資料を本当に全部覚えたの?」


「ん?あぁ、そういう指示だったからな。それがどうかしたのか?」


 セヴランの回答にリーナは驚いた表情を見せ


「えぇ、あれって一ヶ月以上掛けて覚えるものなのに、貴方頭おかしいんじゃないの?」


 リーナはあり得ないことだとセヴランを笑った。告げられた事実にセヴランは唖然とし


「……は?いやいや、覚えろって言うから覚えたんだぜ?慣れない言葉ばっかりで相当苦労したんだぞ、アレ」


 セヴランは資料から相当な知識と共に、様々な言葉を習得していた。過去に存在した言語、今までに存在したものに対する別の呼び方。リフトという呼び名もそれの一つであった。


「まあ、おかげで私達も会話に困ることも無くなるわ。作戦行動も楽になるしね」


 リーナの言葉が終わると同時、地上と繋ぐ最後の階層に着き、もう一度リフトを乗り換えて再度地上を目指す。

 これが最後のリフトであり、この先には戦場へと続く地上が待ち受けているのであった。


「さぁセヴラン、覚悟はいいわね」


 リーナはこれが最後の確認とセヴランに言葉を向ける。その赤き瞳に普段のへらへらとした様子は感じられない。つまり、それが本気の言葉であり、これから向かう戦場の恐ろしさを感じ取れた。

 故に、セヴランはその言葉に本気で応える。


「あぁ……俺は誓ったんだ、力無き者を守るって……だから逃げはしない。たとえその先が、地獄だとしてもな」


 その覚悟を受け入れるように、暗闇から這い出るセヴラン達を太陽の光が迎える。久方ぶりの地上であり、セヴラン達の戦場。

 平和な時は終わりを迎えた。そして、次の戦場へとセヴラン達ブラッドローズは向かう準備を終えた。故に始まる、壮絶を絶する死闘のが…………そして動き出していた、今だ知るもののいない、影の存在が…………

どうも、作者の蒼月です。

今回は話がそこまで進んでませんね。まあ、動いてないわけではないのですが……


ここからようやく、カタカナなどの文字を使うことができます。(作者的には)楽になりました。

なお、セヴランの知識量は本当に尋常じゃないほど増えてますね。

そして、ようやく戦闘回がそろそろ帰ってきます。書くモチベーションも上がりやすいので、ここからも頑張りたいです


では、次も読んで頂けると幸いです。

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