北西へ伸びる影
申し訳ありません。前回のエピソードから順番を飛ばしてアップしていました。これでエピソードの順番を間違えたのは3回目です。何話か削除しています。本当にごめんなさい。
王都を離れ、西方街道を進む馬車の中。
レオンは瞳を閉じ、指先で地図をなぞっていた。
クラリスは窓の外を警戒しつつ、ちらりと隣のセリオに目をやる。
「……セリオ。さっきから顔色が悪いわよ?」
「わ、悪いっていうか……ほ、ほら! 僕の“予兆”が……! うわぁ……いやな予感しかしないんです!」
セリオは頭を抱え、汗を拭った。
「黒い山……赤い月……冷たい風……そして、石の門みたいな……大きな影が……!」
クラリスは身を乗り出して聞き返す。
「黒い山……それって、もしかして北西の山岳地帯?」
「は、はい! あそこです! あそこに絶対……よ、良くないものがあります!」
レオンは顎に手を添え、静かに頷いた。
「北西――辺境と連邦の境。……古くから魔の瘴気が濃い地だ。 儀式を隠すには、これ以上ない場所だろう。」
セリオはがくがくと肩を震わせながら叫んだ。
「だ、だから言ったじゃないですか! 僕が外に出たら絶対死人が出るって! うわぁぁ……僕もう帰りたい……」
クラリスは呆れたように笑い、剣の柄を軽く叩く。
「大丈夫。死人は出さないわ。旦那様と私が全部“斬り捨てる”から。」
「そ、それが一番怖いんですってばぁぁぁ!」
レオンは微かに笑みを浮かべ、窓の外の山並みに視線を向けた。
「……導かれるようだな。セリオの“目”が示した北西へ向かう。 そこで――イリスの手掛かりが得られるはずだ。」
風が馬車の幕を揺らし、遠くに黒い稜線が姿を現し始める。
そこには確かに、影を孕んだ山岳――儀式の匂いが漂っていた。




