回想
大講堂での卒業生の答辞が終わった後、ジオニスと騎装士科の代表生5人はそれぞれの乗る騎体のある格納庫に向かって歩いていた。
いまだ、ざわついている大講堂を背にした彼ら6人は大講堂の舞台裏にある関係者用の裏口から、二手に別れて歩いていった。
彼らの向かう先にある、騎体を用いた対小隊戦用の規模の大きい戦闘訓練用に造られた闘技場に向けて歩いていた。
だが、闘技場にむけ歩いていく、ジオニスも代表生たちもどこかぎこちない空気を纏っていた。
5名の代表生たちは皆様々だが、怒りや不満を明らかに顔に出しているものたちまでいる。
それとは対照的にジオニスは表情にこそ出していないが格納庫に急ぎ歩いていく背中からは、焦りや動揺がはっきりと読み取れた。
原因は分かっている。
卒業式の終わりに理事長が話した、今回の演習の内容についての説明だろう。
白い髭を結わえた理事長が来賓席の人たちに向かい、礼をとっている。
卒業生の代表であるリゼルの答辞が終わり、席に戻り座った後、立ち変わり出てきた理事長は来賓者や生徒たちに演習の内容について触れ始めた。
「それでは、今回の演習の内容について、来賓の方々に説明させて頂きましょう。
我がフォアスィング学園では、毎年、騎装士科を卒業する代表生5名を選抜し、この三年間で得た力を、技術を、経験を、今日ここに来られた皆様の前で披露する場を設けております。
その際に代表生たちの相手役として実際に戦場に立ち戦う、現役の騎装士の方々に我が学園に来ていただき、これから現場に立つ卒業生達に一手教導をしていただいておるのです。」
「今回、我がフォアスィング学園第597年度卒業式に参列していただいたジオニス・アーディオン一等陸士は昨年まで、この学園で卒業生たちと共に学んでいた騎装士科の生徒でした。」
「しかし、昨年、偶然ここに来られていた。
ドーリア国軍第14部隊、特装試険隊 隊長を務めるウォルフ・ガーンズ大尉にその騎装士としての実力を認められ。
アーディオン一等陸士は学生でありながらも特別任官という形式をとり、現在は特装試険隊に所属されております。」
模擬演習の相手がジオニスであることを知らなかった、代表生4名と一般の生徒たちは理事長の話を聞き驚いていた。
事前に話を聞かされていたリゼルだけは落ち着きをもっていたが、他の代表生たちはジオニスの座っていた席や、理事長の話にでてきたジオニスの階級などからもしかすると、程度の予想をつけていただけである。
参列しているジオニスを見て、演習の相手役として多少の疑いをもったといっても代表生たちもジオニスがどこの部隊に所属しているなどは皆目、見当はついていなかった。
ドーリア国軍の開発局直々の14部隊、それも特装試険隊と聞いたときには開発者になったのか、などとあらぬことを思っていたほどだ。
「アーディオン一等陸士と代表生5人にはこれから30分後に行う模擬演習のために、今から闘技場に移動してもらいましょう。
互いに力を尽くし、学園の歴史に残る奮闘を心より望みます。」
理事長の話を聞いた後でもリゼルを除いた4名たちは、昨年のジオニスの騎装士としての実力を思い出し、心のどこかで否定していた。
まさか、簡単な動作確認のために騎体を動かす事ですら苦労していた、
昨年に落第したはずのジオニスが、と。
大きな拍手の鳴り止むなか、6人が去った大講堂。
理事長は皆が落ち着き静かになるのを待っていた。
軍部の関係者などは理事長の説明に納得の行かない、いや、足りていないことがあったのか、多くの者が話を先に進めるように視線を送っている。
卒業生たちも些かの落ち着きを取り戻したのか、黙って理事長を見ていた。
「では、闘技場での準備が整うまで、皆様には私から演習の概要を説明させて頂きましょう。」
「これから代表生たちは、自らの指揮の下、調整し改造を施した騎体を用い演習を行います。
