西へ西へ進路を取れ
ラトナは・・秘密基地にて、大急ぎで荷をまとめていた。
使えそうなものを片端から収容バッグへ押し込み、まるで夜逃げをするかのような慌ただしさである。
ちなみに、この収容バッグには魔導回路が仕込まれており、内部容量を十倍拡張、+重量を百分の一にまで軽減される機能付き。
ラトナ製作の魔導アイテムの一つでもある。
とにかく彼女は、考えるよりも先に手を動かし、手あたり次第に物を放り込んでいった。
あれもこれも! あれもこれも!
食料がないのは仕方がない。衣類は必要最低限程度で・・etc.
やがてすべてを詰め終えると、彼女は秘密基地を出て、西へと歩みを進める。
200年前・・・かつて街道と呼ばれていた道は、いまや草木に覆われ、その面影すら残っていなかった。
わずかに残る石畳の断片が、辛うじて" ここが街道だった "と語りかけてくるにすぎない。
そして、そんな荒れ果てた道を、ラトナの足音だけが、静かに響く。
とにかく、この魔境から離れるべきだ。
どんな魔獣が襲いかかってくるのか、予測すらできない!
ゴブリンが数匹程度ならまだ良い。
だが、群れを成して襲ってきたり、ドラゴン級だとしたら・・想像するだけで背筋が凍る。
魔獣たちに見つかりたくない! 避けたい、ただそれだけを願いながら、ラトナは半ば崩れ落ちた石畳を踏みしめ、西へと走り続ける。
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ドッドド バァァァン スドォォォォン!
森を震わせる轟音。
ラトナの放った魔弾が炸裂し・・スライムや、ゴブリン、岩トカゲ、槍トカゲ、ヴェノトカゲたちを粉砕する。
ときたま、ときおり、ちょくちょく・・かなりの頻度で出現する魔獣たちw
数はせいぜい数匹程度、弱い魔獣なので、まだまだ余裕があるのだが・・・油断は禁物。
安全地帯に辿り着くまでは、とにかく走り抜けなければならない。
それでも、時より見つける毒キノコの採取は絶対に必要!
木の根元、草むらなどで毒々しい色彩を放ちながら、よく見かけるのです。
毒液を抽出し、自分の魔力と混ぜ合わせれば、ラトナ特製の魔導薬が作れるのだ。
(体力回復ポーションとか・・etc.)
それは旅の備えであり、町で売れば金策にもなる。
過酷な旅路を生き抜くために必要な術なのだ。
一日目の夜・・
「バベル公姫ともあろう者が、大木に登り・・枝で休むとはねぇ」
苦笑するラトナ。
だが、彼女にとって、森で一夜を過ごすことは珍しくない。
父王ルドラシイムと共にルシャーナ帝国を築く前、ラトナはただの庶民であり、森で眠ることなど、日常の一部にすぎなかったのだ。
もっとも、それは四百年も昔の話。
今は状況がまるで違う。
魔獣がうじゃうじゃと蠢く魔境で夜を明かすなど、彼女にとって初めての体験だった。
いや、それでも・・・
建国前、敵軍の大軍に包囲され、死を覚悟したあの夜に比べれば・・・まだ、ましなのよね。
二日目・・・
やはり強行軍で西へと急ぐ。
途中で襲ってきた魔獣を倒し、解体して食料・・・焼肉とする。
だが、焼き加減は雑でムラばかり、味はひどいものだった。
「これは反省ね」と、苦笑を漏らす。
次に、毒キノコから抽出した毒に自身の魔力を混ぜ合わせ、回復ポーションを作り上げた。
しかし、入れる器がない。
仕方なく、そこらの土を錬成魔導でガラス容器へと変えた。
久方ぶりの錬成魔導・・・加減がわからず、魔力を使いすぎてしまう。
目まいに襲われ、ラトナはその場に座り込んだ。
(以前の彼女なら、膨大な魔力のごり押しで乗り切れたが、今はもう違う・・・涙)
「こんな場所で魔獣に襲われたら、ひとたまりもない・・これも反省ね」
七日目・・・
ラトナは、ふと空を仰ぐ。
雲ひとつない青空・・そこを切り裂く黒い影があった。
それはドラゴン! 片手には・・鋭い爪に捕らえられ、もがき苦しむゴブリンの姿。
ドラゴンは嬉しそうに・・翼を羽ばたかせ、上空へと舞い上がる。
風が唸り、ゴブリンの絶叫がこだまする。
そして、次の瞬間・・・
ドラゴンはその手を離し、ゴブリンを落とす。
小さな影は、空を切り裂きながら、くるくると堕ちていき・・命は儚く散った。
ドラゴンの瞳に、哀れみも迷いもない。
ただ、支配者としての冷酷な力が宿っていた。
弱者を踏みにじり、食物連鎖の頂点に立つ存在・・それがドラゴン。
ラトナは悟る・・ここは魔境、弱肉強食が掟。油断するなかれ
十九日目・・・
魔獣との遭遇は、確かに減ってきている。
これまでは、一日に百匹もの魔獣を避けながら、五十匹を狩り取ってきた。
だが、今日は違う。
ほとんど姿を見かけないのだ。
現れたとしても・・せいぜいスライム程度。
力なき魔獣ばかりが、目立つようになってきた。
二十五日目・・・
ついに、街道を見つけた。
道しるべも立ち、ある程度の整備も施されている。
どうやら・・・魔境を抜け出したらしい。
2日前から、魔獣の姿もほとんど見かけなくなった。
しかも焚火の跡を見つけたのだ。
まだ、白い煙がくすぶっている。
ついさっきまで、ここに人間がいたのか!
200年後のこの世界で初めて、文明の痕跡を目にした。
そして、ラトナは確信する。
「・・・私以外にも、人間はいたのか! よかった」
二十六日目・・・
街道を、ひたすら歩き続ける。
この道の果てには、きっとどこかの集落があるはずだ。
心は軽やか、希望が胸を満たす。
ファーストコンタクト! 200年後のこの世界で、人類文明との接触に期待するw
「ふっふふふ 楽しみだ」
しかし、その期待は、すぐに打ち砕かれることになる。
視線の先、遠くから響く女の悲鳴、馬の嘶き・・・
男たちの怒号と重なり、鋼がぶつかり合う甲高い音が空気を震わす。
間違いない。
これは、トラブルとのファーストコンタクトだ!
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)




