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不死王レオンとアルヴィス王国物語  作者: スガヒロ
第二章 氷冠の再誓(ひょうかんのさいせい)

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アリアの来訪 ― 鑑定士、旅の仲間に

王都アルシオン・南門の外れ。

避難民支援の任務を終え、ノエル(=レオン)一行は荷を整理していた。

明日の朝には、東の街道を抜け、森へと向かう予定だった。


夕焼けの光が石畳を染める中、

クラリスが荷の最終確認をしている。

「薬草……保存食……テントも完了。

 あとはセリオが戻れば出発できますね。」


「セリオなら、例の鑑定士と話している。」

ノエルが穏やかに言う。

「彼女――アリア・フェンリスと言ったか。」


クラリスは眉を上げた。

「フェンリス? ……あの“古代鑑定学派”の一族ですか。」

「らしい。」

「その名前を聞くだけで、王都の学者たちが頭を下げるほどの名門ですよ。」


そのとき、足音が近づいてきた。

「た、ただいま戻りましたぁ!」

セリオが息を切らせながら手を振っている。

その隣には、白衣の少女――アリアが静かに歩いていた。


「アリアさんが、どうしても旦那様たちにお話したいって!」


アリアは軽く頭を下げた。

「突然お伺いして申し訳ありません。

 ですが……どうしてもお伝えしたいことがあって。」


ノエルが静かに促す。

「話してくれ。」


少女の瞳がわずかに光を帯びる。

「この国の“流れ”が乱れています。

 瘴気や影晶だけではありません――“魔脈”そのものが歪み始めている。

 人も、森も、鉱石も、すべての存在を巡る“命の糸”が、絡まりつつあるんです。」


クラリスが目を細めた。

「魔脈を……感じ取れるのですか?」

「はい。私の目は、“鑑定”そのものです。」


アリアは手をかざす――

しかし、そこに道具も呪具もない。

ただ彼女が意識を向けた瞬間、淡い光が周囲に広がる。


「たとえば……あなた。」

アリアはクラリスを見つめた。


「名前、クラリス・ヴァレンティナ。

 七輝将・月の剣ルナブレイド。

 属性:月光・霜。感情状態……“静謐な忠義”。」


クラリスの目が見開かれる。

「……何も、渡していませんよ?」

「必要ありません。」

アリアは穏やかに笑った。

「私の目は、見るだけで“真を知る”のです。」


驚く一行の前で、彼女は視線をノエルへ向けた。


「そして――あなた。」

空気が一変した。

淡い光が一瞬にして白炎のように広がり、風が巻き起こる。


アリアは息を呑み、瞳を見開いた。


「……あなたの魂……時の檻を超えて……

 不老不死の加護、そして剣聖と賢者――二つの系譜が重なっている……!」


セリオが思わず叫ぶ。

「すごいっ! 本当に何でもわかっちゃうんですね!」


クラリスが一歩前に出て、少し緊張した声で問う。

「……あなたはそれほどの力を、どうやって身につけたのです?」


アリアは静かに答える。

「フェンリスの血には、“真理を映す眼”が宿ります。

 ですが、私は特に強くそれを受け継いだらしく――

 生きとし生けるもの、物質、魔力、亜人種……

 触れずとも、“存在の構造”を見てしまうんです。」


ノエルはしばし黙し、やがて静かに言った。

「その目は祝福か、呪いか。」


アリアの表情にわずかな陰が落ちる。

「……後者でしょうね。

 “真実”は人を救うこともあれば、壊すこともある。

 けれど、それでも私は、この国の歪みを正したいんです。」


セリオが前に出て、にっこりと笑った。

「だったら、僕たちと行きましょうよ!

 だってアリアさん、あのとき僕に言いましたよね――

 “導く光を持ってる”って!」


クラリスが一瞬口を開きかけたが、ノエルが先に言葉を発した。

「……旅は危険だ。命を懸ける覚悟が要る。」

「覚悟は、あります。」アリアは迷いなく答えた。

「この目が、“光の聖樹”の異変に繋がっている気がしてなりません。

 それを確かめたいのです。」


沈黙ののち、ノエルは頷いた。

「――いいだろう。同行を許す。」


クラリスがほっと息を吐く。

「本当に……大丈夫なんですか、旦那様?」

「彼女がいれば、真実は早く見つかる。」


セリオは両手を上げて喜んだ。

「やったぁ! 仲間が増えたぁ!」


アリアは柔らかく笑い、胸に手を当てる。

「ありがとうございます。

 これより、“鑑定士アリア・フェンリス”、旅の記録に名を刻みます。」


その時、遠くの地平線に黒い雲が立ち上がった。

東の森の方向――まるで“呼ぶように”。


ノエルは視線を向け、低く呟いた。

「……どうやら、聖樹も眠ってはいないらしい。」


そして彼らの新たな旅が始まる。

光と影、そして“真を視る眼”が交わる


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