この調整の期間は例年通りとし、今年度初頭からの二ヶ月の間に彼らには第四世代の装命騎である[ アルカード ]を自らの戦法、また考えた戦術に合わせて改良してきたことでしょう。」
「これに対しアーディオン一等陸士にはこの学園から第三世代の装命騎である[スタッグ] を供与し、この模擬演習に参加していただきます。」
理事長の言葉が終わらぬうちに、またもどよめきが起こっていく。
理事長の言ったことを簡単に説明すれば、
今から行われる模擬演習は、自らの癖や戦術に合わせ改造した騎体に乗る代表生5人に対し、ジオニス側は改造すらされていない格下の騎体に乗るジオニスただ1人という、どこから見ても明らかなまでのハンデ戦だった。
本来なら第三世代騎が第四世代騎を相手にするのには第四世代騎1体に対し第三世代騎2体は最低でも必要だとされている以上、もはや熟練者へのハンデではなく、代表生たちへの露骨な贔屓にすらみえてくる。
事実、理事長が模擬演習の内容を大講堂の中で説明したとき、生徒や軍関係者たちだけではなく一般の来賓客までもが明らかに困惑することになる。
5対1の模擬戦など、もはやただの私刑ではないか。
それもアーディオン一等陸士が騎装士になったのも代表生たちとそう変わらぬ時期だろうに。
本当に勝負になるのか? と、
もちろん、困惑していたのは生徒や軍関係者たちも同じだった。
例年通りならば、代表生たちの相手役には熟練者たち3名ほどが普段から自分たちの乗る、乗りなれた騎体で模擬演習に挑むはずなのにと。
代表生たちの向かう先とは違う、反対側の格納庫。
学生たちの最後の演習に付き合う形になったジオニスはこのとき、軽い目眩に襲われていた。
先ほど大講堂の裏口から出る時に渡された模擬演習の内容が書かれたリスト。
そのリストを見たせいだろう。
今から乗る騎体を確認し、代表生たちの乗る騎体の簡易リストを確認したときには、どんな悪質な冗談か分からなかったからだ。
勝てるわけが無い。
どれだけジオニス自身の腕が上がったとしてもだ。
格下の騎体が格上に1対5で勝った話など聞いたことすらない。
ただでさえ、ジオニスには通常の騎体のままではどうすることも出来ない、欠点があるのだ。
時間が無かった。
ジオニスにとっては1つの設定を変更すればいいだけのはずだが、それを変更し調整するのに掛かる時間がどれほど掛かるのか分からないのでは下手に弄ってくれと整備班たちに頼むことすらできない。
最悪の場合はあれだけの人の前で、何もできずに代表生たちに無様に敗北することになる未来を想像し、ジオニスの顔はますます険しくなっていた。
とりあえずは騎体の調整を頼まなければと整備班たちのいる場所へと急ぐジオニスの前に、よく見知った女性が現れたことでジオニスの考えていた騎体への不安は一瞬で払拭されるのだが。
ジオニスは今、闘技場の入り口の前、青く塗られた騎体に騎乗している。
その左肩には学園の所有物で有ることを示す[F・S] とマークのついた[スタッグ] の中にいた。
これから、闘技場に入るジオニスには先ほどまでの不安や焦りはもうない。
サモンサ・モーリスが調整したスタッグはジオニスの為だけに合わせた調整がされており、ジオニスの欠点となる問題もかなりの改善がみられていた。
この騎体ならたとえ1対5だとしても、最悪五分五分にはもっていけるとジオニスは感じていた。
だからこそか、昨年のまだ未熟だった頃を思い出す。
学生だった頃に自身のもつ欠点を理解していればと。
今さら、どうしようもない事を考えてしまう、懐かしい雰囲気に中てられたのか心の中を寂しいものが過ぎ去っていく。
乗り込むのは1年以上ぶりになるスタッグの操縦席のなかで、1人。
ジオニスは感傷にふけるのだった。
これは少しだけ、過去の話。
今から13ヶ月ほど前のジオニスがフォアスィング学園の生徒であり、まだ騎装士科の下期生だった時の話だ。
