第九十四話~懐かしの戦い~
……リーナが笑うって、ろくなことがないよなぁ……
セヴランはリーナの浮かべた笑みに、何か危険な予感を感じずにはいられなかった。
己の経験則から、この流れがセヴランにとって面倒なことが起きるのは目に見えていた。故にセヴランは、自身に危険が降りかからないように祈るばかりであった。
そんなセヴランの祈りなど知るよしもなく、リーナの言葉は続けられた。
「ここにいる新兵の集団、彼らはサファクイル基地でカーリー大将らと共に戦い、レギブス軍……更には七極聖天の一人、マリーンを退けた者達よ」
「七極聖天のマリーンを!?」
「では、彼らがあのカーリー大将の見込んだという……」
「しかし、どうみても新兵なのにそこまでの実力が?」
リーナの言葉で、既にセヴラン達の情報は伝わっているのか、それぞれが憶測を飛び交わせ広間にざわめきが広がる。その意見は様々なものであったが、それは次のリーナの言葉で二つに別れることとなった。
「そして、カーリー大将の指揮下だった彼らは方面軍に属していない。それに、腕も確かなものよ。……だから、彼らを私達ブラッドローズの指揮下に加えることにしたわ」
この言葉が、セヴランも、リーナも、特別遊撃隊の皆が想像していた現象を引き起こすこととなる…………。
「な、何故このような者達を!我々は目的の為、ここまで志を共にする仲間で計画を進めてきたのですよ?そこにこのような者達など……」
「そうです!どこの馬の骨ともしれない相手を仲間になど認められません!」
「リーナ様、考えを改めて下さいッ!」
簡単に想像できたブラッドローズの面々の猛反発。セヴラン達は仕方ないことだと、これを諦めざるを得なかった。
サファクイル基地まで出てきた一部の部隊だけでも反発を受けたのだ。本拠地に構える本隊にこの事実が伝われば反発はより強力なものとなるのは明白であるのだ。
故にセヴラン達は諦めるが、それを諦めないものが……一人だけいたのだ…………。
「何故彼らを受け入れないのかしら?それは貴方達の下らないプライドが生み出す戯れ言に過ぎない筈よ?」
勿論、それはリーナであった。
リーナはあからさまに怒りをにじみ出さしていた。しかし、まだそれは表に出すわけではなく、分かる者にのみ伝わる怒りであった。
リーナに自らの意見を否定された反発をしていた者達は歯を噛みしめ、己の意見が間違っているということを理解はしている節を見せた。だが、それでも意見を曲げることはせず
「しかし、それではここまで我々だけで計画を進めていた意味がありません!今さら人を入れるぐらいならば、中央にでも強力をさせればもっと早くから戦力は手に入りました。それを今になっての戦力増強、それも新兵の集団などとは話になりません!」
反発をする一人の兵士、その言葉はおそらく正しいのだとセヴラン達も理解できた。戦力増強ならば、セヴラン達でなくとも構わないのだから。そこの意見に筋は通っており、納得はできるものであった。
しかし、それでもリーナは冷静に答えを返す。
「中央が私達に強力すると思うかしら?だからバーンズはこっちに来たのよ?貴方達はもう少し考えをまとめてから言葉にしたら?」
リーナは怒りを漂わせながらも、それを爆発させずに冷静に兵士の意見を一つずつ潰していく。
これにより、兵士は出せる意見が確実に減ってゆく。苦しい顔で、それでも反発を止めることは出来ない。一度出した意見は、そうそう曲げれるものではないのだから。
そして、兵士は己の持つ最大の意見をぶつけることを決め…………
「ならばこそ、尚更新兵を入れる必要などありません!今すぐにでも、方面軍へと手渡した部隊をこちらに戻すほうが戦力となります!彼らは我々と共に鍛えた兵士であります。彼らの実力がこの新兵どもに遅れをとるとは信じられません!」
兵士は横目でセヴラン達を睨み、己の意思の固さを証明した。
だが、これがリーナにとって最も望む展開であることは、彼らとて理解など出来ていなかった…………。
セヴランは見た、兵士の言葉にリーナが口を僅かながらに弧を描いたのを。それが、セヴランにとって面倒なことになるであろうことも、想像は容易かった。
「ならこうしましょう。私と、そこにいる特別遊撃隊の隊長であるセヴランが、貴方達と模擬戦をして実力を見せてあげるわ。貴方達は気に食わない者達全員でかかってくるといいわ!」
リーナの突拍子のない発言、これにセヴランは思考が追い付かず
「は?……え、いや、何故そうなる?」
困惑。困惑であった。
実力を測るのは理解できる。その為にセヴランが戦うのも理解できる。
しかし、何故セヴランと新兵でないリーナの二人で戦うのか。何故、バウルや他の新兵達との部隊戦でないのか。セヴランには分からないことが多かったが
……まあ、考えるだけ無駄か。リーナの考え方はズレてるもんなぁ……模擬戦か…………
セヴランはリーナの思考を読むことを諦め、目を閉じて目の前に迫った模擬戦をどう戦うかを考えることに思考を移した。
過去のカーリーとの戦いを脳裏に甦らしながら…………
こうして、セヴランとリーナの二人と、ブラッドローズの反発する者達との模擬戦が決定された。
二人で複数人を相手にするという無謀な戦い。しかし、セヴランもリーナも負けるつもりなどなく、全力でこの戦いに挑むつもりであった。
こうして、ブラッドローズの実力をセヴラン達は知ることとなる。自分達の新たな仲間の実力を…………
どうも、作者の蒼月です。
今回戦いって書いてますが、戦闘は次からなんですよね~(なんというタイトル詐欺)
まあ、次の回はもともと予定はしてたけど書くつもりのなかった場所なんですよね~ぶっちゃけ
やっぱ、戦闘シーンがないと私の書く気がおきないといいますか。まあ、ちゃんと戦闘する理由もあるので矛盾とかはないから大丈夫ですかねぇ
あと、そろそろカタカナの字が増えてきます。それの解説はもう少し先ですが、これで幾分かは読みやすくなるかと
では、次も読んで頂けると幸いです。




