自室にて
部屋が暗い。闇の中、夏風 灯は自然な手つきで明かりを付けた。
明かりが照らすベッドには誰もいない。「もしかしたらベッドにもう一人の自分がいるかもしれない」というトモルの淡い色の期待と不安は、アッサリと消えた。
灯は早速、テレビのスイッチを入れた。テレビは物心付く前からあるに古いヤツで、リモコンなどは無い。もちろん形は、立方体だ。
カチ、カチ、カチ。
トモルはボタンを押して夕日テレビのチャンネルにする。
部屋の針時計は7時29分を指している。「時計に日付機能があれば、テレビなんか見なくて良いのに…」そんなことを思いつつトモルはテレビに目を移した。
「クンクン。クンクン。におうぞ。におう。悪のにおいが。プンプンと。」
日曜あさの代表番組、番犬戦隊ワンワンジャーは、いつもこのセリフから始まる。
「ワンワンワンワン。ココ掘れワンワン!悪の根っこを掘り起こせ!」
「やっ!やめろ!そこを掘るな!アレが!アレがそこに埋まってるんだ!」
「これは一体なんだ!?やっぱりお前、嘘を付いていたな!」
「違うんだ!それは私が埋めた物ではない!あいつが!あいつがやった事なんだ!俺は何も悪くないんだ!なぁ。許してくれ。俺は、俺はよぉぉ!」
一度見たことのあるストーリーをトモルは、呆然と眺めていた。
どうやら…本当に今日は日曜日らしい。
あれから三日経ったはずだった。
あの時から三回空が回ったはずだった。
雨はあれから降らなかったはずだった。
でも
三日戻ってきた。
空は三回、逆回転して
あの日の雨も今、再び降り終わった。
「もどった。」
ただそれだけが彼にとってどんなに嬉しく苦しく悲しく幸せだと思わせただろうか、きっと誰にも解りはしない。
少しして
「あ!」
トモルは部屋を飛び出した。