436年の時を経て
ラトナは 時の宝庫をあさり、200年前の衣装を取り出した。
それは・・正装用のドレスではなく、パジャマ服でもなくw、実用性重視の黒一色、飾り気もない一般的な魔導士の服だった。
これで十分だよね!
ラトナの見た目も、背の高さも400年前と変わらないので、魔導衣装もぴったし、問題なく着用できたのである。
これで全裸・18禁は阻止できた。外に出ることができる。
・・・良かった! 本当に良かった!
人間としての尊厳は、なんとか守られた。
ここは400年前に建設された”レイルール山”の秘密基地。
その構造は驚くほど堅牢で、崩落の気配すらない。
おそらく今でも、秘密基地としての役割を果たせるだろう。
ただし、内部に設置された魔導機能は、長い年月の中で著しく劣化していた。
自動ドアは沈黙し、侵入者感知システムも反応を示さない。
だが幸いなことに、照明機能だけは、奇跡的に生きていたのだ。
周囲を・・通路を・・明るく照らしている。
「真っ暗でなくてよかった! まあ、そうでなくても、自分の魔導力で照らせるけどね」
軽く笑みを浮かべながら、ラトナは足を踏み出し通路を進む。
とりあえず、すべきことは、ただ一つ!
外の様子を確かめることだ。
なんたってあれから200年・・・どんな事態になっているのやら!?
秘密基地の出入り口は"レイルール山”の中腹、岩陰に隠れるように鉄の扉で封印されていた。
ラトナはその扉を開けようとするが・・・動かない。
力一杯、体重をかけて動かそうとするが、動かない。
錆びているのか、扉はびくともしない・・動かないのだ! 外に出れない。
「シンルーラたちが、瀕死の私を担ぎこんでから200年、さすがに錆ちゃってるのかな!?」
ならば魔導で吹き飛ばす!・・といいたいところだが、現在の魔力量では破壊不能!
(実際、行使してみたが無理だった)
ゆえに別の方法を考えてみる。
その1・・体内魔力が増えるまで、ここで鍛錬する(数年間w 気の長いことだ)
もちろん無理な話、食料もないし・・今度こそ本当に死ねます。
その2・・別の出入り口を探しだすと言いたいところだが・・
この秘密基地の設計をしたのはこの私!
あえて断言しよう! そんなものは作っていない。出入口はこの一か所だけだ!
その3・・あきらめて、泣いて・・そして、ふて寝するw
などなどと・・色々と考え!? 思案した末・・ラトナはため息まじりに呟いた。
「あ〜あっ! やっぱし、あれを使うしか無いか」
時の宝庫を漁りまくっていた際、拾ってきたアイテムの一つがあった。
それが"魔結晶"
とある鉱山から採掘された・・手のひらサイズの希少な結晶鉱物
その表面はキラキラと美しく煌めき、宝石としての価値もあるのだが・・その真の能力は"爆弾"!
この結晶に魔力を注ぎ込むことで、内部にエネルギーが蓄積され、ある限界を超えた瞬間・・・ゴム風船が破裂するかのように、爆発するのだ。
扱いを誤れば、命をも奪いかねない危険な代物!
それゆえに、魔力を注ぐ際には細心の注意が必要。
あまりにも近づきすぎれば、爆発に巻き込まれてしまう危険性があるのだ。
「うん、危ないのよね・・特に、今の私みたいに魔力が衰えている時は・・素早く防御魔導を展開できないかもしれない」
まず、ラトナは大きく距離を取り、身を潜める。
まずは安全の確保! それが、絶対の鉄則なのだ。
そして、遠くから・・慎重に魔力を注ぎ込んでいく。
だが、魔力が減退しているラトナにとって、その作業は決して容易ではない。
魔力がすぐに枯れ果てるからだ。
ゆえに、休息を挟み、少しずつ回復させては、魔力を注ぎ込む・・その繰り返し、繰り返し
「めんどくさい・・時間がかかる」
などと・・ぼやきながらも、ラトナは手を止めない。
外に出るためには、やるしかないのだ。
-*- - - - - - *-
数時間後・・・
ドッドドドッドドド!
突如、地響きのような振動が通路を揺るがす。
ラトナは即座に身を伏せた。
眩い光と灼熱が肌を焦がし、爆音が通路の奥深くまでこだました。
そして・・・遠くから差し込む、太陽の光。
外気が通路の奥へと流れ込んでくるのだ。
今までとは違う、草木の匂いを含んだ空気。
ラトナは確信した。成功だ。
「よし・・・外に出られる!」
かつての鉄の扉は・・木っ端みじん!
厚さ10ナルルの装甲を"魔結晶"が打ち破る。
その破壊力は、まさに驚異・・恐るべし!
ラトナは、爆風の余韻を背に、ゆっくりと外へと歩み出した。
太陽の光が容赦なく降り注ぎ、肌を焦がすように熱い。
季節は夏なのか!?
彼女にはもう季節の感覚など残っていなかった。
なにせ、目覚めたのは200年ぶりなのだから・・・
ラトナの眼下には、濃密な緑が、地平線まで広がっていた。
森林地帯が、山肌を覆い尽くしている。
ここはレイルール山の中腹。
見晴らし台としては・・良き場所!
風が心地よく吹き抜け・・ラトナの黒髪を優しく揺らす。
「まさか・・いや、あり得るのか・・・なんということ!」
目の前に広がる光景は、彼女の記憶とはまるで違っていた。
200年前、この場所から見えていたのは、帝都クラム。
果てしなく広がる生活圏、そして天を突くようにそびえ立つバベルの巨塔。
帝国の象徴が、確かにそこにあった。
だが今、そのすべては失われていた。
自然が、帝国の痕跡を覆い尽くしてしまったのだ。
ラトナは、うすうす感じていた。
しかし、今・・この目で見て、確信する。
やはり、私の帝国は・・滅んだのか。
父とともに決起し築き上げ、繁栄し、やがて停滞し・・そして、滅亡へと至った。
その歴史の流れが、目の前の大地に刻まれ・・風が吹き抜ける。
そんな帝都クラムを覆い尽くすのは、ただ無言の自然。
塔も、街も、人々の営みも・・すべては消え去り、緑に呑み込まれていた。
ラトナの胸に、重い現実が冷たく突き刺さる。
「諸行無常・・なのか?!」
彼女の瞳は、かつての巨塔・・バベルがそびえていた場所を見つめていた。
心の奥に、ぽっかりと空いた穴。
誇りも、怒りも、悲しみすらも、すでに200年・・全ては過去の存在。
人々の営みすらない。
残されたのは、ただ一つ・・静かなる喪失感だけだった。
それでも。
「私は・・いや。終わったことは、もういい」
ラトナの目線は青空へと向けられる。
「あとは前に進むのみ! 200年後の世界で冒険を始めるのだ」
その声は、誰に届くでもなく、風に溶けていった。
‥‥と思いきや、あれあれあれ!?
上空を横切る巨大生物の影がラトナを覆う。
「おいおい・・おい! ちょっとまて! ドラゴン!? えっ! えっ! なんで・・なんでやぁぁぁ」
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)




