表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不死王レオンとアルヴィス王国物語  作者: スガヒロ
第一章 英雄の血脈 ― 光と影の再会

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/165

炎空の下の誓い ― 王都防衛戦


王都アルシオン。

夜明け前の空は赤黒く燃えていた。

“灰の丘”の上空で――三首蛇〈トリシェイド〉が瘴気の翼を広げる。

その咆哮は空を震わせ、王都全体に圧を落とすように響き渡った。


炎の首が大地を焼き、毒の首が霧を吐き、瘴気の首が空気そのものを腐らせていく。

外郭の砦がひとつ、音もなく崩れ落ちた。


「――外郭、突破されたか。」

七輝将ガルドが、城壁の上からその光景を睨みつけた。

「全軍、第二防壁へ! 王都の石畳を踏ませるな!」


彼の号令が響く中、城塔の上では魔導師団が詠唱を開始。

中心に立つのは、黒衣の魔女――モルガーナ。

その両脇には、二人の弟子が控えていた。


怯えた面持ちで魔力炉の出力を見つめるメイリア。

「せ、先生……これ、ほんとに……爆発しませんよね?」

「しなかったことはないわね。」

「な、ないんですかぁぁ!?」


反対側で魔力陣を覗き込みながら、目を輝かせるリネア。

「すごい……この瘴気、構造がまるで生きてるみたい! 分析したい!」

「後でね。今は“壊す”方が先よ。」


モルガーナの声は冷静だったが、杖を握る手には力がこもっていた。

フェルディナンドが測定器を操作しながら叫ぶ。

「瘴気濃度、上昇率九十パーセント! 第一層結界、もってあと二分!」

「二分あれば十分。」

モルガーナは唇を引き結び、詠唱を高める。

「――“光の盾”展開!」


白銀の結界が王都全体を包む。

だが、三首蛇の咆哮とともに炎と毒の奔流が降り注ぐ。

城壁が軋み、空が裂けた。


「第一層損壊! 第二層に瘴気が侵入!」

報告の声が上がる。

だが、モルガーナの眼差しは揺るがない。


「怯える暇があったら詠唱を続けなさい、メイリア!」

「ひゃ、ひゃいっ! 《ルーメン・アミュレット》っ!」

「よし、流れた魔力はリネア、東の符陣に送って!」

「了解! 魔力転送、安定化開始!」


リネアが杖を回転させると、光の帯が塔から四方へ伸びていった。

フェルディナンドがその様子を見て声を上げる。

「魔導師団、安定しています! 瘴気流反転、あと三十秒で完了!」


そのとき、モルガーナの耳に通信魔法が届いた。

『こちら“暁星”――オルフェだ。飛行型迎撃、これより突入する!』


「よし、彼らの進路を開けなさい!」


城外で風が唸り、馬蹄が夜を裂いた。

七星騎士団“暁星”の旗が炎の空を駆け抜け、オルフェが槍を掲げる。


「狙いは炎の首! 矢を捨てろ、突っ込めぇぇぇ!」

無数の騎兵が光の尾を引き、灼熱の地を走り抜けた。


炎の首が咆哮を上げた瞬間、モルガーナが杖を掲げる。

「リネア、合図!」

「行きますっ! 《凍環・バインド・サークル》!」

氷の鎖が炎を絡め取り、動きを鈍らせる。

「今よ、オルフェ!」

「《暁光・裂牙》ッ!」

閃光の一撃が炎の首を貫いた。


三首蛇が悲鳴を上げ、毒の首が反撃に動く。

瘴気の嵐が地上へと降り注いだ。


「毒霧だ、下がれ!」

ガルドの声が響く。

「盾隊、右翼へ! 瘴気の通路を塞げ!」


だがその毒流が城壁へ届く前に――

巫女長リシェルの祈りが空を染めた。


「光は巡り、闇を還す。

 その息吹を、今ここに。」




聖堂から立ち上る光柱が、瘴気の流れを断ち切る。

魔導師団の詠唱がそれに呼応し、結界の輝きが強まった。


フェルディナンドが声を上げる。

「結界再構築、成功! 瘴気流、完全に反転しました!」

モルガーナが叫ぶ。

「全員、力を合わせなさい――今よッ!」


メイリアが震える手で杖を掲げた。

「ひゃ、百年早いけど……行きますぅっ! 《ルーメン・レゾナンス》!」

リネアが興奮した笑みを浮かべる。

「これ、すごい……魔力が歌ってる!」

モルガーナが一気に詠唱を重ねる。


「光よ、昇れ――夜を裂き、影を祓え!」




白光が爆ぜ、天を貫いた。

その光が三首蛇を包み込み、炎も毒も瘴気も、一瞬で吹き飛ばす。


轟音のあと、静寂。

夜明けの風が王都を撫でた。


モルガーナが杖を下ろし、息を吐く。

「……終わったわ。」


メイリアが震えながら彼女に寄り添う。

「せ、先生……もう戦わなくていいんですよね……?」

モルガーナは彼女の頭を撫でた。

「いいえ。戦いは終わっても、“光を繋ぐこと”は続くの。」


リネアが目を輝かせながら大地の焦げ跡を覗き込む。

「うわぁ……瘴気の残滓がこんな構造をしてるなんて! これ、保存したい!」

フェルディナンドが苦笑する。

「頼むから持ち帰るな、リネア君。」


そのやりとりを背に、ガルドが剣を地に突き立てる。

「……城は守られた。外壁の損壊はあっても、市街地は無事だ。」

オルフェが槍を担ぎ、空を見上げた。

「不死王がいなくても……俺たちは、ちゃんと光を守れたな。」


リシェルが静かに手を組み、祈りの言葉を紡ぐ。

「光はまだここにあります。

 それを絶やさぬよう――皆が、灯であり続ける限り。」


モルガーナは夜明けの空を見上げ、

低く、だが確かに微笑んだ。

「……これが、“炎空の誓い”。」


朝日が昇り、

白亜の塔と結界を金色に染めた。


王都アルシオンは――今も、輝きを失ってはいなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