ケットシーにカレーを 5
「そう、香りが強すぎて食堂の厨房じゃ無理なのね」
「直ぐ出来れば宣伝にもなるけど、何回か作って味を確かめないとならないからあまり騒ぎになるのもよくないと思う」
武茶士の作れるのは個人的に楽しめる程度の味で、お店でお客に出す程のもではない。
この世界の人は初めてなのだからそれでもいいじゃないかと思うかもしれないが、無茶士のカレー愛がそれを許さないのだ。
「食べて貰うなら、自分が納得する味を食べて貰う」
それこそがカレー愛なのだ。
「匂いを出さないとなると・・・10号実験室の改修は終わったわよね?」
サビエラに確認を入れる。
10号実験室は、危険な気体や匂いの強い薬品を研究するための実験室で、外部とは空気が完全に遮断されていた。
確かにそこなら、カレーの香りが外に漏れる事はないだろう。
「はい、機材の搬入も大方終わっています」
「いいわ、そこを使いなさい」
決断するモモエル。
「いいんですか?あそこは既に予約で年内一杯ですよ、暴動が起きますよ」
自分の研究が邪魔された時の研究者の暴れっぷりを知っているサビエラは、怯えた表情ををして身震いする。
「ふん、イヤなら研究費減らすと言えば一発よ」
ふんすと息を吐くモモエル。
研究費を減らされれば研究が滞る、時には打ち切りもあるのだ。
打ち切り=研究の死。
モモエルは魔道研の所長、魔道研の全ての研究の生殺与奪権を持っているのだ。
「これも研究費確保の為」
そこに予約をモモエルの研究チームも入れてあるのだが、涙を飲んで諦める事にしたのだった。
全ては研究費確保のため、何よりも優先するのだ。
「ここに冷蔵庫と調理台をセットして、料理が作れるようにして」
モモエルが直々に施設班に説明を入れる。
「いいんですか?改修したばかりなのに」
改修したばかりの研究室を、使う前に更に改修が入るのだから驚くのは当然。
「これには魔法道具研究所の命運がかかっているの、だからお願いやって」
モモエルに手を取って頼まれてしまえば、断る事は出来ない。
この研究所の所長というのもあるが、それ以上にモモエルは職員達に愛されているのだ。
「モモエル様にそこまで頼まれたら、断れませんよ。いつまでに仕上げればいいですか?」
「最速でやってどれくらいで出来るの?」
「そうですね、貫徹でやれば明日の朝には」
「それでお願い」
「承りました」
施設隊の隊長は、駆け足で部屋を飛び出していった。
その後、施設隊総出でキティーのところに押しかけ、回復魔法をかけ続けたキティーは、魂が半分抜けた状態で発見されたという。
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