鍛炉の国〈グラン・ノルデン〉 ― 鑑定士の発見と清浄の炎
雪山を越え、白霧を抜けた先。
岩山をくり抜いた巨大な都市が現れた。
無数の煙突が立ち並び、青い炎が夜空を染める。
――そこが、鍛炉の国〈グラン・ノルデン〉。
ドワーフたちが住まう、鉄と炎の王国だった。
「すごい……っ! 鉱炉がこんなに整然と……!」
アリアの目が輝く。
熱気の中で輝く金属の光、鉄を叩く音が山々に響いていた。
クラリスがマントを整えながら言う。
「まるで地の鼓動が聞こえるようですね。」
ノエル(=レオン)は静かに頷く。
「この地は古代から“神鍛の国”と呼ばれていた。
瘴気が北へ流れ始めている今、ここでの備えが要だ。」
---
◆ 王都鍛冶殿〈火心炉〉
黒鉄の鎧をまとった老ドワーフが迎えた。
白髭を編み込み、片眼鏡の奥で鋭く光る瞳。
鍛冶長――グラント・バルニス。
「ほう……おまえがまた剣を携えてここに来るとはな。」
「今はただの旅人だ。」
ノエルの声に、グラントは鼻を鳴らす。
「旅人が背負う剣にしては……重すぎるな。」
アリアが進み出る。
「鍛冶長さん。これを見ていただけますか?」
彼女は手に持った小瓶を掲げた。
中には黒い霧のようなもの――“瘴気の結晶”。
聖樹の森で採取したものだった。
グラントは眉をひそめる。
「……こいつぁ、ただの穢れじゃねぇ。
鉱脈に混ざれば、金属を腐らせる。」
アリアの瞳が金色に光る。
「――鑑定開始。」
手のひらに紋章が浮かび、黒霧を解析する光が走る。
「……やはり。“影核”由来の魔素反応。
通常の魔力では分解できないけれど……
熱量波長を上げれば、浄化可能な領域が存在するわ。」
ノエルが問う。
「つまり、焼けるということか?」
「はい。でも普通の炎では駄目です。
“生命波長”を帯びた炎――
古い文献にある“清浄の炎”が鍵です。」
クラリスが眉を上げる。
「その炎……どうすれば得られるのですか?」
アリアは小瓶を掲げながら言う。
「ドワーフの“精霊鉱”――炎精鉱。
それを媒介に魔力を流せば、聖樹の加護と同調し、
“清浄の炎”が生み出せるはずです。」
グラントが腕を組んで唸った。
「……フレアライト、か。あれは地の底の“竜の炉”でしか採れねぇ。
だが……丁度、南坑で微かに反応を感じていたところだ。」
ノエルは静かに頷いた。
「採掘は我々が行おう。」
「ほぅ……いいだろう。だが気をつけろ。
その坑道には、“炎喰い”の魔獣が巣を作っている。
火そのものを糧にする、瘴気に堕ちた魔物だ。」
クラリスが剣に手をかける。
「なるほど。炎の鍵を取るには、炎を喰らう敵を討てと。」
「皮肉だが、悪くない話だな。」ノエルが微笑む。
セリオが慌てて手を挙げる。
「ま、待ってください! そ、その“炎喰い”って……燃えないんですか!?」
アリアがにこりと笑う。
「燃えない代わりに、“怯える者の心”を嗅ぎ分けるそうですよ。」
「えっ!? そ、それって僕が一番狙われるパターンじゃないですかぁぁぁ!?」
クラリスが穏やかに微笑む。
「大丈夫ですよ、セリオさん。怖ければ、私の後ろに。」
「……心強いけど、なんか情けないぃぃ!!」
ノエルが軽く剣を構える。
「行こう。――清浄の炎を、我らの剣に宿すために。」
いつもありがとうございます今日はちょっと早めに更新しました。あともう一回更新します。




