ケットシーにカレーを 10
「これから出す料理を魔道研の資金確保の一つとして売り出します、うまくいけば魔道研の資金源にもなるのよ。そう思って、真剣に意見を聞かせて下さい」
簡単な説明の後、カレーライスと赤い粉の入った小皿を各人の前に厨房のメンバー達が置いていく。
「ご飯と上にかかっている奴を混ぜながら食べて下さい、小皿に入っている奴は辛さを増す粉ですから、辛さが欲しい時は少しかけると辛くなります。但しかけ過ぎると大変な事になるので、味を確かめながらにして下さいね」
各人に行き渡ったのを確認してから、祈りを捧げて試食が始まる。
「辛いが、飯と一緒に食べると美味いな」
「不思議な味だけど、ご飯と良く合うわね」
「これ気に入ったけど、もうちょい辛い方が好みかな」
概ね好評だ。
辛さの要望に、
「辛さを増したいなら、さっき渡した小皿の粉を少しかけて」
再度、小皿の説明をする。
「そうだった」
ジェーンは小皿の粉を少しかける。
「おお、辛くなった。この粉はなんだよ?」
「唐辛子を干した奴を、種ごとすりつぶした奴だ。種ごとだとかなり辛くなるからな」
ウミューハがにやっと笑う。
「そうか、唐辛子を・・・でもさ、食堂で出すならこのまんまはダメじゃない?一回一回捨てるの勿体ないぞ」
ジェーンの意見に武茶士ははっとした。
小皿に入れてお客に出した辛子を、使い回すのはやはり衛生的に良くない。
かといって、その都度、捨てていては勿体ない。
「こんな形の入れ物に、頭の部分にこんな感じに穴を空けてた物があれば使い回しが出来るんだけど」
武茶士は生前の一味唐辛子入れを絵に描いてみせる。
「おっ、そんなもんなら俺が作ってやるぞ。大きさはどれくらいだ?」
武茶士が手で大きさを見せる。
「判った。で、幾つ必要だ?」
数を聞かれて、武茶士はモモエルの方を見る。
「そうね、取り敢えず10個・・・」
ピキーン
モモエルの中で何かが閃いた。
「いえ、20個作って下さいクッロウエル様。これはきっと当たります」
自分の中で、このチャンスを逃すなと囁きかけてきたのだ。
「わたしもこれは売れると思います。このくらいの辛さなら子供でも食べられるし、辛くしたいならこれを使えばいいんだから」
一味の入った小皿を持ち上げるサビエラ。
「20個か・・・俺もあれこれやってるからな・・・」
クッロウエルが腕を組み、しばらく考えてから、
「明後日だ、遅くても明後日の夕方にまでは揃える」
そう約束して、クッロウエルは部屋を出て行った。
「明後日の夕方とクッロウエル様が約束して頂いたので、間違いなく届くでしょう」
モモエルはクッロウエルの事を心の底から信頼している。
「どこで売り出しましょう?」
ウミューハが一番大事な事を聞いた。
「そうですわね・・・やはり倉庫のフードコートが一番じゃない?お昼時には人が集まるし、カレーのこの香りなら注目確実よ」
カレーはわざわざ宣伝しなくても、その香りで充分に注目を集める事が出来る食べ物。
人の多い場所でカレーの香りが広がれば、確実に注目を集められる。
「フードコートに作るとして、どれだけの施設が必要だ?」
ジェーンがウミューハに聞く。
「ウチの食堂と同じ釜が二つと、調理台がこのくらいと流しと食器置き場と・・・それと冷蔵庫が一つ欲しいな」
細かく注文を入れていく。
「後で設計担当寄越すから、そいつと相談してくれ」
自分の手に余ると判断して、専門家に投げる事にした。
「それでは、カレーに向けてみんな動いて頂戴」
カレープロジェクトのスタートだ。
紆余曲折あった末、フードコートに新しいお店が誕生した。
今日はそのオープン日。
「俺、自分だけ食べられればいいと思ってたんだけど、まさかカレーの店が出来るとは思ってなかった」
感慨深げに呟く武茶士。
「良かったですね」
サビエラが隣で微笑む。
「うん」
そのサビエラの手を武茶士はそっと握った。
サビエラは一瞬驚いたが、そっと無茶士の手を握り返す。
それだけで幸せ生一杯になれる二人。
カレーを作る調理場から、風を送る魔道具がさっきから周囲にカレーの香りを撒き散らしていた。
嗅いだ事のないカレーの香りに、行き交う人々は何事かと調理場の方を伺う。
何人かがカウンターまで足を運び、店員に話を聞く姿も見られた。
宣伝効果はバッチリだ。
そしていよいよオープン。
「行こう」
「はい」
武茶士とサビエラは手に手を取って、カレーコナーへと向うのだった。
おしまい♪
後書きです
ケットシー物語も四年目に突入。
これも読みに来てくださる皆さんのおかげと感謝しています。
以前から約束している通り、ネタが続く限り本編は書き続けますのでよろしくお願いします。
これから、本編の方の投稿しなくちゃ(^_-)-☆
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