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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第五章~集いし精鋭、特務部隊は動き出す~
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第九十一話~王都トワロへ~

 馬で駆ければ二日と掛からないレイルーン砦から王都までの道のり、しかしそれをフェザリアンによる運搬によるものにさせたお陰で、四日という時間を描けつつもブラッドローズの面々は王都へと近づいていた。

 途中で休むこともほぼなく、台車に体を揺られながら兵士達は陽の昇る前の冷たい霧の中を進んでいた。


「……なぁリーナ、俺の記憶が確かならそろそろじゃないか?」


 セヴランは台車の内側から体をもたれ掛からせ、閉じていた目だけを開いて、リーナに問い掛けた。リーナもセヴランの言葉に台車で横にしていた体を起こし、眠たげに目を擦りつつ


「ん……うん、多分……そろそろだと思うわ……」


 眠気は取れないのか、目をほぼ閉じた状態で体をフラフラさせるリーナの姿は猫のようであった。


「王都か……知識では知ってるが、行くのは初めてだな……」


 王都、人の商売が栄え裕福な人々が集うフィオリス王国の中心。知識では知っていても、見たことはなかった為にセヴランの興味は大きく膨れ、本人は気づいていなかったが目は少年のように輝いていた。


「お前も王都がどんなところか気になるのか?」


 そんなセヴランの後ろから声を掛けたのはバウル。セヴランは後ろに振り返り、バウルの問いに答えた。


「まぁな、前に入隊の為に来たときは王都に来る余裕はなかったからな」


「入隊の時か……まだ一ヶ月程しか経ってないのに、なんかかなりの時間が経ったように感じるな……」


「あぁ、そうだな……」


 この一ヶ月、セヴラン達新兵の身を取り巻く環境は大きく変わっていた。

 故郷や己の育った場所を離れ、国を守る為に軍に入隊したセヴラン達。彼らは入隊後直後に国内でも高い実力を持つカーリーと戦い、すぐに山賊との実戦、更にはレギブスとの戦争の先端を経験するという、他国ではあり得ない程の速さで戦い抜いてきた。

 この一ヶ月だけで、同時期に集められた新兵の半分以上を失い、レギブス相手の戦いで軍全体で見ても大きな被害を被っていた。しかし、これによって戦い抜いた者達の実力が確実なものとなでたのも確かであった。

 こうした環境の変化は、己の目的の為に戦うセヴランとバウルにとって感慨深いものであった。


「まあ、私達が経験してきたこの道は、並ではないですからね」


「ギーブ、起きてたのか」


「バウルが起きているのに、私だけ寝てる訳にもいかないからね」


「んだと?今度は何の挑発だ?」


「はいはい、お前らは落ち着けって」


 後ろの台車から起きてきたギーブは早々にバウルに対して毒を吐き、反応するバウルをセヴランは呆れながら抑えた。

 普通ならば、台車はフェザリアン一匹につき一台を引かせるものだが、リーナの提案で二台の台車を金属製の金具で連結させ、二匹のフェザリアンに引かせるようにしていた。これによって速度が上がるとかいった変化はないのだが、リーナの「台車が離れていたら話せない」という意見に対応する為であった。

 結果として、二台ずつとなった台車の先頭では、セヴランにリーナ、そしてバウルらやバーンズらなどのブラッドローズと特別遊撃隊の指揮官達は集まることが出来ていた。


「なんだなんだ、朝から元気だな~お前さん達は。俺様にもその元気を分けてほしいもんだ」


 繋がれた台車の中間で話をしていたセヴラン達に、今まで寝ていたバーンズが起き上がっていた。その横では、起きたリーナにつられたエメリィも起きており、先頭の台車は朝から盛り上がり初めていた。


「よう、起きたのかよおっさん。あんたには、俺らの元気なんかいらないだろうによ~」


「朝からおっさん言うな、顔だけならお前もおっさんだろうが」



「おはようございます、エメリィ殿。さっそくリーナさんで遊ぶのですか?」


「おはよ~ギーブ。うん、とりあえず朝はリーナちゃんの成分が……ムニャムニャ」


「あぁもう、暑いから離れなさい。ってもう、抱きつかないでよ!」


 台車の上で、打ち解けた会話が広がり始める。セヴランは、この光景はいいものとして見ていた。

 この四日間、台車に揺られる旅は部隊の交流の場となっていた。ブラッドローズの面々と特別遊撃隊はそれぞれ会話を行い、少しずつではあったが互いに信頼関係を築き上げていた。

 初めは、誰から声を掛けるのかと中々会話が起きなかった部隊であったが、セヴランとリーナ、そして他のバーンズやバウルらなどは戦場での会話の延長で特に構えることなく会話をしていた為、それを習った各隊員達はそれぞれ会話を試みた。そこから打ち解けるのは長い時間は必要ではなかった。

 打ち解けた兵士達は旧友かのように話し合い、家族同然となっていた。これは今後行動を共にする者としては嬉しい限りであり、指揮をリーナに任されたセヴランにとっては重要なことであった。


 ……まあ、皆が皆そうとはいかないがな……


 セヴランは唯一残った不安要素を見た。セヴランの後ろ、繋がれた台車に黙って座り込むブラッドローズの青年。彼は初めに反発を起こした者であり、以降セヴラン達新兵とは一度も会話をしていない。必要な要件だけをリーナ達に告げ、それ以外ではセヴラン達を睨む程度の行動しかしていなかった。

 そんな彼もブラッドローズの指揮官の一人であるのは確かであり、今後とも長い付き合いになる為に放置は出来ないセヴランはため息を吐き


 ……まだまだ、信用を得るには時間がかかりそうだな。


 今後も仕事は多いと思考を唸らせるセヴラン。そんな思考に区切れ目を入れるように、部隊全体に伝わる声で一つの叫びが耳に入った。


「さぁ皆、王都トワロが見えてきたわよ!」


 ここまでの長い旅の疲れを吹き飛ばすようなリーナの叫び。その先には、霧が晴れて姿が鮮明になってきた巨大な王都が、戦闘から休みなしのセヴラン達を迎えていた。

 そして、セヴラン達は今までに経験をしたことがないような事実を知ることとなるのであった…………。

どうも、作者の蒼月です。

またまた投稿が遅れた?気にするな!(スミマセン、ここ最近は私生活が忙しくて……)

まあ、小説を書く時間をゲームに当ててるせいなんですけどね!(この作者は一度窓からアイキャンフライして脳をリセットするべきですね)

ともあれ、きちんと小説を書ける時間を確保できるようにするのが当面の仕事ですかねぇ……睡眠時間をこれ以上削るとかしんどいので許して!


では、次も呼んで頂けると幸いです。

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