炎喰いとの戦闘 ― 不死王と聖なる蒼炎
〈グラン・ノルデン〉南坑――“竜の炉跡”。
灼熱と瘴気が混ざり合う洞窟の奥、
赤黒い光が脈動し、地鳴りが鳴り響いていた。
ノエルたちは慎重に進み、炎の影が揺れる空洞の中心で立ち止まった。
壁一面に焦げ跡が広がり、中央には巨大な魔力核――
いや、“それ”は呼吸していた。
「……出るぞ。」
ノエルの声に合わせ、炎の地底が爆ぜた。
炎喰い〈フレイム・デヴォーラ〉。
その姿はまるで、地獄の龍。
赤熱した鱗と、黒い瘴気の尾が渦を巻き、溶岩そのものが牙を持って動いている。
「ひ、ひぃぃぃぃぃ……!! あれ、人が戦う相手じゃないですってぇぇぇ!!」
セリオが青ざめて後ずさる。
「セリオ、退がるな!」
クラリスが短剣を抜き、風の加護を展開する。
「後方支援に専念を! アリアさん、魔力防壁を!」
「了解!」アリアの魔法陣が展開し、仲間たちを蒼光の膜が包む。
炎喰いが咆哮。
空気が燃え、天井の岩が溶け落ちる。
ノエルが剣を抜き、白銀の魔力を纏った。
「――来い。」
炎の尾が迫る。
ノエルが一閃。炎が弾け飛ぶ。
その剣撃は空気を切り裂き、熱風を断ち割った。
アリアが叫ぶ。
「炎喰いの核、胸部中央! 外殻は魔力鎧――通常の攻撃は通りません!」
「ならば、砕くまでだ。」
ノエルが目を細める。
「クラリス、左へ回り込め。」
「承知!」
クラリスが疾走し、炎喰いの脚部を切り裂く。
赤熱した血飛沫が飛ぶが、彼女の風魔法が即座に冷却して蒸発させる。
炎喰いが怒り狂い、地を踏み鳴らした。
地鳴りとともに、無数の火柱が噴き上がる。
「うわぁぁぁぁっ! だ、だめですぅ! 火の雨ぇぇぇ!」
セリオが両手を掲げた瞬間、水流が噴き出す。
> 「――アクエラ、お願いっ!」
青の魔力が波のように広がり、火柱を包み込む。
炎が蒸気に変わり、洞窟の温度が一瞬だけ下がった。
アリアが驚きの声を上げる。
「すごい……! セリオさんの水流、ただの防御じゃない……炎喰いの魔力を吸収してる!」
ノエルがその隙を逃さない。
「セリオ、維持しろ。今だ――!」
彼が地を踏みしめ、剣を構える。
その瞬間、周囲の魔力が震えた。
クラリスが息を呑む。
「旦那様、それは……“賢者の詠唱”……!?」
ノエルの周囲に光の円陣が幾重にも広がる。
剣に刻まれた古代文字が蒼炎を帯び、輝きを増していく。
「この剣は、“光の理”を宿す剣。
そして我は、理を操る者――
剣聖の手にて、賢者の言葉を紡ぐ。」
天と地の魔力が共鳴した。
炎と水、光と影が渦を巻く。
彼の声が洞窟全体に響き渡る。
> 「――《天照の理》」
次の瞬間。
ノエルの剣から放たれた光柱が、炎喰いを直撃。
炎が青と白の閃光に変わり、瘴気を溶かしながら貫く。
だが――炎喰いはまだ倒れない。
半壊した身体を引きずり、最後の咆哮を放つ。
「来ますっ!」アリアが叫ぶ。
「瘴気爆発――!」
ノエルが剣を地に突き立てた。
「――《聖環・零界結界》!」
剣を中心に円形の光壁が展開。
暴走する瘴気を吸い込み、聖光が爆発を封じ込めた。
轟音と共に、洞窟全体が眩い白光に包まれ――
そして、静寂。
やがて、残ったのは焼け焦げた大地と、
炎喰いの核が浄化された“青紅の結晶”。
クラリスが息を整えながら言う。
「……見事です、旦那様。」
アリアが膝をつき、結晶を拾い上げた。
「フレアライト……純度が高い。炎と水の融合結晶。」
ノエルは剣を鞘に納め、静かに答えた。
「これで、“清浄の炎”が手に入る。」
セリオが尻もちをついたまま、ぐったり笑う。
「も、もう……二度と火のモンスターはいやですぅ……
でも……僕、ちょっと……役に立ちましたよね?」
クラリスが微笑んで頷いた。
「ええ。あなたの“怖がり”が、私たちを守ってくれたのです。」
ノエルは炎の残光を見上げた。
「火の底に眠る青き光――
あの予言、間違ってはいなかったようだな。」
セリオは照れくさそうに笑い、アリアが肩を叩く。
「次の予言も、ぜひ頼むわね。できれば穏やかなやつを。」
「そ、そういうのはプレッシャーがぁぁ……!」
一同の笑いがこだまする中、
フレアライトが静かに脈動を放つ。
その光は、まるで“炎と水の共鳴”が
新たな希望を宿した証のように――蒼く、優しく輝いていた。
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