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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第五章~集いし精鋭、特務部隊は動き出す~
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第八十八話~覚悟の力~

 バウルを走らさせて暫くの後、台車には集合を掛けられた特別遊撃隊の面々が集まってくる。勿論、彼らはどうして集めてられたのかを知らず、台車がある風景に困惑する者も少なくなかった。


「セヴラン、これから私達は何をするのですか?」


 セヴランに声を掛けたのは、ここに呼ばれた一人のギーブであり、その様子は台車がある光景でだいたいのことを察したようであった。


「あぁ、それについての説明を今からする。バウルと一緒に、各小隊ごとに並ばせてくれ」


「分かった。――――各小隊、副隊長を先頭に整列!人数が揃い次第、私かバウルに報告を!」


『はッ!』




 ギーブの号令の下、特別遊撃隊は手際よく小隊ごとに整列をし、三分も掛からずに整列は終わった。

 各小隊が整列する正面、全員に姿が映るようセヴランは近くにあった木の踏み台を移動させてから登り、左右にはバウルとギーブを並べて全員に視線を送った。


「特別遊撃隊の全員に告げる。我々の指揮官は本来カーリー大将であり、この部隊は他の部隊に組み込むのが間に合わずに急遽編成された部隊だった。しかし、カーリー大将亡き今、我々の指揮系統はどこにも属さないままだ。――――そんな私達の部隊は、ここにいるリーナ姫に実力を評価され、新編成された特殊部隊『ブラッドローズ』に組み込まれることとなった」


「特殊部隊?俺達がか?」

「でも、あの姫様の強さはセヴラン隊長と同じぐらいだぞ、その部隊に俺達に務まるわけ……」

「だけど現に今、こうやって言われてるんだぞ。事実としか……」


 セヴランの唐突な宣告に、特別遊撃隊の面々に不安の波紋が広がる。皆、大きく口には出さないが、隣の者と視線を合わせてどうしたらいいのかと困惑していた。

 だが、セヴランはこうなるであろうことは予測していた為に特に驚くこともなく、不安を消し去る為に次の言葉を並べた。


「私の一存で、みなを視線へ送ることは出来ない……だから、この部隊編成に異議のある者はこの部隊から去ってくれて構わない、後のことはセルゲノフ大将になんとかしてもらう。だから五分程待つ、よく考えて欲しい……自分の命を、どこで捨てるのかを…………」


 セヴランは目を閉じ、自らの前から人がいなくなることを祈った…………。


 ……そうだ、こんな馬鹿な話に付き合う必要はない。こんな無謀な話にのる馬鹿はそういないだろうさ。


 セヴランは、己の行っている行動が馬鹿であると理解しながら、出来る限り多くの兵士が去ってくれるだろうと期待していたのだ…………。




 だが、現実とは予想を覆すものであり


「――――ぇ――な、なんでだ…………」


 五分経ったのを薄目で時計を確認し、開けた視界には――――――だれ一人として欠けることなく、整列をして待機する仲間達の姿があった。


「隊長、今さら俺達が逃げるとでも?」

「そうですよ、俺達に力なき民を守るってことを教えたのは隊長ですよ」

「いきなり予想を外されるとは、今後が思いやられますよ~」


 並ぶ仲間達は、唖然とするセヴランに笑いながら軽口を叩き、セヴラン同様に覚悟を決めていることを示した。


「そうだぜ、俺達はそもそも故郷を失ったりした連中が多いんだ。今さら逃げろって言われて、はい分かりましたっておめおめと帰るような逃げ腰の奴はいねぇよ」


「まったくです。私達は、自分達のような人々を増やさない為に戦ってるんです。その為なら、この命ある限り全力で戦うまでですよ」


 兵士達に続いて、バウルとギーブの二人もセヴランに覚悟のほどを伝え、これで誰も異論などないということが示された。

 セヴランは、自身の想像以上に仲間達の決意の固さ固さを思い知らされ


 ……まったく……どいつもこいつも馬鹿ばっかりだな……まあ、俺もそうか


 セヴランはこれから自身の進む道が馬鹿の進む道であると、自分自身に対し笑い


「なら、ここにいる精鋭の諸君に告げる!我らブラッドローズの目標はこの戦争を終わらせる事だ!その為にも、お前達全員の力を全てを民の為に振るえ、そしてこの戦いを勝って終わらせるぞッ!!!」


『はッ!了解ッ!!!』


 セヴランの言葉に全員が応える、その覚悟は力となりて場の空気を震撼させ、後ろに控えていたブラッドローズの面々や、リーナ達さえも驚かせていたのだった。


「さあ、まずは次なる目的地の基地へと向かうぞ!時間はあまりない、急いで台車に乗り込めよ!」




 こうして、ブラッドローズに正式に加わった特別遊撃隊の面々は台車に乗り込み移動する体勢へと移り始めた。

 そんな中、彼らの姿を見ていたリーナは特別遊撃隊の意識の高さに脱力気味であった。


「まったく、彼らは一体何者なの?どうやったら、あんな風に部隊をまとめきれるのかしらね」


「さぁな、ありゃぁ……あのセヴランの人柄なのかもな」


 リーナとバーンズは、部隊の指揮を執るセヴランの姿に高い評価をしていた。部隊の様子は軍のものとは思えない程甘いものであり、しかしその統一のされ方は並の軍を超えていた。

 それを成しているのは何なのか、それがよくは分からなかったがセヴランの人柄が関わっているのは確実だと二人は判断していた。


「どうやら、セヴランに指揮官を任せたのは正解だったようね」


「そうだな、だが……大隊の指揮なんて俺でさえ簡単なものじゃない、それを簡単にこなしたセヴランの力は誰から教わったものなのかねぇ……」


「そうよね、やっぱりそこは不思議よね…………ギーブ」


 二人の中に存在していた疑問、それの答えを探すため、リーナはギーブの名を呼んだ。すると、影から相変わらず音一つ立てずに闇の中から現れ


「セヴランのこの五年間の過去を調べて頂戴、あれだけのことを教えた人物が必ずいるはずよ……いいわね」


「了解……」


 キルは再び闇に消え、命令の下行動を開始する。


「さて、セヴラン達をうちの連中は迎えるとも思えないし、まだまだ課題は多いわね……」


 こうして、闇夜を進むブラッドローズの王都へ向けた行軍が開始された。リーナやセヴラン、それぞれが様々な思いを抱きながら…………

どうも、作者の蒼月です。

今回は少しだけ重要な話がチラ見えしましたね~セヴランの過去、これから掘り下げるつもりなので、きちんと処理したいです


では、次も読んで頂けると幸いです。

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