踊る幻影魔導
ラトナは"式札"を媒介とする新たな秘術・・"幻影陰陽術"を手に入れた。
それは、肉体に一切の傷を負わせぬという、きわめて人道的な魔導。
しかし、その穏やかさの反面・・・
広範囲の敵に幻惑と恐怖を見せつけ、戦場を混乱・崩壊へと導く・・まさに戦略級と呼ぶにふさわしい幻術だった。
(ラトナでさえ・・自分の幻術に惑わされ魔導障壁を何重にも展開してしまったのだから・・・w)
多数の敵を相手取る戦場でも、魔獣が群れをなして迫る状況でも、この術は圧倒的な力を発揮するだろう。
「ただし、幻影だと悟られぬよう、細心の注意が必要だね」
そう言いながら、ラトナはアユリーナに・・この術の適性を試してみる。
彼女は少し気弱なところがあるものの・・
慣れさえすれば、この秘術を必ずや使いこなせるはずだ。
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「アユリーナ君・・・さぁ、はじめようか!」
「えっ・・はい。ラトナ様」
ドドゥォォォーーン
大地を揺らす轟音とともに、砂煙が一気に舞い上がった。
濛々と立ちこもる白煙の向こうから、姿を現す二足歩行の巨影。
彼女たちは忘れてはいない。あの忌まわしき放尿・・・みかんジュースをw
ではなく、あの巨大な小便小僧が放尿しながら、暴走する姿を・・・・見たのだ!
ドタドタ・・ドタドタ・・!
「えっ!?」
「ちょっと・・!」
「な、なんてものを・・・」
彼女たちの唖然とした表情を浮かべる中・・・
巨木をなぎ倒し、吹き飛ばし、粉砕しながら巨大小便小僧は荒々しく山中を駆け抜けていく。
幻影だと分かっていても、地面を震わせる振動、肌を刺す迫力・・
そのすべてが、あまりにリアルだった。
ドオーン! バサァーン!
-- 巨大全裸小僧・・走る --
容赦のない自然破壊。あらゆるものを粉砕し、山々の景観を無残な姿へと変えていく。
青々としていた風景も、いまや・・・土くれの塊のように変わり果てていた。
そして・・その壮大なスペクタクル映像は霧のように"ふっ"と消え去り視界が反転・・・すべてが巻き戻しされる。
そう・・これは幻影なのだ! 吹き飛ばした巨木も足跡も存在しない。
何事もなかったように・・・静かな日常へともどった。
「あっ、終わったのね! 私の幻想と違うというか・・よりによってあれか!?」
ラトナが隣を見ると、アユリーナは気まずそうに視線をそらした。
「うっ!」
その頬は、ほんのり赤い。
アユリーナが使った"式札"は、ラトナの"式札"とほとんど変わらない・・同じ文様が刻まれた"式札"である。
だけど、魔力を注ぎ込む人物が変われば・・そこから生まれる幻影魔導も変化するのだろうか!?
それとも・・・ただの偶然にすぎないのか。
"いや、・・・・深層心理かもしれないね!? ふっふふ"
そんな言葉を、ラトナは決して口にはしない。
ただ、アユリーナへと柔らかく微笑みかけるのみだった。
「さてさて、今度は私の番よね!」
一息付けた・・ラトナは、自分が手にしている"式札"をゆっくりと眺め、そして魔力を流し込む。
次はいったい何が出てくるのやら!?
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ドドゥォォォーーン
空から降り注ぐ雨・・いや飴!?
甘い香りをまとい、きらめく光に照らされながら・・
べとつく固形の粒が、上空を埋めつくし・・そして落ちてくる。
バサバサバサ・・バサバサ
ラトナは反射的に、青白い光の壁・・・魔導障壁を展開してしまう。
「あっ 幻影だと知っているはずなのに・・・」
甘く、甘く降りそそぐ飴の大雨。
だが、当たれば雹のように痛い。
あまりの"リアル"に・・ラトナは思わず魔導展開してしまったのだ。
アユリーナもまた、慌てて頭を手で覆い地面にかがみ込む。でも顔はニッコリ
「ラトナ様! これは・・甘いです。おいしいです」
匂いは本物。
触れれば感触があり、口に含めば、確かに甘い。
・・・これで幻影なのか。
まさに、恐るべき陰陽魔導である。
「う~ん。前回の破壊しつくした爆発幻影に比べれば・・今回はずいぶんと、おとなしい幻影だね」
ラトナは、わずかに眉をひそめた。
この“幻影陰陽術”は、使うたびに幻覚、まぼろしの内容がコロコロと変わる。
どうやら、術者の個性による差ではないのだろうか!? よくわからない!
とりあえず・・"ガチャ"要素の高い魔導ということにしておこう!
使いどころが難しいかもね・・・w
ではでは・・次はアユリーナの番となる。
「えっ!? わっ、またうちが・・・」
「そうそう、がんばるのよ。アユリーナ君」
「ちょ、ちょっと待ってぇぇ〜 またあれをだすの!?」
「ためしよ! ためし! さて 何が出るのやら♡」
渋々といった表情のまま、アユリーナは"式札"へと・・そっと手を添え、魔力を流しこんでいく
これもまた、魔導士になるための試練なのだ(そうかな!?)
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ドドゥォォォーーン
地鳴り!? 大地が波打ち、土煙が勢いよく吹き上がる。
激しい揺れ・・・地震かと思うほどの衝撃。
もちろん、ラトナには分かっていた。これは幻影・・・実体のない揺らぎだ。
それでも、油断などせず・・付近を警戒した。
すると・・妙な視線を感じる!
ラトナは、その方向に目線を落とすと・・その先に並んでいたのは、信じがたい光景だった。
そう、地面の裂け目から出現した多数の生首が、ずらり! ずらりと・・・
しかも! ニヤリと笑っているのだ!
これは・・まるで某殺人事件のごとく。ちょっと怖い! しかも蠢いているではないか!
「おっ! これはホラー!? 肝試しのつもりなのか」
毅然としたラトナの声。
だがアユリーナは・・「うわっ!」
つい反射的に師匠に抱き着いてしまった。
「おちつけ! おちつけ! アユリーナ君!」
奴らは・・見たところ死霊! またはゾンビなのか!? 笑みを浮かべながら、地面から這い出してくる。
(一応・・胴体はあったようです)
名はどうであれ、異様な存在であることに変わりはない。
瞬く間にラトナたちを取り囲むと、彼らは噛みつくことはせず・・踊り始めた。
意味不明、理解不能、そして妙にリズミカル♪
飛んだり跳ねたり・・空中回転!
何体かのゾンビは回転しすぎて・・生首がどこかに・・ヒュルルル~♪ 飛んで行った。
ラトナたちは状況を掴めず、ただ呆然と立ち尽くす。
一応・・幻想だと分かっているので、危険性なないが意味がナッシング
「えっ!? なんと」
「ラトナ様、これは!? どういうこと!? なんか生理的に嫌」
「アユリーナ君が召喚したので、私には何とも・・w 説明できません」
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そう、これは季節限定の"ゾンビの盆踊り"・・・らしい
踊れ! 踊れ 死ぬ気で踊れ♪♪
「そんな季節行事があるかぁぁ〜〜っ! !」
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)




