アユリーナ
赤い血を流し・・地に伏したバベル教の関係者たち。
その中には、あのテセイと名乗る祭司長の姿もあった。
ラトナはもちろん・・迷わない。
そう、事件の隠蔽工作だ。
彼らの亡骸を森の奥へと運び込み、穴を掘って埋める。
そして、金目の物は容赦なく・・頂く
「まいどあり~ 私の許可なく、"バベル公姫"を神として祭った・・その使用料として貰っときますよ」
かつて400年前・・父と共に戦争と略奪を繰り返していたラトナにとって、こうした行為に忌避感はなかった。
だが、傍らで見ていたアユリーナにとっては衝撃が大きく、彼女は目を背けている。
"私だって・・ちょっと後ろめたい気はするけど、でも・・他の人に見つけられるのも面倒だし、放ってはおけないでしょ"
・・・と、心の中で言い訳しつつ、ラトナはちゃっかり死体あさり・・(バベル公姫使用料)として、それなりの金子を頂きます。
この時代の貨幣価値は分からないが・・祭司長と言ってたぐらいなのだから・・それなりの金額を持っていたと思う。
それにしても・・200年前と比べ、貨幣の質は明らかに落ちていた。
鎧や武器もまた粗悪な造り、低温で製鉄された痕跡が見て取れた。
あきらかに技術、文明力が衰えている。なんてことだ!
ちなみに・・これらの金子(軍資金)はラトナの収容バッグに納めさせてもらいました。
これはラトナ製の魔導バック・・
見た目は、ただのリックサックだが、内部の空間は10倍に広がっており、ある程度の荷物を押し込めることができるのだ。
・・・とはいっても、手に入れたのは・・金子と武器類、そして食べ物、それほど大量ではなかった。
もちろん・・世の中の常識としてw 金子の半分は口止め料としてアユリーナに渡しますよ!
彼女は首を振って拒否したが・・ラトナは無理やりその手に握らせる。
これで共犯の出来上がり。彼女がどう思っているのかは・・不明だけどw
「そうよ! お金はいくらあっても邪魔にならないだろう。慰謝料と思って受け取ればいいのよ」
あっけらかんと告げるラトナに対して・・後ろめたさなどもあろうが・・一応、礼をするアユリーナ
「え、えっと・・あ、ありがたいです。困っていたところでした。これでなんとか・・生活費になりそうです」
場に漂うのは、奇妙な安堵と、言葉にできぬ緊張感。
お金が渡された瞬間、二人の関係は、もう後戻りできないものとなっていた。
「それで・・どこかの町まで案内してくれるかな・・」
ラトナはここで要求を差し込む。金を渡した以上、断り切れるはずもない。
それに彼女自身も、一人でいることに不安を抱えているだろう。
アユリーナにとって・・ラトナは用心棒のような存在、魔導で大抵の輩には対処できる。
だが、この時代・・"魔法使い"は迫害されているらしいので油断は禁物。
「あっ、そういや黒髪も迫害されてたんだね。これは面倒なことになりそうだが・・その場でなんとか切り抜けるしかない!」
そんなラトナの杞憂にアユリーナは首を静かに振る。
「ここから少し遠いのですが、イルモの街には黒髪の人が多く・・バベル教徒は少ないのです。そこまで行けば・・・迫害の心配はないでしょう」
ラトナは眉を緩め、顎に手を添えて頷く。
「ほぅ、安全地帯はあったのか! すべてがすべて・・バベル教の影響下ではなかったのだな!」
「はい、うちは・・あの教徒たちの追跡を振り切り、そのイルモへ逃げ込もうとしていたのです」
わずかに声を震わすアユリーナに対して、ラトナは力強く言い放つ。
「よし! ならば早速、出発しよう。イルモとやらに・・この地は死臭が漂いすぎている」
背を伸ばすラトナの姿に、アユリーナは心強さを覚えた。
本物の魔導士に身をゆだねられる。その事実が、彼女に安心感を与えていた。
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ラトナは道すがら、アユリーナから・・この時代の事情を聞き出していた。
「ルシャーナ帝国!? 昔話で聞いたことがありますよ」
「えっ・・昔話!」
そう、やはりというべきか・・予想していたものの、その真実、歴史を知ると涙がでる。
かつて偉大なる帝国として栄華を誇ったルシャーナ。
今やその名は、歴史の1ページに刻まれ、昔話とされてしまっていたのだ。
滅びし帝国ルシャーナ、その帝都クラムが存在したのは、大陸の中央部。
そこは今、数多の魔獣が跋扈する超危険地帯、人が足を踏み入れてはならぬ、禁断の荒野と化してしまっているとのこと。
「あっ〜なるほど! ドラゴンが飛び交い、凶悪な魔獣が跋扈していたね~! 確かに危険だ 下手に侵入すると食べられる」
それにしても、わずか200年で、大陸中央部が人跡未踏の荒野へと変わってしまうとは・・いったい何が起きたと言うのか!?
