影蛇の襲来
影の儀式の胎動のエピソードから何話か飛ばしてアップしていたため6話くらい削除して、正しい順番で更新し直しています。申し訳ありません。
街道に緊張が走った。
レオンとクラリスを囲んだ偽装兵たちは次々と槍を構え、鋼の先が陽光を鈍く反射していた。
「囲め! 奴らを生かして返すな!」
指揮官らしき男が怒鳴ると同時に、兵たちが一斉に突撃してくる。
クラリスが舞い出た。
「――月華流舞・白鶴の一閃!」
流れるような剣筋が光の弧を描き、迫る槍を斬り払い、兵の兜を打ち砕く。
その姿はまるで舞台上の舞姫。敵兵が次々と倒れる中でも、その動きは淀みなく美しかった。
セリオは馬車の中から顔を出し、青ざめながら叫ぶ。
「うわぁぁっ! 目の前で首飛んでるぅぅ! ちょ、ちょっと旦那様!? ほんとに大丈夫なんですかこれ!?」
「黙って見ていろ。――だが、目は逸らすな。」
レオンの声は冷徹で、同時に剣を抜き放つ。
一閃、鋼が走るたびに黒装束の兵が吹き飛び、悲鳴と共に街道に転がった。
だがその瞬間。
偽装兵の一人が叫んだ。
「出せ! “影晶の獣”を!」
街道脇の檻が開き、そこから這い出てきたのは――異様な魔物。
全身を黒い結晶で覆い、二つ首を持つ巨大な蛇。
それぞれの口からは瘴気が漏れ、地面を腐らせていく。
「ひぃぃっっ! 出たぁぁぁぁぁ! な、なんで二つ首なんですか!? 一つでも十分怖いのに、サービス過剰すぎますってぇぇ!」
セリオの絶叫が響く。
クラリスが剣を構え直す。
「旦那様……あれは、ただの魔物ではありません!」
レオンは冷ややかに頷く。
「影晶で強化された“実験体”か。……姑息なことをする。」
二つ首の蛇が咆哮を上げ、街道全体を覆うほどの瘴気を吐き散らす。
兵たちも巻き込まれるのも構わず、狂ったように突撃してきた。
「クラリス、抑えろ!」
「承知!」
クラリスの舞――
「月華流舞・断影の舞!」
しなやかな軌跡が二つ首の片方の目を裂き、鮮血と黒晶が飛び散る。
その直後、もう一方の首が怒り狂ったように襲いかかる。
だが、レオンが踏み込んだ。
「……影に堕ちるがいい。」
――不死王の剣閃。
一瞬、空気そのものが震え、蛇の巨体に亀裂が走る。
セリオは腰を抜かしながら叫んだ。
「い、今の何ですか!? いやいやいや、普通の画家の斬り方じゃないですよぉぉ!」
街道は戦火と瘴気に包まれ、決戦の幕が上がろうとしていた。




