ケットシーにカレーを 8
その後ろからもう一人。
「昨日の奴、作ってんだってな」
食堂の料理長だった。
「料理長、食堂の方は良いんですか?」
時間的にはお昼時は過ぎているが、食堂だってやる事はあるはずだ。
「いいって事よ、俺がなんでもやっていたら若い奴が育たないぜ」
忙しい時間は過ぎたので、後を若者達に任せてきたようだ。
「いいんですか、それじゃあ宜しくお願いします」
手を取り、挨拶する武茶士。
「ウミューハだ、頼む」
ウミューハも手を握り返す。
「で、これが作ったカレーって奴か?」
武茶士が試作したばかりの奴に目を付ける。
「ええ、でも味がイマイチで」
食べてガッカリしたばかりなのを伝える。
「一口いいか?」
「わたしも」
ウミューハばかりか、サビエラも興味を持ったよう。
「えへへ、なんか凄くいい香りだから」
屈託なく笑うサビエラを、武茶士は眩しそうに見てしまう。
「それじゃ、一口どうぞ」
お皿に軽くご飯を盛り、カレーをかけて渡す。
「おっ、美味いじゃないか・・・これのどこに問題があるんだ」
「ええ、とても美味しいですよ」
二人には評判がいい。
「最初の一口目はボクも感動したんですが、なんて言うかコクというか旨味というかそれが足りないんですよね。故郷のカレーはもっと味に深みがありました」
武茶士は自分の感想を正直に告げた。
「コクか・・・そっちの奴をくれ」
ウミューハがカレーの方を見る。
オタマで掬い、小皿に入れて渡す。
「美味いな・・・ああなる程」
小皿の中のカレーを何口かに分けて飲んだウミューハは、何かに気がついたように頷く。
「何か判りました?」
期待を込めてウミューハを見つめる。
「これだけで飲むと美味いけどな、飯にかけて一緒に食べると飯の甘さに負けちまうと言うか、味がぼやけるな。もっと味を濃厚にしないとダメだな」
問題点を指摘する。
「味を濃くするですか?」
その事は武茶士は気がついていたのだが、取り合えずリンゴと蜂蜜を使うまでは思いついていた。
「その前に、材料に何を使ったか教えてくれ」
武茶士は材料について、詳しく教える。
「タマネギの代わりにキャベツを入れたのか、俺たちはネギの仲間は食えないからそれはいい判断だ」
ウミューハはそれから腕組みをして、
「問題はキャベツだな、キャベツはよ火を通すと意外と水が出るんだよ。見た目がパリパリしてるから、水が出ないって勘違いする奴が多いけどな」
言われてみて、武茶士もキャベツはあまり水が出ないと思い込んでいた事に気がつく。
「キャベツを煮物に使う時は、水を少なめにするか炒めて水を先に飛ばしてしまうかだな」
武茶士は「成る程」と言いつつメモを取る。
「ただな、キャベツは火を通しすぎると変な臭みが出るから、そこの見極めが大事だぞ」
それもメモする。
「それを頭に入れて作り直してみるか」
「はい」
それから、二人のカレー作りの試行錯誤が続いた。
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