たぶん・・想像を絶する事件でも発生したのだろう。
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「大陸の中央に・・危険地帯が生まれた理由ですか!? 聞いたことがないですね」
アユリーナも知らないらしい。
そんな彼女がラトナを見つめ・・そして、少しためらいながら、とあることを聞いてきたのである。
「本当にラトナ様は・・女神様?! バベル公姫様!? しかも、その大陸中央部から来たのですか!?」
アユリーナの瞳には疑念が宿っていた。
女神など、あり得ない。当然ハッタリに違いないと・・・・
(普通の人の感覚なら当然なのだ)
だが、目の前の人物・ラトナが"本物の魔導士"であることだけは、疑いようがなかった。
一瞬で・・あの男たちを吹き飛ばしたのだから・・・
少なくとも、大陸中央部から来たという話は・・・信じてもいいのかもしれない。
そんなアユリーナの問いに対して、ラトナは怒ることなく、むしろ柔らかな笑みを浮かべる。
「うん、突飛すぎる話なので、無理に信じてもらわなくてもいいけどね!」
「えっ・・・!?」
アユリーナは思わず息を呑み、ラトナの言葉に揺さぶられる。
「ふっふふ 真実は一つじゃないからね! いくつも真実があるんだw」
その声音は軽やかでありながら、妙に深みを帯びていた。
そして、ラトナは微笑を浮かべる。
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"そう、この少女・アユリーナ・・聞くところによれば、おそらく私の子孫らしい!"
確証はないけどね。
だけど・・ちょっと気になる。
それに、魔弾だけとはいえ、彼女は魔導を使えている。魔導の質も・・私と同じ
思い返せば400年前・・私は一度、夫を持ち、子を産んだ。
あまりにも昔のことで・・その夫の顔すら、もう思い出せない。
結婚して半年、彼は死んでしまったからね!
それでも我が子は成長し、"ラティリレス公家"を創設した。
そう、あのアユリーナの苗字は・・"ラティリレス"という。
まぁ、400年も経っているので、ほぼ赤の他人だけどね。
それに、たまたま苗字が同じだけだという可能性もある。
彼女に聞いたところ・・・先祖の話はまったく伝わってないという。
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「子孫ね〜!?」
ラトナは小さく呟いた。
だが、その事をアユリーナには・・伝えていない。
確実な証拠がない以上、口にするべきではないだろう。
それに・・400歳だということがバレてしまう。
ついでに「おばぁちゃん」なんて呼ばれたくないし〜
・・というか、400年もの時を隔てた子孫なのだ。
もはや「ばあさん」や「ひいばあさん」という次元ではない。
もし数えるなら・・"ひい"の文字がいくつも並ぶことだろうw
だが、血筋であろうとなかろうと、魔導の質は確かに似ている。
ならば・・なにかの縁だろう!
護身用程度の魔導ぐらい教えておくべきか!?
アユリーナが放った魔弾は、あまりにも頼りなかった。
撃ち出すのに手間取り、不安定すぎる。
魔弾は魔導士にとって基本中の基本。
それを自在に扱えぬ者は、魔導士とは呼べない。
ゆえに・・アユリーナは魔導士としては落第である。
少なくとも、今のところは。
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)




