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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第五章~集いし精鋭、特務部隊は動き出す~
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第八十七話~別れと決意~

 基地へと進んだセヴラン達五人は迎えた隊員の男の後を追い、基地の最も端である城門へと向かった。

 その間、とある景色が彼らを迎えた。セヴランを初めとした五人の活躍(キルの活躍はほぼ知られてはいないが)はサファクイル基地で共に戦った者達なら誰もが知るところであり、彼らに気付いた者は敬礼や喝采の声を送り


「姫様!次はどちらの戦場へ!」

「ここは我らに任せて、ご心配なさらぬよう!」

「共に戦えたこと、光栄でした!また共に戦いましょうぞ!」


 傷だらけの兵士達、彼らはリーナ達にあらんかぎりの気持ちを伝える。既に、セヴラン達が次の戦場へ向かうことが部隊に広がっていた為であった。

 リーナは兵士達の羨望の眼差しを受け


「ありがとう皆!この戦いを終わらせる為に、ちょっと次の戦いへ向かってくるわ!」


 五人の先頭を進むリーナは、自分達に向けられた期待に応えるように笑顔で大きく手を振り、羨望の眼差しを己を希望の象徴足らしめることで受け止めた。




「まさか、お前がそんな普通に笑うとはな……」


 長い兵士の波を抜けてから、セヴランはリーナの笑っていた姿に素直な感想を述べたが、セヴランの言葉にリーナは笑みを消し去り、普段のやる気の感じられない表情に戻り


「仕方ないわ、私達は彼らの希望たる存在……そうでなくてはならないのよ」


 そこには、希望となるために絶望さえ受け止める覚悟を決めているリーナの表情があり、それにセヴランは己の求めてきた力を考えさせられ


「希望……か……」


 自身に課せられている使命の重さ、そして、それが自分の望んだ力の先にあった道であると理解し、希望の象徴達は到底希望とは思えない重い雰囲気を纏いつつ、台車の元へと急いだ。




 喝采の嵐を抜け、五人が城門前に配置されたフェザリアンに繋がれた台車にたどり着くと、そこにはブラッドローズの面々が待機していた。彼らはブラッドローズの基本色である黒を基調とした布に、僅かな金の装飾を施したローブに身を包んでいた。だが、それには今までとは二つ程の変化があった。

 一つは、ローブの下には剣などの武装が見え隠れし、完全武装であったこと。

 もう一つは、戦場では被っていたフードをしておらず全員の顔が見えていたことであった。

 武装に関しては、戦場から戻るのだから特に気にすることもなかったが、ブラッドローズの隊員の顔が見えたことは、セヴランに一つの感想を抱かせた。


 ……皆若いな、俺と同世代か……下手したら年下か。


 そう、フードを外して表れていたのは、まだ十代の少年達であった。勿論、働き手としては充分な年齢であり、大人として扱われる年なのはセヴランも理解していた。しかし、ここでセヴランが若いことに驚いたのはそういった意味でなく


 ……俺が五年を掛けて手にした速度と同等、それも安定した術式の構築に成功してるとは……これまでの自信をなくしそうだ


 そう、セヴランは戦場で彼らの動きを見たことがある。そしてそれから分かるのが、リーナ同様に身体強化の類いであろうこと、その術式が安定して体への負担の少ない優れた魔法であることであった。

 そしてなにより、それを使用しているのが自分と同世代であろう者達であったことに衝撃を受けたのであった。


 ……これ、俺が指揮官なんか無理だろ……なんでリーナは、俺なんかに任せるのかねぇ……


 自分よりも将来の期待値の高い兵士を抱える部隊、その指揮官という重要な役割に自分が役不足ではないかと、セヴランは新たな不安要素を抱えることとなった。


 セヴランは、リーナらと共に台車に乗り込む準備をし始め、殆どの準備を終えた頃


「おいセヴラン、こんなとこで何してんだ?」


 セヴランは声のする背後へ振り向くと、そこには不思議そうな顔をするバウルがおり


「ん?あぁ、そういや言ってなかったな、これから特別遊撃隊は――」


「私達、ブラッドローズの一部に編入よ」


 セヴランの言葉に割り込むように告げたリーナ、その言葉にバウルは何を言ってるのかと口を開けて呆然とするが


「まあ、そういうことだ。とりあえず、他の連中を集めてくれ」


「い、いや待てよ!ブラッドローズに編入?何を言ってるのかよく分からんのだが――」


「いいから、いいから、時間もないし詳しい説明は台車に乗ってからするから。今は部隊をかき集めてこい」


 セヴランに背中を押され、何が起きているか理解出来ないまま、バウルは部隊の呼び集めに走らされた。

 そんな走ってゆくバウルの後ろ姿を眺めながら、セヴランは己の剣に手を当て


「カーリー大将、残された者達の未来……必ず、守って見せます」


 サファクイル基地の方角へカーリーへの誓いの言葉を送ると、セヴランは未練はないと踵を返し、次なる目的地の王都へと振り向いた。

 振り向く余裕などないと……自分自身に言い聞かせながら…………

どうも、作者の蒼月です。

なんか、間を繋ぐ回なのであんま書くことないですねぇ……そろそろ、作者は更新ペースが1日分遅れそうなので必死に上げた次第です。

更新ペースなんて気にしなきゃいいのに、度胸のない私は、あげなければと悩んでしまうんですよね~


では、次も読んで頂けると幸いです。

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