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不死王レオンとアルヴィス王国物語  作者: スガヒロ
第二章 氷冠の再誓(ひょうかんのさいせい)

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北の風は静まりて ― それぞれの安堵

北西防衛線/ミレーヌ&ゲルハルト


雪嵐が途切れた夜。

ミレーヌは砦の作戦室で、地図と報告書を前に腕を組んでいた。


その時――斥候が駆け込む。


「将軍! 西方より伝令!

 獣人族の動き、鎮静化。

 灰牙の狼団、撤退。

 こちらへの敵意は確認されずとのことです!」


ミレーヌは一瞬だけ目を見開き、すぐさま冷静さを取り戻す。


「……全軍に伝えなさい。

 警戒を維持しつつも、無用の挑発は厳禁。」


ゲルハルトが静かに近づいた。


「救いが来たな。」


「ふん……ここで戦が起きては、

 北方の“本当の脅威”へ兵を割けなくなる。」


ミレーヌは壁に掛けられた“氷門”の絵図を見つめる。


「影を押し返す刃と盾であるために……

 まだ息をつく訳にはいかないわ。」


ゲルハルトが拳を握りしめる。


「我らの役目は、

 不死王陛下が向かう道を――守り通すこと。」


ミレーヌも頷いた。


「レオン陛下……どうか、ご無事で。」


彼女は知らない。

レオンがすでに、氷門へ向けて歩みを進めていることを。


だが、願いだけは風に届く――



---


紅の回廊。

無数の眷属(蝙蝠)が天井にぶら下がる中、黒い玉座に少女が座っていた。


伝令の影蝙蝠が、ルカの肩に止まる。


「……灰牙の若狼たち、撤退。

 人間との接触――友好にて終息。」


ルカはふわりと微笑む。


「やれやれ。

 本当に獣は扱いが難しい。」


蝙蝠がクスクスと笑ったように揺れた。


「けれど……これでいい。」


ルカは足を組み、指を一振り。

大陸全土の地図が宙に浮かぶ。


「西は沈静化。

 北は、まだ踊り続ける。」


青い光が“氷門”に灯る。


「ねぇ、レオン?

 あなたがどれだけの覚悟で進むのか――

 私は見届けたいの。」


その声には、ただの魔物らしからぬ

奇妙な情の色が混じっていた。


「影も、国も、運命も。

 ぜんぶ、この手で整えておくわ。

 ――あなたが勝てるように。」


紅い椅子の少女は微笑む。

まるで舞台監督のように。



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