バベルの巨塔
大陸の中央・・悠久の時をたたえ、静かに流れる大河イグナ。
その中州に、ひときわ高くそびえる巨大な塔があった。
その名は・・"バベルの巨塔"。
ルシャーナ帝国の誇りにして、揺るぎなき象徴。
半径100 ラヌルにも及ぶ円筒形の石造建築物。
その威容は、天を突き、雲を貫き、見る者すべてを圧倒する。
そう、あの某異世界、某神話・・ヘブライ、創世記の塔のごとく
これはまさに、帝国の力と栄光・・畏怖と誇りを体現する魔導の結晶、神々の玉座。
その神聖さゆえに、中州への立ち入りは、固く禁じられていた。
(- 関係者以外×立入禁止 -)
だが・・そのかわりというべきか、対岸には、美しく整備された公園が広がる。
そこでは人々が集い、語らい、憩う広場。
そして、あの"バベルの巨塔"を仰ぎ見るための“特等席”
帝国の神秘と威厳を、直に感じられる場所でもあった。
「うわぁ~すごい! 本当に天の彼方まで繋がってるんだ」
「よくあんな高さで崩れないよね」
「なんか、魔法で支えてるって聞いたよ!?」
などなどガヤガヤと、笑い声と驚きの声が交錯する。
芝生の上では、子供たちが元気いっぱいに駆け回り、 ベンチでは恋人たちが静かに愛を語り合う。
木陰では、親子連れが弁当を広げ、穏やかなひとときを楽しんでいた。
それは、ルシャーナ帝国の平和─ “パックス・ルシャーナ”と呼ばれた穏やかで豊かな時代
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だが、時は流れた。150年という歳月が、すべてを変えてしまった。
今、バベルの巨塔・展望バルコニーにひとり佇む影がある。
不老の魔導士・ラトナ。この塔の管理人にして帝室につらなる公姫、そして影の実力者、裏ボス・・
長く流れる黒髪。 白き肌に若々しい容貌を備え、すらりとした立ち姿。
時を超えて生きる彼女は、静かに眼下を見下ろす。
そこに広がるのは、炎に包まれた帝都クラウム。 赤く燃え上がる空。 崩れゆく街並み。
ラトナの瞳に映るのは、かつての穏やかな世界ではない。
全てが終わる、始まりの終焉
「うっ! 私と・・父とで築いたこの帝国が・・・なんてことを」
ラトナはバルコニーの取っ手を強く握りしめた。
その瞳は、遥か遠く、過ぎ去った栄光の日々を見つめている。
200年前─父・ルドラシイムと共に兵を挙げ、圧政者を打倒し、混沌の地に新たな秩序を築くため、帝国を作り上げたのだ。
その歩みは、容赦なき排除と鉄槌の連続、我らルシャーナに逆らう者は許さない! 反対者も許さない!
それが帝国の信条であり、進軍の旗印でもあったのだ。
そして・・我らは国内の統一を果たす。だが歩みは止まらない! 外征へと突き進むのだ。
周辺諸国を次々と制圧し、併呑し、 やがて大陸統一という壮大な夢へと手を伸ばす。
それは戦乱、血と誇りに彩られた栄光と征服、そしてその成果となって得た平和。
そう、長きにわたる穏やかな時代を手に入れたのだ。
“パックス・ルシャーナ”
誰もが豊かで平和を享受できる時代!
だが今、その栄華は音を立てて崩れようとしている。
永遠と思われた帝国は、盛者必衰の理に抗えなかったのだ。
「私が、ほんのわずか・・20年ほど眠っていた間に、まさか! 帝国がここまで衰退していたとは!」
風が吹き抜ける中、ラトナの叫びは空へと溶けていった。
魔導士ラトナ、彼女の秘密・・それは不老の魔導。
寿命を逆行させ、若返るためには、年単位の長い眠りが必要となる。
だが! その眠りの代償があまりにも・・・大きかった。
ラトナが目覚めた時・・・
いや違う! 自らの意思で目覚めたのではない。
緊急事態の発生・・・帝国滅亡の危機により、強制的に目覚めさせられたのだ。
帝国の終焉・滅亡が迫る危機!
「叩き起こされ・・気付けば滅亡寸前、これはなんの冗談!?
まさかまさかこのような事態! いったい現皇帝は・・閣僚たちは何をしていたのか
役に立たん奴らだ!」
初代皇帝であった父・ルドラシムから、この帝国を託されたのだ・・・
いや、正確には「余計なことはするな」と言われていた。
そう、実は託されていない! 父は私にある種の何か・・危険性を感じたのだろう。
だが・・今! そんなことを気にしている場合ではない。
この事態に目を背けるわけにはいかないのだ!
ラトナは決意する。 反撃せよと・・・
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ルシャーナ帝国・・その覇権は、東方大陸のほぼ全域に達していた。
残る脅威は、西方大陸の諸国家のみ。この東方大陸に敵なし。
そう誰もが信じていた。
そして、それが慢心となり帝国崩壊へとつながる。
そう、新たなる外敵が、東方の海から現れたのだ。
それは、誰も予期しなかった脅威、未知なる侵略・・"海の民"の襲来である。
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)




