ラトナ VS レイガン
殺気が走る。
黒き鎧に身を包んだ巨漢・・レイガン。
その鋭い眼差しは、目前のか弱き少女を捉えていた。
だが、見た目に惑わされてはいけない。
その少女の皮の下に潜むは・・・悪鬼!
今ここで斬らねば、未来に災いを残すことになる。
部族のため・・そして“海の民”のためにも・・・
レイガンは大剣を構え、全速力で駆け出した。
そして・・その刃は、迷いなく標的を捉える。
「我が名はレイガン! お前を切る」
そんな叫びに対峙する少女は・・・
魔導士にして初代皇帝の王女、そして二百年を生きる、不老の公姫・ラトナ。
迫りくる黒き巨漢を前に、彼女はわずかに身を震わせながらも、気を引き締め、強い口調で反論した。
「若造よ! 私を切るというのだな。ならばやってみせるが良い」
ラトナの指が空を裂くように印を描きながら・・・迫りくるレイガンの横なぎを、紙一重でかわした。
だが、流れる黒髪の先端までは、うまく避けきれず、斬り裂かれた髪片が、宙を舞う。
彼女は身をひるがえし、側面へと移動、ある程度の距離を取った。
魔導士にとって近距離戦は不利だ。
静かに呼吸を整え・・冷静な判断を心がける。
決して・・怒りや恐れを表面に出してはならない。
そう・・余裕だ。余裕を見せるのだ!
ラトナは静かに笑みを浮かべ、嘲るように口元を歪めたその瞬間・・先ほどの印が発動した。
それはレイガンの足元。
日の光に照らされた影から、無数の黒き腕(触手)が這い出す。
それらは意思を持つかのようにうねり、レイガンの足、腕、そして大剣へと絡みついていく。
奴の身体を拘束せよ!
その様子を見て、ラトナの口元がさらに吊り上がる。
だが、決して油断はしない。
この男はかなりの実力者だ! 勇者レベルの可能性もある。
隙を見せれば、命取りになりかねない。
そして案の定、やはりというべきか・・レイガンは素早く対処した。
黒き腕(触手)に捕らわれる寸前、大剣を大きく振り抜きながら一回転。
絡みつく黒き腕(触手)を一気に断ち切るやいなや・・・間髪入れず地を蹴る。
----縮地!
空間を裂くような速度で、レイガンが迫った。ラトナの懐へ・・目前へ・・まるで雷鳴のように!
そう、その速さは常識を超えていた。
視線すら追いつけない。 ラトナの瞳が、わずかに揺れる。
・・・ 速い!
だが備えはある! ラトナには一つの秘策があった。
彼女が身につけている腕輪・・・つまり魔導行使を媒介する特別なアクセサリー。
その装飾品には、万が一の事態に備えた緊急対策が、密かに施されていた。
見た目は安物装飾。
だが、その内側には、彼女の冷静さと用意周到さが宿っていた。
レイガンの大剣が、唸りを上げてラトナの目前へと迫る。
その切っ先は、なんと少女の顔面を狙っていた。
容赦なき殺意・・・情けもへったくれもない!
だが、その一撃は届かず・・目的を果たすことなく阻まれた。
レイガンとラトナの間に、突如として青白き防壁が立ちはだかったのだ。
魔導の壁によって狂気の刃は遮られ、そして次の瞬間・・ズドォォォン!
爆発が巻き起こる。
そう、衝撃によって、巨漢にもかかわらずレイガンの体は宙を舞い・・無様に地面へと叩きつけられた。
「くっ、爆発性障壁か!」
ラトナの腕に飾られていた・・あの安物腕輪が発動したのだ。
しかも、あと数回程度はこの魔導障壁を展開できるはず!
つまり今のラトナは・・わりと無敵の状態なのである。
ただし、この障壁の防御力を上回る火力を叩き込まれた場合は、その限りではない。
巨漢のレイガンは、まるで空き缶のように地面を何度もバウンドし倒れ伏してしまった。
しかも大剣を手放し、あらぬ方向で地面に突き刺さっている。
今こそチャンス!
ラトナは素早く指を動かし、印を切るやいなや・・・空間が震えた。
放たれたのは、怒涛のごとき魔弾の連射。
その一発一発が、あの巨漢へと迫る。
だが、レイガンもただ者ではない。
重厚な鎧をまといながらも、驚異的な反射で跳ね起き、華麗にバク転!
一気に距離を取る。
しかし・・その動きに、わずかな違和感。 片足を引きずっている!
魔弾の一発が・・どうやら、被弾したようだ。
だがそれでも、レイガンの瞳に陰りはない。
燃えるような闘志が、その奥底に宿っているのだ。
“海の民”の族長は、倒れるその瞬間まで戦い続ける。
生きている限り、戦士なのだから・・・
「俺はニキア族の族長、誇り高き“海の民”! 絶対に負けはしない」
そう叫ぶや否や、レイガンは駆け出した。
目指すは・・地面に突き刺さった自らの大剣。 だが、かなりの距離がある。容易には届かない。
それに当然ながら、ラトナがそれを黙って見逃すはずもなかった。
もちろん攻撃だ!
「これで終わり・・侵略者め! 地獄に落ちろ」
彼女は素早く印を結び、魔導を発動する・・・“剣撃の鉄槌”
上空にて召喚した一振りの剣が、唸りを上げながら落下する。
狙いは・・地上に突き刺さった大剣! そして、それに向かって突き進むレイガン自身!
両目標を同時に吹き飛ばす範囲攻撃魔法なのだ。
ズドドドドォォォン!
炎が巻き上がり、轟音が響き渡る。
地面はめくれ上がり、爆風があたり一帯を飲み込んだ。
その中で・・・
あの憎き巨漢の姿が、視界から消えた。
倒した!? 倒したのか!?
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)




