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不死王レオンとアルヴィス王国物語  作者: スガヒロ
第二章 氷冠の再誓(ひょうかんのさいせい)

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王都会議 ― 光と影の選択

王都アルシオン、宰相府の作戦室。

重厚な扉が閉ざされると、外の喧噪が嘘のように消えた。

広げられた大地図の上には、光と影を映す魔導灯がゆらめき、

集う者たちの顔に緊張の色を浮かび上がらせる。


その場にいたのは、宰相オルヴィン・レイス。

彼の隣には、紅い瞳の少女――〈静謀〉ルカ。

そして、王城に呼び戻された“旅の一行”――

レオン、クラリス、セリオの三人が座していた。


「まさか……私たちまで呼ばれるとは。」

セリオが椅子の端に縮こまり、囁くように言った。

「こ、こんな立派な会議室……僕、場違いですよぉ……!」

「静かに、セリオ。」

クラリスが小声でたしなめる。

「ここにいるってことは、それだけ旦那様たちの意見が必要なの。」


レオンは黙って地図を見つめていた。

その瞳は静かで、だが一度地図に映る赤い印を見つけるたびに、

鋭く光を帯びる。


オルヴィンが低く言葉を切り出した。

「各位。――本日は、今後の王国防衛体制と外交方針について。

 すでに西と北で不穏な動きが報告されている。」


ルカが一歩前に出て、淡々と語る。

「まず西方。

 荒野諸国――戦乱が絶えぬ侵攻地帯。

 その国境を守るのは、七輝将第五位〈嵐狼〉ローク。

 代々その地に根差すローク家の当主であり、

 荒野と王国の緩衝を維持している人物です。」


クラリスが地図に視線を落とす。

「……つまり、荒野で火が上がれば、最初に焼けるのは西の防壁ということですね。」

「その通りだ。」オルヴィンが頷く。

「傭兵団が動けば戦端が開く。ロークの軍が崩れれば、

 王都にまで戦火が及ぶだろう。」


ルカはわずかに唇を歪めた。

「ご安心を。〈嵐狼〉には既に黒槍騎団の残兵を補給に回しました。

 宰相様が命を下す前に、です。」


オルヴィンが苦笑を浮かべる。

「まったく……お前という女は、報告より先に動くな。」

「ええ、策とは“半歩先”でこそ意味を持ちますから。」


セリオが小声でクラリスに囁く。

「……こ、怖い人ですねぇ。あの人、目が笑ってないです……!」

「静かに。」クラリスが肘でつつく。

レオンは無言のまま二人をたしなめるように視線を送った。


ルカは地図を北へとなぞり、次の印を示した。

「次に北方山岳国家群。

 中立のドワーフ王国〈グラン=トール〉を中心に、

 狼族、熊人族、雪猿族、鷹人族など、複数の獣人国家が点在しています。

 戦力は高く、もし同盟を結ばれれば脅威です。」


オルヴィンが頷き、言葉を継ぐ。

「北を守るのは、七輝将第四位〈黎明の刃〉ミレーヌ。

 雪原に陽を差す剣。兵の士気を繋ぐ存在だ。」


ルカがさらにもう一つの駒を北に置いた。

「そして、彼女を支えるもう一人。

 〈蒼天の槍〉セリアン。氷嵐の中でも陣を崩さぬ北方の守護者。

 彼は北を離れず、戦況を常に維持しています。」


セリオが思わず口を開く。

「うわぁ……北の人たちって、なんか全員強そうですねぇ……!」

クラリスが呆れたように息を吐く。

「戦士として誇りを持っているのよ。

 あなたも少しは見習いなさい。」

「ぼ、僕、誇りより命が大事ですぅ!」


オルヴィンは咳払いをして、視線をレオンに向けた。

「レオン殿。あなたはこの国の光と影、両方を見てきた。

 ――どう見ますか?」


レオンはわずかに目を閉じ、静かに言葉を返した。

「……王国は、長い年月の中で“均衡”を保ってきた。

 西の炎も、北の氷も、いずれ動くだろう。

 だが、どちらにも共通するのは“恐れ”だ。

 国が滅ぶのを恐れ、互いに刃を構える。

 ならば必要なのは、力の誇示ではなく“信義”だ。」


オルヴィンは深く頷く。


クラリスがさっと視線を向けるが、レオンはそれに反応せず、

ただ静かに微笑んだ。


「……私にできるのは、少しの助言と剣だけだ。」


ルカは満足げに頷く。

「その剣があれば十分です。

 王国の盤上――西は〈嵐狼〉、北は〈黎明の刃〉と〈蒼天の槍〉。

 そして、“影”は盤を整える。

 宰相様、この国はまだ戦えます。」


オルヴィンは地図を見据えたまま、静かに宣言した。

「――この王国、光と影、両輪で進む。」


鐘が鳴る。

王都の塔から、薄明の光が差し込む。


クラリスはその光を見ながら小さく呟いた。

「……まるで夜明けみたいですね。」


セリオが首を傾げる。

「でも、夜が明けるってことは……また動くってことですよねぇ……?」


レオンはわずかに笑みを浮かべ、立ち上がった。

「そうだ。――だが、夜が明けぬ国など、もうたくさんだ。」


その言葉に、誰もが黙って頷いた。

そして、彼らの次なる旅路――

“東方の森と光の聖樹”への道が、静かに幕を開けた。



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