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不死王レオンとアルヴィス王国物語  作者: スガヒロ
第二章 氷冠の再誓(ひょうかんのさいせい)

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鍛炉の国の夜 ― 焚き火とスープと怖がり預言者

〈グラン・ノルデン〉の夜は、昼間の熱気とは打って変わって冷たい風が吹いていた。

街の片隅、宿の外には湯気を立てる屋台がいくつも並び、香ばしい匂いが漂っている。


ノエルは歩みを止め、ふと立ち込める湯気を見上げた。

「……悪くないな。

 ここで一泊して、体を休めていこう。」


クラリスが微笑み、アリアが頷く。

「賛成です。魔力を練り直す時間も必要ですし。」


その瞬間――セリオが勢いよく手を挙げた。

「大!大大賛成ですっ! 僕、体力ゼロですから!

 それに……ほら、食べてる匂いがもう幸せを呼んでますぅぅ!」


ノエルが小さく吹き出す。

「……そんなに腹が減っていたのか?」

「減ってたどころじゃないです! さっきの転移から、魂ごとカロリー消費してますぅ!」


クラリスが笑いながら言った。

「では旦那様、せっかくですから、こちらで夕食を取りましょう。

 宿の主人によると、“岩魚の香草スープ”が名物だそうですよ。」


「岩魚……」ノエルの表情が少し和らぐ。

「懐かしいな。昔、リュミエールと旅をしていた頃にも食べた味だ。」


「えっ、そんな貴重な思い出の味なんですか!?」

セリオが目を輝かせる。

「よぉし、僕、五杯食べます!」


アリアが横目で見て微笑む。

「……胃薬の準備もしときましょうか。」

「そ、それはフラグですよアリアさん!?」



---


宿屋〈鉄炉亭〉


夜、食堂の中央の暖炉に火が灯り、テーブルには香草の香りが広がっていた。

湯気の立つスープ、焼きたての黒麦パン、蜂蜜酒。

旅の疲れを癒すような温かさがあった。


「うわぁ……これ、幸せの味です……!」

セリオがスプーンを持ったまま、目を潤ませる。

「このスープ、胃まで優しい……。僕、生きててよかったぁ……!」


クラリスが笑いながらワインを注ぐ。

「セリオさん、明日の戦いの前に、せいぜい胃を整えておきなさい。」

「はいっ……! 僕、明日こそ役に立ちますっ!」

「“こそ”ですか?」アリアが茶化すように笑った。


ノエルは静かにスープを飲みながら、暖炉の炎を見つめていた。

その目に、わずかな決意の色が宿る。


「明日は“炎喰い”との戦いになる。

 奴は火を喰らい、瘴気を吐く存在だ。……恐れるな。」


クラリスが頷く。

「ええ。旦那様の剣と私の刃、そしてアリアさんの知識があれば。」


セリオが胸を張って、……すぐに萎んだ。

「ぼ、僕も……僕も頑張りますけど……燃えない方向でお願いしますぅ。」

「大丈夫よ。」アリアが微笑む。

「水の精霊アクエラが、あなたの背中にいるわ。きっと助けてくれる。」


セリオはしばらく黙ってスープを見つめ、それからゆっくり笑った。

「……そうですね。僕だけじゃない、アクエラも一緒に戦うんですもんね。」


ノエルが席を立ち、暖炉の前で剣の柄に手を添えた。

「――明日はこの剣に、新たな炎を宿す日だ。」


炎が一瞬、強く揺れた。

まるで彼らの決意に応えるように。



---


その夜、〈鉄炉亭〉の窓の外には雪が静かに降っていた。

穏やかな夜のぬくもりの中、

不死王とその仲間たちは久しぶりに“安らぎの夢”を見た。


翌朝、彼らを待っていたのは――竜の炉へと続く、深紅の坑道だった。

いつもありがとうございます。また明日更新します。

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