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不死王レオンとアルヴィス王国物語  作者: スガヒロ
第一章 英雄の血脈 ― 光と影の再会

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王都防衛 ― 城を傷つけぬ覚悟

いつもありがとうございます。この後もう1話更新します。よろしくお願いします。

王城・作戦室。

外は夜の闇が深まり、空を裂くような瘴気の風が吹き抜けていた。

その中で、王都の防衛を担う者たちが集う。

宰相オルヴィン、学匠卿フェルディナンド、魔女モルガーナ、七輝将《鉄壁》ガルド、

そして七星騎士団“暁星”のオルフェ――。

彼らの前には、地図と魔導計測器、そして青白く脈打つ王都結界の魔力線が広がっていた。

オルヴィンが静かに杖を叩く。

「……北西山岳より、巨大な瘴気反応。すでに瘴気の波が王都外郭に接触した。

 確認されたのは――“三首蛇トリシェイド”の一体だ。」

部屋の空気が一気に引き締まる。

フェルディナンドが眼鏡越しに計測器を覗き込み、低く唸る。

「間違いありません。この魔力波は以前記録された“影晶”のそれと一致します。

 三首蛇……つまり、“影の主”の眷属の一つが、王都へ向かっています。」

モルガーナが唇を噛み、目を細めた。

「……山を越えてくるなんて。瘴気の塊が、こんな短時間で……。

 どうやら辺境の戦が終わったわけではなさそうね。」

ガルドがゆっくりと立ち上がる。

その動作一つで、床板が軋むほどの存在感を放った。

「瘴気の蛇が一体……なら、迎え撃つのは好機だ。

 だが王都の中で暴れられれば、被害は計り知れん。

 ――外で止める。城に一片の傷もつけん。」


オルフェが軽く腕を回し、淡々と応じた。

「俺の“暁星”も出る。」

オルヴィンが地図上に指を走らせる。

「三首蛇は北西街道を抜け、真っすぐ王都へ向かっている。

 結界との交差点は“灰の丘”――王都外壁から半刻の距離だ。

 ここで迎撃する。だが王都側には一切炎を向けてはならぬ。」


フェルディナンドが即座に補足する。

「瘴気の流路は現在、魔術師団で封じ込めています。

 私とモルガーナ殿の術式で“王都上空への瘴気流入”を遮断できます。

 ただし、戦闘が長引けば流路が飽和し、結界に干渉する危険がある。」


モルガーナが杖を握り、冷静に言葉を重ねた。

「魔導師団を三隊に分けるわ。

 一隊は流路の凍結、二隊目は蛇の魔核の探知、三隊目は浄化支援。

 王都上空での爆裂魔法は禁止。あくまで“外”で焼き尽くす。」


ガルドがうなずく。

「地上は我が隊が受け持とう。

 外郭三層に陣を構え、兵を分散させる。

 奴の尾が触れた瞬間、槍陣を崩して“瘴気流”を断つ。

 私の命令なくして一歩たりとも退くな。――王都を背に立て。」

オルフェが口笛を吹く。

「いいね。こっちは“頭”を狙う。」

フェルディナンドが指を鳴らし、机の上に小さな結晶を置いた。

「これを使ってください。局所的に瘴気を吸着する補助器です。

 扱いを誤れば爆ぜますが……あなた方なら使いこなせるでしょう。」

モルガーナがそれを受け取り、静かに頷く。

「……外で終わらせる。王都に一滴の瘴気も入れさせない。」


ガルドは剣を腰に下げ、重い声で締めくくった。

「王都を護る盾とは、決して城壁のことではない。

 この手で守る者の覚悟こそが“盾”だ。――我らが踏み止まる。」

オルヴィンは短く命を下す。

「――全軍、迎撃態勢。

 王都に“炎の影”を通すな。王の都を焦がすことは、我らの敗北と心得よ。」

扉が開き、伝令が駆け込む。

「報告! 三首蛇、北西丘陵にて視認! 翼なし、だが地を這いながらこちらへ向かっています!」

「来たか……」

ガルドが呟き、重い足取りで部屋を出る。

その背を見送りながら、モルガーナは静かに祈りの言葉を呟いた。

「――どうか、光が消えぬように。」

外では、赤黒い雲が裂け、遠くに三つの咆哮が響く。

その声は、まるで“影の主”の代弁のように、王都全域を震わせていた。

それでも、城壁の上には怯えの影はなかった。

そこに立つ者たちは皆、ただ一つの誓いを胸にしていた。

――「城を、焦がさぬ。」

――「民を、失わせぬ。」

王都の防衛戦が、いま静かに始まろうとしていた。

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