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ロボ物  作者: ウル ボノ
1/9

開幕

 この小説が私の初投稿になります。


 拙い文章ではありますが、読んでくれた方の暇潰しになってくだされば幸いです。

 ドーリア国領内、北東に位置する山中に轟々と音を上げながら駆けていく、ある集団がいた。


 1人は身の丈ほどもある大槍を両手で備え、また別の1人は右手には何も持たず、左手には剣の収まった盾を腰にはライフル銃を備えていた。

 その集団の装備には統合性は無く、かろうじて武器に同様の意匠が凝らされていることやどこか騎士を思わせるような外見から見れば、

おそらくはドーリア国の者たちではないか、と思わせる程度のものでしかない。


 その影だけを見れば、少々、武骨な鎧を纏った騎士たちと見間違えるものもいたかもしれない。


 もちろん、身の丈8メートルはある者を人と呼ぶことがあるのならではあるが……

そう、木々生い茂る森の中を駆けていく、身の丈が8メートルはあろうかという、この5人組の集団は……


 人ではない。




 装命騎(そうめいき) 


 古くは1,000年の昔より、人々を守るための盾として存在し時に襲い来る災いに対し人類の剣として振るわれたともされている。

全ての人が持つ力である命力を糧に駆動する騎体、四聖騎(しせいき)百庸騎(ひゃくよう)を解析し開発された、人のもつ英知の結晶。


 装命騎じたいの歴史はまだ浅く、開発されたのもまだ100年ほど前のことである。


 その当時、ドーリア国内で5等級以上の魔獣 [ 体長が8メートル以上、または相応の危険性を持つ魔獣を指す ] が頻繁に目撃されるようになったのが始まりであった。


 原因は今だに定かではないが、ドーリア国内では見られなかった多種多様な種が出現し、本来の生息地とはかけ離れた場所や人里の近くでも多くの魔獣が目撃された。


 この異常事態に様々な分野の専門家たちが集まり論議が交わされた。


 繁殖期が重なったのでは?

 

 何かの天変地異の前触れではないか?


 魔獣の縄張りに変化があったのでは?


 などと多くの推察がなされたがどれもがどこか説得力に欠けており、

また、魔獣の異常繁殖じたいが一時的なものではないのかと、異変が治まるまで待つべきではないか、という事態を楽観視している意見も中にはあった。

 

 だが、魔獣による被害は日を追うごとに増していき、その被害はドーリア国内のみにならず、北、東、南と領地を分ける他の4大国でも同じ異常が起きはじめていた。


 この時にはすでに魔獣への対策は後手に回っており、有効な手立ても無いまま、4大国家の存続をも揺るがせることになる。


 唯一、魔獣の撃退に効果を見せていた百庸騎だが、各国の保有する百庸騎だけでは手が足りず、

以前より力の入れられていた次期主要騎の開発はこの重すぎる被害のなか急速に進んでいくこととなる。


 この時点では各国の思惑などもあり、遅々として進んでいなかった装命騎の開発も、翌年のサント・ラウス4国共同騎装開発同盟 [ 4大国の中央にある国、サント・ラウスにおける4国間での次期主要騎を協力し開発するために設けられた同盟。 黄聖暦 1077年に設立 ] の締結を受け、各国の協力体制の元、その8年後に装命騎はラーシア大陸中を駆け回ることになる。


 人類の新たな剣はこうして4大国家の悲願のもと、約26年の歳月を掛け、装命騎として誕生するのであった。

 

 四聖騎、百庸騎と装命騎の違いをあげるならば、

大きな違いが、2つある。


 四聖騎、百庸騎は増産することができない。


 いつ造られたのかも分からない騎体、過去より人の力となってきた百庸騎も、4大国に伝わる四聖騎も、整備法や操縦法などは記述としては遺されていたがどのような古書や歴史書にも、いつ開発されたのか。 どこで製造されたのかは終ぞ記されてはいなかった。


 まるでこの国の誕生より、はるか過去に造られたかのごとく。


 話を戻そう、百庸騎を分解し解析していくなかでどうしても騎体の動力部となる命力増幅機関(オド・ブラステル)だけは、量産することはおろか、完全には解明することもできなかった、とされている。


 ならば、なぜ装命騎の開発に成功したのか?


