甘味は全ての問題を解決する
蜀の桟道を思わせる街道に・・・立ち塞がるは巨大魔獣"アシッドスライム”。
強烈な酸を吐き、そして高速でうごめく・・・まさに厄介極まりない敵。
簡素な装いでその魔獣に挑むのは、黒髪のショートヘアーに二つのダンゴを頭上で揺らす少女・・・アユリーナ。
華奢な胸元を震わせ、わずかに怯えを滲ませながら・・それでも彼女は勇気を胸に、一歩を踏み出した。
そして、その背後で静かに控えるは・・長き黒髪をたなびかせ、鋭い眼差しでスライムを睨みつける不老少女ラトナ。
そう、彼女はアユリーナの師匠であり、400年前の祖先w
ラトナは声を発しない。ただ静かに、愛弟子!?アユリーナを見守っている。
声援を送れば、彼女はきっと緊張してしまうだろう。
だからこそ、沈黙のまま支えるのだ。
"アユリーナ君に必要なのは・・経験なのだよ"
座学ではなく実戦。魔獣との戦いこそが、彼女を鍛える。
魔導術は人によって異なる。 印の結び方も発動法も、個人個人の資質に合わせるのだ。
魔導を媒介するアイテムも同様であり、そこに刻まれる魔導回路も人それぞれ、所有者専用アイテムとなる。
ゆえに、アユリーナ君は自らの体質にあった魔導回路や印を見つけだす必要があるのだ。
それこそが、成長への道、魔導士への道・・・魔獣との戦いの中で、何らかのヒントを見出すだろう。
-*- - - - - - *-
覚悟を決めた・・アユリーナは指先を動かし、虚空に文字を描く・・
それは魔弾の印。彼女は印を切って発動する。
だが、やはりというべきか、印を切る速さは、師匠ラトナには及ばず、放たれる魔弾も小さい。
それでも、その一撃に込められた力は、十分であった!
それに対し・・標的となった巨体な魔獣“アシッドスライム”は即座に反応する。
何かの危険を感じたのか!? それとも生存本能か!? または闘争本能か!?
ドゥドゥドゥゥゥ
ある種の奇声を発すると同時に、アユリーナが放った魔弾を見事に避け・・そして異様な速度で突進を始めた。
巨体にもかかわらず・・その動きはまさに高速。
後方から何かを噴射し、推進力を得て前進する・・まるでその姿、ロケット花火のごとく。
ズッズズズ・・・ズズズ
このままでは、あの魔獣“アシッドスライム”の速度、圧力の前に・・アユリーナが押しつぶされてしまう!
いや、それ以前に少しでも接触したら大火傷だ
「まずい!」
ラトナは即座に援護に動く。
指を走らせ魔導障壁を発動させた。
しかしながら、その心配は杞憂となる。
ラトナの子孫にて魔導の弟子・アユリーナ君の動きは予想外だったのだ!
そう、彼女の反応は速く・・鋭いバク転で“アシッドスライム"を避けきった。
「ほぉ! やるね~」
元から反射神経も良いのだろうが、おそらく魔導による肉体強化もプラスされ・・人の域を超えた速さとなってしまっている。
それはまるで瞬間移動、ラトナですら成し得ぬ回避能力。驚愕すべきことだ。
だが、その姿は・・あの憎々しい男、自分を串刺しにした"海の民"の族長レイガンに通じる所があるのではないか!
あの憎き男と同じ資質を感じるのは・・不愉快でもあり、または頼もしく嬉しくもある。
アユリーナ君はおそらく強くなるだろう。肉体系w魔導戦士へと・・
それは、400年前の祖先として・・師匠として・・喜ばしい・・・ことだ。
-*- - - - - - *-
アユリーナの華麗なバク転が決まり、迫りくる危機を回避!
だが、その反面・・“アシッドスライム”の突進は軌道を変えず、そのままラトナの目前へと迫る。
ラトナ危うし! ・・・・かと思いきや、彼女は微動だにしない。
余裕すら漂わせながら魔導障壁を展開し、突っ込んできた“アシッドスライム“を、その反動だけで、軽々と吹き飛ばした。
このあたりは・・400年という歳月が積み重ねた圧倒的な技量。
いくら巨体といえども、アシッドスライム程度の魔獣など、彼女にとっては雑魚にすぎない。
(まあ、相手が一匹だけなら当然の話だが・・)
そんなわけで・・ラトナパワーで吹き飛ばされた“アシッドスライム"を、アユリーナはすかさずターゲットロック、魔弾を放出した。
しかも今回は・・この攻撃を避けきれないはずだ! 空中を舞っているのだから。
パーーーン!
