雪中の休息 ― 炎と氷のはざまで
氷竜アズラリオンとの邂逅から数時間後。
一行はドワーフの街〈グラン・ノルデン〉に戻っていた。
工房では、職人たちが
青紅の鉱石〈フレアライト〉を炉へ投じ続けている。
セリオは焚き火の前で膝を抱え、ガタガタ震えていた。
「ひ、ひぃぃ……氷竜さんの冷気がまだ残ってますぅ……
僕もう氷漬けのハムですよぉ……!うぅぅ……加護があっても指先は寒いんですよぉ……!」
「情けない声出さないで下さい。」
クラリスが苦笑しながら
自分のマントをふわりと肩にかける。
「少しは落ち着きましたか?」
「心は落ち着いても体が震えてるんですぅぅ!」
対照的に、アリアは大興奮で周囲を観察中。
「わぁ……フレアライトの魔力が
炎と水で二層構造になってる……!
これ、普通に爆発物ですよね!?」
「爆発!?」
セリオが更に震えた。
「安心しろ。」ノエル(=レオン)が淡く笑う。
「暴走する前に職人たちが形にしてくれる。」
「それが怖いんですよぉぉぉ!」
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〈グラン・ノルデン〉鍛冶王ブルグレンの〈火心炉〉。
溶鉱が流れ、炉の炎が唸りを上げる。
長き鍛造の末――
ごうっ、と赤青の光を放って一本の剣が姿を現した。
「できたぞ旅の剣士!」
ブルグレンが誇らしげに掲げる。
> “焔氷剣フレイムグレイス”!
赤き炎と蒼き氷が刃の中央で揺らめき、
相反する属性がかすかに共鳴していた。
ブルグレンは豪快に笑う。
「炎と氷は本来、喧嘩する属性だ。
だがな、お前さんの剣筋を見て閃いたんだ!」
拳で胸を叩く。
「―“正と反の均衡”!
その背中はどちらの光も背負うのにふさわしい!」
レオンは静かに剣を受け取り、
その重さと温度を確かめる。
熱い。だが、同時に冷たい。
「……未完成だな。」
ブルグレンはにやりと笑った。
「察しがいい。
まだ炉の火だけでは足りねぇんだ。」
彼はレオンの目をまっすぐ見た。
「この剣は、お前さん自身と一緒でな。
“まだ目覚めていねぇ”。
完全な力を得るには――
> “覚醒の核” を手に入れること。
それが最後の鍵だ。」
クラリスが隣で小さく息を呑む。
「それは……どこのものですの?」
ブルグレンは火の粉を払いながら答えた。
「はっきりとは分からん。
だが、氷竜アズラリオンなら何か知っているだろうさ。」
レオンは微笑む。
「ちょうど北へ向かうところだ。」
「ならば話は早い!」
ブルグレンが豪快にレオンの肩を叩く。
「その剣は――
本当の姿を見せるのを楽しみにしとけ!」
レオンは刃を静かに鞘へ納めた。
これはまだ“序章の剣”。
真の名は――これから刻まれる。
続いてクラリスへ、細身の長剣が差し出される。
>「こっちは“月氷の刃”。
夜の戦いや、素早い連撃に向いとる!」
クラリスは美しく刃を構え
ひと振りだけし、礼をする。
「見事な業です。大切に使います。」
ブルグレンは照れくさそうに鼻を鳴らした。
「お前さんら、ただ者じゃねぇなぁ。
王国随一の鍛冶場が、久々に本気を出したぜ。」
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アリアは鑑定しながら目を輝かせた。
「すごい……封印術式と属性共鳴が
完全に同期してる……!
古代でも相当上位の技術よ!」
セリオは遠巻きに見ながら叫ぶ。
「やっぱり爆発する気しかしないぃぃぃ!」
「黙って守られていなさい。」
クラリスが頭を撫でるように言う。
「ひぃっ……守られるのは嬉しいんですけど
胃がキリキリするぅ……!」




