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悪魔は手の平に  作者: こっちー
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01 プロローグ






_____________親友が交通事故で死んだ。昨日、学校からの帰り道で別れるまでは元気だったのに。一度目は本当かと思った。なんとも無い只の偶然。僕はそういう事にした。いや、そういう事にしておきかったんだ。








_____________僕の教鞭を持った若い教師が心筋梗塞で死んだ。ついさっきまでは笑顔を浮かべていたのに。二度目には恐怖を覚えたが、こんな事もあるさと自分の心に嘘を付いた。この頃から僕は自分自身に嫌悪感を抱き始めていた。








_____________幼馴染の女の子が川に溺れて死んだ。今、その瞬間までは大雨で増水した川の様子を観て、大はしゃぎしてたのに。三度目には、僕の側から友人が去っていった。一人ぼっちになった僕はイジメの対象になった。そのせいで学校に僕の居場所は無くなり、僕は不登校となった。














四度目はイジメの主犯格だった。帰宅中に建築現場から角材が落ちてきて、即死だったらしい。



















僕は家族にさえ、見捨てられた。












-----------------------------------------------




水無月の日の光で俺、國尋登和は目が覚めた。昨晩降った雨でジメジメしており、そのせいで少し蒸し暑いが、別に苦になるほどでは無い。自室から出て、ダイニングに向かう為、階段を下りる。



「ふぅ…。」


.

あれから6年の月日が経った。俺は叔父の家に引き取られ、育てられた。叔父夫婦は俺を我が子同然に、愛情を持って育ててくれた。そのお陰かここ数年は俺の身の回りでは死人は出ていない、が、やはりもう俺のせいで人が死んでしまうのはもうまっぴらだ。中学を卒業したら家を出るって言っていたのに、「せめて高校まで」と、引き止めた。これが俗に言う家族愛ってヤツなんだろうか。なんにしろ、叔父夫婦にはとても感謝している。言葉では表せないほど…。今の時刻は6:20。ダイニングで軽めの朝食を取った後、コーヒーが入ったマグカップ片手にテレビでニュース番組を観ている。通り魔が発生しているだの、政治家の汚職事件だの、世の中は随分と物騒なものだ。



「ねぇ、登和!」



叔父夫婦には一人娘がいる。それがコイツ、國尋美月クニヒロ ミツキだ。ウェーブの掛かった長い茶髪。パッチリとした目。そして胸の二つの果実。美月はまさしく才色兼備。学校どころか他校にもファンがいるらしい。男子のみならず女子にも、な…?今、叔父夫婦は仕事の関係で家を開けている為、朝食は美月が作ってくれた。ありがとう、美月。



「ん?何だ?」



そんでコイツに熱を上げてる奴等は「お前なんかより」と、一方的な嫉妬で靴を隠したり、教科書に落書きしたり、と、小学生低学年がしそうなド低脳な悪戯を仕掛けてくる。それも、美月からの評判も落とさないように美月が居ない所でしかしない。イジメはガキの頃からされていたから慣れていると言えば慣れている。



「今日こそ一緒に学校に行くわよ!」



あらら、随分とご立腹のようで?



「はぁ、何でだ…?」



「貴方、いつも遅刻して来るじゃない!道草をさせないためによ!」



「いや…な?高校って面倒いだろ?」



「学校は将来の為に行くのよ!面倒くさがってたら将来いい事無いわよ?」



「いや、どっち道俺に明るい将来なんて無いから。」



美月はますます顔を赤くした。俺の屁理屈は火に油を、いや、ガソリンとロケット花火をブチ込んでしまったらしい。



「な…何よ!いつも屁理屈ばっかり言って!」



「俺は屁理屈と言い訳と家が大好きなんだよ!悪いか!」



「悪いわよ!」



「あ、さいですか。」



コイツが生真面目なせいでいっつもこんな感じで説教されてる。まったく、さっさと卒業して一刻も早く家を出たい。



「まったく…折れたなら、早く学校行きましょう!」



「へいへーい。」



階段を駆け上る。自分の部屋に戻ると、急いで制服に着替える。シャツを着て、ズボンを穿き、学ランを羽織ると今日の授業に必要な教科書一式が入っているバックを持つ。



「顔は洗った?」



「あ、洗ってねぇや。」



まだ、洗顔してない事に気付いた。美月に怒鳴られるのはもう嫌なので早歩きで洗面所に向かう。別にまだ急ぐ時間では無いが、自然に足が速くなってしまう。



「ったく、アイツも世話焼きだな…。」



洗面台に付属されている鏡で自分の顔を見る。今も昔も全く変わらないクシャクシャの黒髪、目付きの少し悪い黒眼、美月曰く俺は『整った顔』と言われるが、あくまで美月一人の意見なので詳しい事は分からない。身長も169cmとそれなりに高い方だと思う。



「ギヒッ、冷たっ。」



変な声が出た気がするけど気にしない気にしない。水道水はやや冷たかったが、我慢して顔を洗った。濡れた顔をタオルで拭う。タオルはとても柔らかく、顔に付着した水滴が吸い取られていくのを実感した。



「登和、行くわよ!」



「イエッサー…!」





----------------------------------



そんなこんなで俺達は家を出た。空は青く澄み渡っており、昨晩の雨で出来た水溜まりが日光を反射し、輝いていた。



「今日も快晴だな。」



「そうね。」



家から高校までは差ほど遠くない。大体1km程度だろうか。その為、毎日、自転車に跨らなくてもいい。産まれてこの方痔になった事が無いのはこのお陰があるかもしれない。俺達は談笑しながらゆっくりと登校していた。家から500mくらいの所にある大通りの横断歩道を渡ろうとしたその時、ある事に気付いた。



「ん…?」



「え?どうしたの?」



あのトラック、赤信号だっていうのに減速する素振りを見せない。まさかと思った。ここで、6年振りに発動したこの現象、“自分の周りの誰かが死ぬ”。



「ッッ!!」



もう自分のせいで誰かが死ぬのはもう嫌だった。トラックはスピードを落とさず、途轍もないスピードで迫ってくる。俺達がいるのは横断歩道の丁度真ん中、全力で逃げようとしても接触してしまう。これは自分が撒いた種だ。落とし前は自分で付けなければ。俺はどうなったっていい。美月だけはどうにか…どうにか…。


















「危ないッッ!!!」



















美月を道路から押し出す事、それが精一杯だった。美月が歩道に倒れ込んだのを確認した瞬間、全身を鋭い痛みが全身を襲い、俺の意識はブラックアウトした…。














続け

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