一騎の装命騎が赤いラインで区切られた射的場より戻ってくる。
全体的に丸いシルエットをもつ騎体、頑強な装甲を青く塗ったスタッグが騎体搭乗口に戻り、騎体の目の前にあるタラップへと胸部装甲を開いていた。
騎乗していたであろう人物の操縦席からタラップへと降りる足音が、鉄と鉄の当たる鋭い音が響いた。
たった今スタッグから降りたジオニスは、行ったばかりの実機訓練のことについて静かに頭を抱えていた。
機体静動時における射撃訓練。
的に当たったのは10発中の、たったの…… 2発。
その2発も標的の的の中心からはかなり外れている。
教官にも駄目だしをされ、周辺からも嫌な視線を、侮蔑や嘲笑の混じった視線を向けられていく中を1人、待機場所に向け歩いていく。
頭の中では念声ポータルから聞こえた教官からの叱責がずっと響いていた。
イメージが足りないのだと。
この程度のこともできないのか…… と。
分かっていると、できるならすでにできているとジオニスは声と表情を嚙み殺していた。
ジオニスにはどうしても騎体の操縦がうまく出来ないままだった。
本来であれば操縦者である機装士のサポートを行うはずのシステム。
思念フィードバック機構をジオニスはうまく使えなかった。
むしろ訓練すればするほど、一つ一つの動作がずれていく感覚さえある。
腕にはめた操輪とこの手で握っている操桿。
そして、足元にある足動盤を操作し装命機を動かしていく。
その補助として必要とされる、自身のイメージとの誤差を修正するはずの思念フィードバックを ジオニスはうまく作動させることができなかった。
思念フィードバックの使い方はいたって簡単なものだ。
操輪に命力を籠めながら、自分の騎体の動きをイメージする…… ただ、それだけのことだ。
自身の動きをイメージするために騎装士は実際に自分の身体を動かして訓練をする。
それにより、思念フィードバックはより深く騎装士の思う理想に近い [動き]のイメージに合わせて、騎体の動きをより滑らかにする。
熟練の装機士の動きはある言葉でよく例えられる。
「まるで物語に出てくる英雄たちのようだ」と、
人間である騎士たちよりも力強く、己の身の丈ほどもある武器を縦横無尽に振るい。
獣のように機敏に駆け、害敵への一瞬の反応はときに人を超える。
それでもだ、操縦の邪魔になるのならばいっそのこと、思念フィードバックの補助を切ればいいじゃないか? と思ってしまう。
だが、それはできないのだ。
それでは装命騎は動けなくなってしまう。
ただ命力を通して、操桿を倒し、足動盤を踏み抜いたとしても騎体が動くまでには相応の時間が掛かり、その動作はちぐはぐに噛み合わなくなる。
思念フィードバックとは主に装命機の操縦時の補助、調整のシステムとして行動の準備、修正に使われる。
それは騎装士の思い描くイメージと、実際の操縦との誤差のすり合わせであり。
跳躍時や走行、歩行の予備動作、着地時や停止時の態勢をより理想的な体勢に戻す調整など、多くのことに関係してくる。
まあ、後者には騎体の転倒を防ぐために付けられている、立身時自動制御機構も関係しているのだが。
装命騎にとって、思念フィードバックとは無くてはならないものであり。
外してしまえばただの欠陥機になり下がってしまう重要なものなのだといえる。
失敗は成功の母とは誰の言葉だろうか。
ジオニスにとって、成功の切っ掛けすらみえてはこないこの失敗にもいずれは成功という結果はみえてくるのだろうか? その答えは、まだ、ジオニスには分からないままだ。
表情を普段のものに戻したジオニスの後ろから、別のスタッグに乗っていた生徒の走ってくる足音が聞こえてきた。
軽快に響いている足音が近づくにつれ、後から近づいてきているのが誰かを悟ったのか、ジオニスは少しだけ前に身を反らし、その身を襲う攻撃をかわした。
「って、避けるな。」
肩を叩こうとしていた少女、ミーナ・ヴァレンシーは何故か機嫌が悪かったようだ。
