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不死王レオンとアルヴィス王国物語  作者: スガヒロ
第二章 氷冠の再誓(ひょうかんのさいせい)

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火心炉の街 ― 聖炎の剣と掘り出し物』

〈グラン・ノルデン〉王都鍛冶殿――〈火心炉〉。

地下深く、赤い結晶灯が炎の脈動に合わせて明滅し、

溶けた鉄の川が轟音を響かせて流れていた。


鍛冶王ブルグレンは、レオンから受け取った

青紅の結晶〈フレアライト〉をじっくりと眺める。


「……こりゃあ、すげぇ代物だ。 火と水が互いを喰らい……なお生きておる。 “炎喰い”の核を浄化して得た石だからこそだな。」


レオンが一歩前に出る。 「これを剣に。

瘴気を断ち、同時に浄化できる刃に仕上げて欲しい。」


ブルグレンがにやりと笑った。 「お前さん……まるで昔話に出てきた“不死の王レオン”のようだな?」


クラリスが微かに目を細める。 ノエル(=レオン)は淡く笑い返した。


「伝承は伝承さ。今はただ――この国を護る旅人に過ぎない。」


そこでクラリスが静かに進み出た。 腰の剣に触れ、毅然とした声音で言う。


「鍛冶王殿。

旦那様の剣だけではなく……私にも同じ力を宿した刃をお願いします。」


ブルグレンはクラリスをじろりと見た。

その目は戦士としての資質を測る鍛冶師の眼光。


「……ほう。

守られるのではなく、“共に斬る”覚悟ってわけか。」


クラリスは微笑み、深く一礼する。 「私は旦那様の剣であり、影を払う従者ですので。」


セリオが慌てて付け加える。 「ぼ、僕も守って欲しいですぅ! 二人とも強すぎるんですぅ!」


アリアがくすっと笑う。 「クラリスさんはただ守られるような人じゃないものね。」


ブルグレンは豪快に笑った。


「いいだろう! 二振りだ! だが、“炎と水”を馴染ませるにはな……」


彼は炉を叩き、響きを確かめるように言った。


「――三昼夜、炎を止められねぇ。

鍛える我らも命がけだ。」


レオンは静かに頷いた。 「感謝する。急ぎはしない。確かな刃を頼む。」


クラリスが鍛冶王に目を向ける。 「完成した暁には、必ず――影を払ってみせます。」


ブルグレンは両手を広げ、大声で叫んだ。 「よォしッ!! 聞けぇぇぇ、鍛冶師ども!! 火心炉に眠る炎を全て叩き起こせッ! “レオンの刃”(レオンブレード)と “月の剣”(ルナブレイド)を鍛えるぞッ!!」


奥からドワーフたちが声を上げ、

ハンマーが一斉に打ち鳴らされる。


 ガァァン!

 ガァァン!

 ガァァン!!


炎の旋律がホール全体に響き渡る。


クラリスは振り返り、レオンを見つめた。

その瞳は炎の光を宿し、誓いを語っているかのよう。


「――旦那様。どうかお休みください。 剣が戻るまでの間は……私が、この手で守ります。」


レオンは微笑し、静かに頷いた。


「頼りにしている、クラリス。」


結晶灯が揺れ、炎が鼓動する。


こうして――

瘴気を断つ“二振りの光”が

火心炉で産声を上げようとしていた。



---


王都鍛冶街・火の路地。


工房を出たアリアとセリオは、

熱気と活気が入り混じる市場通りを進んでいた。


「見てくださいセリオさん!

 この魔導器、熱を利用して氷を生成してますよ!」


「逆ゥ!? 原理どうなってるんですか!?」


「それがドワーフ技術よ♪ 常識は裏切るもの!」


アリアは次々と露店へ顔を突っ込んでいくが、

その度にセリオは小声で財布を押さえて震えていた。


「も、もう今日は十分じゃ……?

 僕の財布が、もう……!」


「大丈夫。見るだけ♪(買わないとは言ってない)」


「こわああああい!!」


──そんな中。


路地裏の薄暗い一角に、小さな古道具屋を見つけた。


棚には錆びたネジ、割れたレンズ、欠けた鉱石……。

見るからにガラクタだらけ。


店主のドワーフが鼻を鳴らす。


「暇じゃ暇じゃ。高ぇ買い物する客は来ねぇしな。」


アリアの目がぎらりと光る。


「……こういう店が 宝なのよ。」


「ま、またアリアさんの目が光ったぁ!?

 そういう時は危険信号なんですよぉぉ!」


棚の奥へ手を伸ばしたアリアが、

埃をかぶった小箱を掴み上げる。


黒い鉄の箱。

全体に薄い蔦模様──ただの装飾にも見える。


アリアは微妙な顔をして言った。


「ふーん……ただのガラクタねえ……」


「ガラクタですよね!? 帰りましょ帰りましょ!」


「おい小娘。」店主が小箱を指で弾く。

「それ、昔拾っただけの鉄くずだ。

 中身もない、重いだけ。」


アリアはあっさり言った。


「銅貨三枚で。」


「へいへい、持ってけドロボー。」


セリオがすかさず抗議した。


「っていうかホントに買うんですか!?」


アリアは清算を終えると、

店の外に出ながら小さく囁いた。


「……鑑定、発動。」


瞳が金色に輝く。


小箱に刻まれた蔦模様が、

淡い青の光となって浮き上がる。


セリオ「ひっ!? な、なんか光ってません!?」


アリアは低い声で告げた。


「これ、“古代アルヴィス王国期”の封印術式。

 未解読の聖符結界が残ってる……」


セリオ「……へ?」


「つまり……

 瘴気も魔族も一切近寄れなくなる“絶対防御の箱”。

 中には《封印された何か》が眠ってる。」


セリオ「銅貨三枚でぇぇぇぇぇッッ!?」


アリアは満面の笑みで胸を張った。


「いい買い物をしたわ♪

 店主には“紙鎮”って言われてたけど。」


セリオ「あの人絶対あとで泣きますよ!?

 転売目的とかじゃなく……ホントに使うんですよね!?」


「もちろん。

 封印を解くのは……もっと旅が進んでから。」


アリアの笑顔は楽しげで、

少しだけ──危険な輝きを宿していた。


セリオは震えながら囁いた。


「……アリアさんって、

 やっぱり一番怖いのって人間ですよね……」


「ふふ、褒め言葉ありがとう。」


セリオ「褒めてませんぅぅぅ!!」


炎の街の喧騒の中、

二人の軽口が夜に吸い込まれていく。


そしてその小箱は――

後の物語で、大きな鍵となるのだった。





いつもありがとうございます。また近日更新します。

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