カンタンなヒミツと約束
薄くなった雲の隙間から朝の光が差し込み始めていた。予報ではこれからこの地域は晴れるらしい。そんな事を思い出しながら僕は妹の布団を庭に干し終えて、縁側からリビングに入った。
「おはよ。おにぃちゃん。」
「!」
僕は動揺した。前の日曜日では、妹のほたるは 「美少女マジョッコ!トリーちゃん!」の放送時間の8時、直前に起床 そして布団の水害に気付くハズ…と、よくよく考えてみると、ほたるを起こして水害を最小限に止めたのは…僕だ。どうする。
「おはよう。ほたる。」
「おにぃちゃん。お願いがあるんだけれど……」
「なぁに?」
僕は、戸惑いを隠しつつ返せた。
「朝の……お、オネショのこと。お母さんにヒミツにしてくれない?」
本来、兄としてはこれを親に秘密にしてしまってはいけない。秘密にすれば、何をしても良いという事を妹に教えてはならない。しかしこの日曜日だけは…
「うん。わかったよ。ヒミツにしてあげる。」
トモルは背に腹は変えられないという言葉を思い出した。
「ありがと!おにぃちゃん!」
頭をフル回転して考える。このままでは ほたるが非行少女になってしまう。
〜シミュレーション〜
「オラ!アニキ!金、出せや!」
「え…今月はもう二回も払ったじゃないか…」
「あぁん?口答えすんのか?!」
「い、いえ…そんなコトは…」
…そんな娘に育ててはいけない。
さぁ、現実だ。よし。
「でもその代わりに お兄ちゃんと二つ約束しよう。」
「なぁに?」
「一つ目。もうおねしょしない為に寝る前には、絶対におトイレに行くこと。あと寝る前に飲むジュースは、小さいコップ1杯まで。わかった?」
「うん!もうおねしょしたくないからイイよ。やくそくしてあげる!」
「二つ目。明日、一緒にお母さんに謝ろう。」
「え?ナイショにさてくれないの?」
「内緒には、するよ。でも謝らなくちゃ。」
「でも おかあさんに、なんであやまるの?ってきかれたら?」
「そうなったら……また謝ればいい。それで、ほたるがヒミツをヒミツにしたくなくなったら言っちゃえばいいんだよ。」
「そうなの?」
「そうさ。きっと許してくれる。」
「わかった。そうするね。」
これで僕は彼女を救える。
「じゃあ、朝ごはん作って食べようか。」
「あ、もうとっくにトリーちゃんのじかんだよ!」
「え?」
困った。迷った。どうする?自分!録画なんてしていない…絶対にほたるが怒る。そうしたら今までやった事が全て水の泡に…
「お、おにぃちゃんのバカ!!」
そう……まだ慌てるような時間じゃない。
「今から見ようよ。まだ始まって10分しか経ってないよ?」
「おにぃちゃん!じゅっぷんもたってるんだよ!お父さんが言ってたもん。アニメの10ぷんは、えいがのいちじかんだって。みても しかたないって。だから、つまんないよ。」
親父の奴、娘に何を吹き込んでるんだ……ん?
「今から?」
「うん。そーだよ!ぜんぜん、まにあない!」
そうか!その手があった!