円卓に落ちる影
申し訳ありません。このエピソードを飛ばして何話かアップしてしまいました。この後の6話くらいを順番を正しくするため一旦削除しました。よろしくお願いします。
王城・円卓の間。
夜半の戦闘で王都を襲ったワイバーン群は撃退され、防御結界も健在――
だが、集まった重鎮たちの顔は決して安堵で終わってはいなかった。
玉座の前に立つ宰相オルヴィンが、杖で床を叩く。
「――諸卿。王都は守られた。だが、教団の狙いが“魔物を放つこと”だけだと思うか?」
沈黙。
セオドリック・アークライトが重々しく口を開いた。
「我が娘イリスを攫ったのも、魔物をけしかけたのも……一つの線で繋がっているはずだ。 英雄の血筋を奪うこと、それ自体が狙いではあるまい。」
フェルディナンド卿が前に進み出る。
「はい、殿下。結晶の解析からも明らかになりました。 影晶は“生きている”……まるで、儀式の触媒のように。」
彼の声は高ぶり、興奮すら帯びていた。
「つまりイリス嬢は“供物”として攫われた可能性が高いのです。 血筋を汚すためではなく――影晶と結びつけ、王都そのものを覆う儀式の一環として!」
議場にどよめきが走る。
巫女長リシェルは祈るように目を閉じ、声を震わせる。
「……もしそれが真であれば、民は光を失います。 英雄の血を影に堕とせば、この国の心は……」
オルヴィンは深く頷き、視線を鋭く巡らせる。
「問題はもう一つ。――奴らがどこで儀式を行おうとしているか、だ。」
ここでローズマイン家のリカルドが皮肉を込めた笑みを浮かべる。
「辺境の山岳ではないか? 魔の気が濃い地は、奴らの“隠れ蓑”にうってつけだ。」
その言葉に、ダリオス辺境伯が椅子を鳴らして立ち上がる。
「馬鹿を言うな! 我が領で教団がのさばっているだと? あり得ん!」
だが彼の怒声には、どこか焦りが混じっていた。
フェルディナンドが冷静に告げる。
「……あり得ない、ではなく“あり得る”。 事実、辺境経由でしか入らぬ魔晶石が最近、影晶に汚染されて出回っている。 偶然だと考える方が無理でしょう。」
円卓は重苦しい沈黙に沈む。
オルヴィンが低く締めくくった。
「――ダリオス卿。潔白を証明したければ、自ら辺境軍を率いて儀式の痕跡を探し出すがよい。 王都も、もはや手をこまねいてはいられぬ。」
ダリオスは顔を真紅に染め、拳を握りしめたまま席に戻った。
しかしその瞳の奥には、苛立ちと焦燥――そして“何かを隠している影”が、はっきりと宿っていた。