 当時のことを記した著書には、開発陣の言葉として、ある言葉が残されている。

「私たちは人の可能性を、大いなる夢への一歩を見ることができた」

とだけ記し、また、百庸騎とは別のブラックボックスが装命騎に生まれたことにも触れていた。


これこそがもう1つの大きな違いになるのだが、それはいずれ話しに上がることになるだろう。




 山中を駆ける5騎の装命騎たち、道なき道を走る彼らはすでに4時間近くも休むことなく装命騎を走らせ続けていた。


 現状、他国の装命騎に比べ、速力や命力(オド)の効率化という点では一歩先を良く、ドーリア国製の第4世代騎である装命騎[ アルカード ] ですら、最大連続稼働時間は5時間程度とされている。


だが、それはあくまで一度の搭乗で騎体を稼動させ続けられる限界時間であり、少なくとも1つの動作、行動の確認ごとに騎装士には騎体を稼動させたままではあるが休憩する暇があったのである。

 

 彼らはすでに4時間近くも装命騎を走らせているのだ。

 今も命力を使い騎体を走らせ続けている5人、彼らの顔には皆一様に疲労を


「隊長、約束は守ってくださいよ。」

「はっ 後一時間、基地まで走りきれたらきいてやんよ。」

感じてはいなかったようだ。



 5番騎を駆る装騎士 ジオニス・アーディオン一等陸士(見習い)は少年から青年へと変わりつつある年頃の髪を短くまとめた赤褐色の髪をもつ男性であった。


 その容姿はほどよくまとまっており、本人は少し垂れ気味の目こそが自身のもつチャームポイントだと思っている。

 が、周りからはジオニスからやる気のない雰囲気を感じる理由の1つの要因になっており、

「普段のだらしなささえなければ。」

と、同基地に駐屯する別部隊の上官に苦言を呈されることもしばしばだった。


 周りの風景も少し変わり、拓けた道を5騎の装命騎が駆けるなか。

 ジオニスはといえば、なおも隊長に向けて念声ポータル[ 装命騎につけられている通信装置 駆動に使われる命力の余剰分を使い稼動する。

 全体、個別、1部隊などを分けての通信も可能 ]  で通信を行いある約束の確認を取っている最中だった。


 今も、絶対ですからね。

 などと言っているジオニスを省き、ジオニスの通信内容はリアルタイムで隊長の手により他の隊員たちにも流されている。

 ついには


[ジオニスは無事に基地まで走りきれるか ]

と、他の隊員たちにより、賭けの対象になりはじめていた。


 そんな彼らだ。


 彼らの顔には疲労などかけらもなく。

 今はただ、基地まで走りきることができるかだけを考えて、


「隊長、なぜ邪魔するのですか。」

「そりゃあな、一応、基地まで走りきるほうに賭けているからな。 やらせんよ。」


「クソっ ジャード二等、ジオニスの右側につけっ 

こちらは隊長を妨害する。 ターゲット(ジオニス)を森の中に誘導するぞ。」

「まだまだ甘いな。 2番騎、4番騎の正面に、俺は3番騎を抑える。 

3番騎っ 今は一応、極秘の訓練中だ、番号で呼べっ

後で厳罰だ。」

「そんな酷いですよ、隊長!」


考えてなどいなかった。


 2番騎が4番騎の前に入る中、隊長と呼ばれた1番騎が3番騎から5番騎への直線上に移動する。


 3番騎の隊員も諦めずに、4番騎に指示を出しながら自騎を走らせていた。


 なおも妨害のために揺さぶりを掛けて来る3番騎を、

隊長騎は騎体を右に傾け牽制し、ときには障害を避けるかのように自然に騎体を動かし3番騎の前へ出ては自騎ごと走る速度を遅らせていく。

 時折、妖しい動きを見せる4番騎に対し、2番騎に指示を出し4番騎からの賭けの対象(ジオニス)への妨害を防いでいた。


 5番騎を駆るジオニスを妨害し、より多くの命力を消費させるには?


 また、3番騎、4番騎の妨害を阻止するには?


 こんなことをしているが彼らは一流の騎装士である。


 その後も隊長以下3名の隊員は互いの実力を惜しげもなく披露し続けた……


 ただ、全ては賭けに勝つために。



 もちろん、自身が賭けの対象になっていることを知らないジオニスは仲間の動きに、いつもの遊びの類だと思い。 ただ1人、真面目に基地へ向け騎体を走らせていた。




 ああ、賭けに勝ったのは?

 

 まあ、しいていえば、隊長の財布は温もり、シグナム三等陸士は基地についた後、ジオニスを苦い顔で睨んでいたが、睨まれている当の本人は報告書を急いで作成していたために気づくことはなかったという。


 読んでくださり、ありがとうございました。


 誤字、訂正の報告があればよろしくお願いします。


 8月12日 気になっていた部分を改正しました。

 パソコンだと投稿、編集のしやすさが携帯とは段違いですね。

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