なおもミーナはジオニスの肩を叩こうとしては避けられ、
避けるな、当たれっ、と喚いているがジオニスはミーナの言葉も含め、全てをなんなくかわしていた。
ミーナからの理不尽な要求をああっ、そうだなと適当に受け流しつつ、待機場所に着いたジオニスは周りからの視線などは気にせずにさっさと座ることにした。
適当にあしらわれることでミーナも余計に熱くなってしまうのだが、ジオニスは一向にそのことに気づいてはいないようだ。
ミーナもまだ何か喋り足りないのか、態々ジオニスの真後ろに座り、小声で喋りかけてくる。
だが、ジオニスは今度は気づかぬ振りをして無視していた。
訓練終了までの待機時間。 すでに実騎訓練の終わっている生徒たちに雑ざり、待機場所に座ってからもう5,6分はたっているのにまだ後ろにいるミーナからはちょっかいをかけられていた。
いい加減に肩をつつかれるのも嫌になり、ジオニスはミーナにばれない様に少しだけ嘆息をつき、後ろを振り向いた。
急に振り向いたことに驚いたのかミーナはしどろもどろに慌てていた。
(お前が呼んでたんだよなっ。)
などと、ジオニスは思うが改めて慌てているミーナをみて思ってしまう。
長い黒髪を背に流し、赤いバンドで腰先で纏めた髪型とそのパッチリと大きく開いたその黒い眼は南の国によく見られる特徴だ。
端整なやや小振りな顔立ちにあわせ、西方の国であるドーリアでは珍しい黒髪黒眼はどこか人形のような雰囲気を彼女に与えていた。
だが、近寄りがたい訳ではない。 ジオニスに見つめられて、頬を林檎のように赤く染めて慌てる姿からは、どこか愛おしさすら感じる。
(やっぱ、可愛いよな。 だけど、いや、だからか。)
何故、ミーナが自分に絡んでくるのかがジオニスには分からなかった。
ミーナに友達や仲間がジオニス以外にいないのなら、まだ納得することができた。
彼女は女子、男子問わずに友達も多い。 また、誰にでも馴染んでくるその性格や騎装士科でも上位に入る実力から授業、私生活に関わらずに物事の中心にいるタイプだった。
だから、こそ思う。 いや、思ってしまう。
そう、昨年までのジオニスならまだしも。 今や騎装士科の落ちこぼれとまでいわれているジオニスにはミーナが態々、絡んでくる理由が分からない。
自分自身に落ちこぼれのレッテルを貼ったジオニスには、自分の立ち位置を誰よりも下だと考えてしまうジオニスには、友達でいることすら自分と彼女には不釣合いだと思ってしまう。
だからこそ、彼女の態度が友達に対するものなのか。 それとも、ただ、落ちこぼれたジオニスをからかっているだけなのかすら、ジオニスは分からなくなっていた。
実はジオニスに対する周りの態度にはミーナがジオニスにだけはみせる、普段の彼女とは少しだけ違う砕けた態度を羨む生徒たちのちょっとした嫉妬すら混じっていた。 落ちこぼれてもなおミーナの近くにいるジオニスに対し、ジオニスと同じように考えていたからだろう。
実際にミーナ・ヴァレンシーは男女問わずに人気があった。
男子からは、その人形のような容姿と、たまにみる純な少女を思わせる性格のギャップから人気を集め。
女子からは。
じっと顔を見すぎたせいか、頬をほんのりと赤く染めたミーナに、ジオニスは、見んなょっという、今にも消え入りそうな声とともに左頬に拳を貰うことになった。
女子からは、やはりその容姿と頼れる姉御肌なところから人気がある。 らしい。
鈍い痛みのはしる頬を押さえ。 ジオニスは思う、
(やっぱ、可愛くねえよ。)
と、ジオニスはつい先ほど下したミーナの評価を正反対に覆すことにした。
ミーナが手を出してしまうのはジオニスなら大丈夫という、彼女なりのジオニスに対する信頼の形なのだが。 ジオニスがそのことに気づくのは何年もたった後だったという。
ジオニスを殴り、スッキリとしたのかミーナはやっと本題に入ってくれた。