見事に命中・・破裂音が響き渡る。
そして、スライムの肉体は破裂し、無残にも四散した。
「アユリーナ君、素晴らしい。じつに素晴らしい。おいしいよ!」
満面の笑みを浮かべた・・ラトナは、親指を立ててサムズアップ。
そのまま残骸へと駆け寄り、素材の回収を始める。
「いいね! これはいい。良いものが作れそうだ」
ラトナの目的は甘味の確保! 素材の確保なのだ。
上機嫌ではしゃぐラトナとは対照的に・・精神的に疲労困憊なアユリーナ。
人生・・初めての魔獣討伐なのだ。しかもあの巨体の魔獣!
初心者向けの討伐とはいえないミッションw それを成し遂げたのである。
だが彼女は・・腰を抜かしたように、その場でペタリと座り込んでしまう。
完全に気力を使い果たしてしまったようだ。
「あ・・あっあっ~」
かすれた声が漏れる。どうやら・・お疲れさま♡
そんなアユリーナのもとへ、ラトナがそっと歩み寄り、差し入れをいれる。
「できたてほやほやの、飴玉だよ」
それは、先ほど討伐した“アシッドスライム”を素材に、ラトナが魔力を練り込んで作り上げた特製ポーション。
効能は・・甘いだけ! おもに調味料として使われる。ポーションと呼びながら治療薬ではない!
あの巨大スライム・"アシッド"討伐の目的の一つに、この"スライム"から作る甘いポーションがあったのだ。
「あっ ありがとう」
アユリーナは、ラトナから手渡された小さな飴玉を見つめる。
速攻で作ったとは思えないほど、日の光を受けてキラキラと輝いていた。
アユリーナにとって、それは生まれて初めて目にする食べ物だった。
この時代、砂糖や甘味は貴重で、庶民が口にできるものではない。
だからこそ、その小さな飴玉をそっと口に含んだ瞬間、彼女の瞳は驚きに大きく見開かれ、みるみるうちに顔色が明るくなっていった。
「なんて・・美味しい!」
そう、甘味とは、人を幸せにする魔法の食べ物。夢のような味わいだ。
ただし、食べすぎれば太るのはご愛嬌である。しかも中毒性あり。
もちろん、甘いものが大好きなラトナも満面の笑み。
彼女はこの好機を逃すまいと、スライムの残骸を手際よくかき集め、抽出し、次々と甘味ポーションを生み出していく。
「これを町に持っていけば、きっと高く売れるよね」
そんな期待が胸の奥でふくらみ、ラトナは印を切り続けるのだった。
ーーー ラトナのクッキングタイム♪ ーーー
“アシッドスライム"による・・砂糖ポーション作り。
それは驚くほど簡単な工程である。
必要とするのは、スライムの残骸と、わずかな魔導力だけ。
まずは素材、スライムの肉片を集めるところから始める。
ただし直接に手で触れるのは危険だ。
彼らの体には毒や酸が含まれているため、必ず手袋のような防具を身につけなければならない。
それに・・ぷよぷよとした肉片の感触に不快な思いをするかもしれないが・・それもこの作業の醍醐味。
中には、この感触が癖になる者もいるという。
「あっ~あ~快感♡ うふっ、いや~ん」
そして、その集めた肉片に対して印を切り、毒を抜くための魔導を発動するのだ。
すると・・・どうだろう。
毒を抜けきったあの肉片から、さらさらとした粉上のパウダー、すなわち砂糖(某異世界で食されている砂糖とはまったくの別物w)
信じられないほどの甘みが抽出されていくのだ。
なんてデリシャス! 脳にガツンとくるほどの甘さ
こうして完成するのは、淡い緑色に輝く、なんとも美味しそうな砂糖となる! 飴となる! 調味料となる!
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)




