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不条理を駆逐する  作者: がるぴん
第1章 はじまり
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第02話 家族と友人?


 数ヵ月が過ぎただろうか。


 彼は目が見えるようになった。


 ただ精神は肉体に引っぱられるものらしい。


 彼の行動は赤ん坊そのものだ、羞恥心を覚える様子もない。


 しかし彼はただの赤子ではない。


 その思考は赤子とはまったく別ものだ。


『生活サイクルは赤子のものに引っぱられる。生理現象の我慢はきかない』


 彼は眠りにつく。


 彼は欲求に素直に従う。


 自分は彼らの子供である。それ以外の何者でも無い。


 演技など必要無い。思うように生きればいい。


 彼はまさしく赤ん坊であった。



 一年が過ぎた。


 彼の両親は1才の誕生日を祝い、彼にプレゼントを渡す。


 どうやら積み木のセットらしい。


 それによって彼は今日が生まれてから一年経ったことを知った。


 彼の目の前には笑顔の両親と、美味しそうな料理。


 その料理はまだ食べる事ができないが、彼は大喜びである。


 彼は人として初めて誕生日を祝ってもらえた。



 二年目の誕生日。


 今年のプレゼントは絵本だ。


 使い古された品であるようだが、この世界で本は大変貴重品である。


 彼は大喜びだ。


 既に立ち歩きができるようになり、家の彼方此方を歩き回っている。


『家の間取は覚えた。家具の造りや道具の類からみて中世ヨーロッパ辺りの文化程度か』


 言語は既に覚えている。うまく発音できないが丁度いいと彼は考えている。


 彼は子供らしさに固執する。


 普通の子供にできない事はしないよう心掛けている。


 この世界の「普通」を知らない彼は周りの反応から最適解を探りだす。


 彼は誰から観ても普通の幼児であった。



 3才の誕生日。


 今年も今年で盛大なお祝いだ。


 彼は話せるようになっていた。片言ではあるが意思疎通ができる。


 彼は誕生日プレゼントに村の案内を両親に頼んだ。


 少し利発な子供、周囲の評価はそんなところだ。


『村の状況はだいたい理解した。人の種族や状況も予想と大差ないな』


 彼は父親に連れられて村を廻る。


「父さん、あれなに?」


「あれは牛さんて言うんだ。乳をだしてくれるし、畑も耕してくれるんだぞ」


「畑ってなに?」


「野菜がいっぱい採れるところだ。みんながんばって育てているんだよ」


 彼の父親は村長だった。


 若くして村長になった経緯は知らされていない。


『土の状態、地形もおかしなところは無いな』


 彼は冷静に情報を整理する。


「ねぇあれは山?川ってどこにあるの?」


 彼の父は、はにかんだ表情で答える。


「そうだぞ。あそこにずうっと続いているのが山だ。とっても高くて大きいんだ。川はこれから観に行こう」


 彼はこの世界について学ぶ。


 子供の好奇心のままに、初めて観るものに目を輝かせて。


 父と楽しくお喋りをしながら。


 本来の目的を見失わないように。


 彼の目的は唯一つ


 家族と幸せに暮らしていくことだ。



 彼が父と家に帰ってくると母と見知らぬ女性が迎え入れてくれた。


「「ただいま」」


「「おかえりなさい」」


 彼は母の服の裾を掴んで聞いてみる。


「ねぇ母さん あの……だぁれ…?」


 彼は隣に立つ女性を見る。


 女性は小さな子供を抱いて笑顔で立っていた。


 リビングに移り母の話を聞く。


 女性は母の友人で抱いているのはその子供、もうすぐ3才で彼と同い年の女の子だ。


 彼はその子と積み木で遊ぶ。


 素直で可愛らしい。顔も整っていて、将来美人になるだろう。


 夕食の後、疲れたのか寝てしまった女の子を連れて女性は帰っていった。


「父さん、母さんありがとう。今日はとっても楽しかったよ」


 彼はお礼を言う。


 両親は彼の頭を撫でて寝室に向かう。


 三人一緒のベットに入り灯りを消す。


「「「おやすみなさい」」」


 彼らは眠りにつく。


 彼はもう夜の暗がりを怖がる必要がなくなった。















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