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不死王レオンとアルヴィス王国物語  作者: スガヒロ
第二章 氷冠の再誓(ひょうかんのさいせい)

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森の民 ― 光弓の再会

森の奥深く――聖樹の瘴気が晴れたあと、

風は清らかさを取り戻しつつあった。


ノエルたちは、聖樹の根の脈動が静まったのを確認すると、

アリアの案内で森の奥へと進んでいた。


「この先に……何か、大きな魔力の波動があります。」

アリアが足を止め、手を翳す。

「まるで……聖樹と同じ“系統”の魔力。ですが、もっと“古い”です。」


クラリスが剣に手をかけた。

「旦那様、警戒を。」


ノエルは頷き、木漏れ日の射す方を見上げる。

――その瞬間、風が舞い、光が降った。


眩い粒子が渦を巻き、空中に一本の光の矢が形成される。

矢は地に突き立ち、光がほどけるように人の形を取った。


白銀の髪、蒼き瞳。

細身の鎧に、背には“光の弓〈オーロラボウ〉”。


「――ようやく来てくれたのですね、レオン。」


ノエル(=レオン)はわずかに息を呑んだ。

「……リュミエール。」


クラリスとセリオ、アリアが思わず足を止める。

目の前に立つハイエルフの乙女は、どこか神々しいほどの気配を纏っていた。


「貴女が……ハイエルフの長?」

アリアが問いかける。


リュミエールは穏やかに頷く。

「長などではありません。私はこの森の“記憶”を継ぐ者。

 あなたたちが聖樹を救ってくれたこと、森全体が感じ取っていました。」


彼女は一歩近づき、まっすぐにレオンを見つめる。

「でも、貴方が来た理由は――違うのでしょう?」


レオンは静かに視線を合わせた。

「北方の影。魔族の残滓が地上に滲み始めている。

 その経路を確かめに来た。」


リュミエールは目を閉じ、風に耳を澄ませる。

「……やはり。“氷の門”が軋んでいる。

 かつて貴方と我らが封じた“影の源”が……再び動き出したのです。」


セリオが不安そうに言う。

「“影の源”って、あの悪魔王のことですか?」


「違います。」リュミエールの声は低い。

「悪魔王はただの器。真の“根”はそのさらに奥――

 虚界の奥底に眠る“影核えいかく”。

 それが揺らげば、闇は再び世界を覆うでしょう。」


クラリスが眉をひそめる。

「……つまり、私たちが浄化した森も、その影響のひとつ?」


「ええ。」リュミエールは頷いた。

「この森の聖樹は、世界の“封印樹”のひとつ。

 それが侵されるということは、各地の封印も弱まっている。」


ノエルは腕を組み、静かに言った。

「ならば、放ってはおけんな。

 北へ向かう。氷の門の様子を確かめる。」


その言葉に、リュミエールは微笑を浮かべた。

「……やはり、貴方は変わらない。

 不死でありながら、なお“生の責務”を背負い続ける。」


ノエルの表情に、わずかな哀しみが浮かぶ。

「不死は贖いだ。

 守れなかった者たちへの――な。」


リュミエールはその言葉を受け止めるように目を伏せ、

ゆっくりと弓を掲げた。


「ならば、せめてこの森の加護を授けましょう。

 貴方が再び戦うというなら……我が矢は貴方の影を照らします。」


弓が光を放ち、四人の足元に淡い紋章が浮かぶ。

聖樹の葉が舞い、風が歌う。


アリアが息を呑む。

「これが……森の祝福……!」


セリオが目を輝かせる。

「なんか、すごく力が……体の奥からあふれてきます……!」


クラリスが微笑み、静かに言った。

「旦那様、これで準備が整いましたね。」


ノエルは頷き、リュミエールを見つめた。

「ありがとう、リュミエール。

 ……また共に歩める日が来るとは思わなかった。」


「ええ。けれど、貴方が“永遠”であるように、

 私もまた、時を超えて貴方を見てきました。」

彼女の瞳が優しく揺れる。

「どうか、今度こそ――この世界を救ってください。

 あの夜に願ったように。」


レオンの表情に、わずかに微笑が戻る。

「約束しよう。

 今度は、誰も失わない。」


風が吹き抜け、

森の奥から聖樹の葉が舞い上がった。


そして――

彼らの新たな旅路は、北方の地へと続いていく。



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