ジオニスはまだ頬が痛いのか、頬を擦りながら恨みがましい目でミーナをみている。
「そんなことより。 ジオ、あんた」
ジオニスの痛みはミーナにとって、そんなことらしい。
「もう、そんな目でみないでよ、悪かったわよ。
それよりもねぇ、今の訓練見たけど来週の試験大丈夫なの?」
「やれることはやってるよ。 結果がこんななのも俺のせいだ、まあ、仕方ないさ。」
「仕方ないってねぇ。」
ジオニスは平気な顔で自身をとぼしてしまう。 にも関わらずその態度には不貞腐れた様な雰囲気はなかった。
「駄目なら、来年は一般兵科に通うよ。 奨学金は無くなるだろうけどな。」
それに、と
「学校いってから兵役に就くのも嫌だったし。 それならってことでここに決めただけ出しな、まあ、なんてことないさ。」
あんたねぇ、とミーナの「落第しても平気だ」と、言外に語るジオニスを見る目は、とことん呆れていた。
仕方ないなどとジオニスは言っているが、内心では心苦しく思っていた。
別にジオニスは努力をしていないわけではない。
同学年の騎装士科の生徒たちに比べれば、二倍以上の時間を装命機の訓練に費やしていたのだ。
実際にジオニスは、通常、専門を問わずに他の教科について、成績自体は悪い訳ではない。
ただ、装命機の操縦だけはどうしてもうまくいかないだけだ。
射撃の苦手なミーナでさえ、先ほどの訓練ではまず的を外すことはない。
あっても、中心から外れる程度だ。
5発以上も的から外すのは、学生たちの中でもおそらくはジオニスだけだろう。
ただ、ジオニスにとっては先ほどの訓練が特別なわけではなく、一向に上達をみせないのは装命騎に係わることの、ほぼ全てというだけだった。
また、訓練に協力してくれている理事長以外にはジオニスの努力や葛藤もほとんどの人に知られていなかった。
初期生の頃はこれから自分たちが乗る装命騎に関する座学と、射撃、近接格闘の訓練など、身体を動かす事が主な授業内容だった。
この頃のジオニスはどちらかといえば、何でも器用にこなす生徒であり、誰彼かまわずに嫌われることなどなかった。
だが、下期生になり装命騎の訓練が授業の中心になっていく時に全てが変わった。
入学時の命力の総合量や伝導率など、騎装士としての適正も高かったはずのジオニスは初めての実騎訓練で騎体をまっすぐに歩かせることすらままならなかった。
下期生になり、碌に騎体を動かせなかったジオニスは日々焦りを募らせ、休日や放課後も全てを訓練に使っていくようになった。
他の生徒たちからは急に付き合いも悪くなったように見え。 本音を見せずに普段からやる気のない態度をみせ、悔しさや嫉妬を表に出さないジオニスは、当時はいた親友たちにもただ落ちぶれていくようにしか見えなかった。
擁護してくれる友を無くし、ジオニスは立場を悪くしていったが、それでも虚勢を張り、悪態をつく事をやめることができずにさらに悪循環にはまっていった。
当然のごとく、ジオニスは周りの生徒や教員から疎まれ、蔑まれていくのだった。
一向に騎体の操縦に改善が見られないまま試験まで後…… 2日。
ジオニスは旧校舎へと向かっていた。
旧校舎にある旧式のシミュレータ、すでに学生が訓練用に使うシミュレータの使用時間を大幅に越しているジオニスには通常のシミュレータは使うことが出来ず、理事長に特別に許可を貰った、旧式のシミュレータを使わせて貰っていた。
旧校舎までの薄暗い道。
まず、他の人が通ることがない道を歩くジオニスは、彼の運命を変える人物と出会うことになる。
「おう、そこの目つきのダルそう…… 目つきの悪い赤髪の坊主。
今の理事長室ってどこにあんだ、悪いが案内してくれや。」
彼の名はウォルフ・ガーンズ。
これからのジオニスの人生に関わっていく人たちの中でもっとも大きな影響を与えた人物である。
読んでくださった方たちのちょっとした暇つぶしになってくれれば幸いです。