ep.38
「ねえ聞いて!僕昨日先輩に告白してOKもらっちゃった!」
「え〜!何それ羨ましいんだけど!」
「でしょ、でも生徒会の皆様とか風紀委員長とかも夢だよねえ」
「分かる〜!あんな格好いい人達と付き合えたら夢だよね」
キャッキャと騒いでる目の前を歩く人たちを眺めながら、好き、告白、付き合う、かあと思っていると今朝のことが浮かんだ。
【なっちゃん的には誰が気になってるとかあるの?】
【好きだなあって思う人居るのかなって】
”じゃあね、俺の初恋”
「…ちゃん、なっちゃん?おーい、なっちゃん?」
「あ、え?な、なに?」
「那月くんボーッとしてなにかあった?」
「悩み事か?俺らで解決出来る事なら話聞くぞ」
「いや、えっと…、じゃ、じゃあ、みんなってその…、好きなひとって、居る?」
「俺は居ないな」
「僕も居ないかな、副会長様のことは慕ってるってだけでどちらかと言えば憧れって感じ?」
「俺はね俺はね!居ない!でも男同士っていいよね、尊い…ぐふふ」
「那月くん好きな人出来たの?」
「お?誰だ?」
「えー!?なっちゃん好きな人出来たの!?俺の知らないところで!?ハッ!まさか昨日手を繋いで帰った風紀委員長…?キャッ!」
「いやいや!出来てない、出来てないから!誤解だから!」
「そうなの?僕らてっきり…」
「まだそういうのじゃないから…!」
「…まだ、ね」
「まあ、いいんじゃね?」
「俺倒れそうだよありがとうございます…!」
各々好き勝手な反応を返してくる中、恥ずかしいと少し赤らんだ顔をパタパタと手で扇ぐ。
目の前の人たちが少し、羨ましいと思ってしまった。
自由に恋愛していることが。
好きなひとを作って頑張って告白して成功して。
あー、青春してるなあって。
なんて、僕にもそのチャンスはあるはずなんだけど。
(神様ー!僕の運命の人はどこですかー!)
とか、心の中で叫んでみたり。
「なっちゃんなっちゃん!好きな人出来たら教えてね!?」
「浅見は腐ってるだけだから教えなくていいよ那月くん」
「でもまあ、相談くらいは乗れるから気にせず言えよ、な?」
「うん、みんなありがとう」
えへへ、と笑って見せたら浅見くんが悶絶していた。
「那月くん、引く手数多だろうになあ。本人無自覚なのがね」
「それも那月の良いとこだろ」
「俺は!なっちゃんを!全力で応援してます!!」
なんて話してたらあっという間に学校に着いてみんなで教室へと向かった。
(そういえば僕、登校再開してまだ二日目なのに普通に来れちゃった)
昨日の出来事はもちろん鮮明に残っている、だが不思議な出来事として残っていた。
怖かったのに、安心もあった。
あのなんとも言えない感覚はなんなのだろうか。
「おはようございます、すみません。伊奈瀬くんはいらっしゃいますか?」
突然の訪問者にクラス内がざわつく。
「な、何で風紀委員長が…?」
「伊奈瀬くん何かしたのかな」
「風紀委員に目つけられるとかやばくね?」
コソコソとあちらこちらから声が上がる中、元気よく返事をする浅見が居た。
「風紀委員長ー!おはようございます!なっちゃん居ますよー!」
「あ、浅見くん…」
「ほら、なっちゃん行ってきな」
「う、うん」
タタタッと急いで駆け寄り挨拶をし要件を聞く。
「風紀委員長おはようございます、あの、どうしたんですか?」
「ちゃんと来れたかの確認だよ、大丈夫…そうだね?」
「あ、はい。朝はみんなで食堂行きました、登校もみんなと一緒に出来ました」
「そうかそうか、それなら良かったよ。ただの様子見だから気にしないで」
「わざわざありがとうございます」
「元気そうでなにより、ただ…、目が少し赤くなってるね」
「朝少し冷やして来たんですけど…、やっぱり分かりますか…?」
「いや、大丈夫だよ。事情を知っているから気になっただけさ」
「すみませんでした…」
「謝らない、もう大丈夫なんだから、ね?」
「はい…」
俯くとよしよし、と数回頭をポンポンされる。
それを見たクラスメイトが一層ざわつき出した。
「あ、あの風紀委員長が頭撫でてる!?」
「もっと怖い人だと思ってたのに…」
「もしかして優しい人なのかな?」
そんなざわつく声の中で
「うぎゃあああ!!!風紀委員長×なっちゃん!!!」
と、声にならない声を上げた者が一名。
居たとか居ないとか――




