氷の門 ― 竜王アズラリオンの試練
夜明け。
北方へ続く雪原は、夜の闇を押し返すように
淡く青い光を帯びていた。
レオン一行は、吹雪に包まれた峠を越え、
ついに山脈の中腹へと足を踏み入れた。
氷壁が連なる道の奥――
巨大な半円状の構造物が姿を現す。
氷で造られた巨大な門。
その内部には深淵の闇すら凍らせるほどの冷気が満ちていた。
「ここが……“氷の門”……」
セリオが震えながら呟く。
「寒すぎて……霜焼けどころか魂が凍りますぅ……!」
クラリスは息を凝らし、剣を構える。
「旦那様、気配があります。」
レオンも静かに頷いた。
「来るな……」
吹雪が渦を巻き、
天地を揺らす巨躯が姿を現した。
──白銀の鱗。
──天空を裂く双翼。
──氷晶を帯びた角冠。
> 古竜アズラリオン。
氷の聖樹を護る氷冠の王。
その一声が山脈全体を震わせた。
> 『久しいな、レオン。
“虚界の鎖”を纏いし王よ。』
クラリスが目を見開く。
「……名前も姿も知られているのですね、旦那様」
「かつて、共に戦ったのだ。」
レオンは前へ進む。
アズラリオンの蒼い瞳が光を増す。
> 『封印樹は軋んでいる。
再び影の根が蠢き出した。
……だが、レオン。』
『お前こそが、その影に最も近い。』
レオンは、その言葉を黙して受けた。
アリアが息を呑む。
「影の根……影核……」
アズラリオンの視線が彼女へ注がれた。
> 『人の癖に……よく知るな。
黄金の瞳よ。お前は何者だ?』
「アリア・フェンリス。
鑑定士にして――
この“不死王”の仲間です。」
アリアは一歩も退かない。
クラリスとセリオも、レオンの両脇に立った。
その姿を見て、アズラリオンは低く唸った。
> 『ならば――確かめさせてもらう。
〈影の主〉に抗う力が、お前たちにあるのかを。』
氷の翼が広がる。
吹雪が一帯を覆い尽くす。
クラリスが叫ぶ。
「来ます、旦那様!」
「構わない。」
レオンは冷たい炎が宿ったような眼差しで言った。
「力を示せと言うのなら――示してやろう。」
アズラリオンが咆哮する。
> 『試練を越えよ!
影を断ち、氷を砕く者であれ!』
青白い魔力が爆ぜ、
氷塊が雨のように降り注ぐ!
セリオが慌てて両手を広げる。
「ひいいっ!? み、水の壁ぃぃぃ!」
水の精霊アクエラの加護が発動し、
巨大な氷柱を弾き返す防壁が展開された!
アリアがすぐに鑑定術式を展開する。
「弱点は……心核の炎!
炎属性じゃないと突破できないわ!」
レオンが剣を抜く。
その刃はまだ未完成のまま――だが。
「ならば、俺が炎を呼ぶ。」
右腕に宿る古い魔力が解放される。
クラリスが隣に立つ。
「旦那様が前なら、私は隣に!」
「よし。行くぞ!」
不死王と仲間たち。
対するは氷冠の王。
世界の命運を左右する出会いが、
今、氷の試練となって襲いかかる――。
いつもありがとうございます。
次回、氷竜の試練 ― 氷冠を砕く炎
また明日更新します。よろしくお願いします。




